過去巡り 外伝   『花の祝福』 その7



流香と本屋に行ってから1週間後の文化祭。

私達にとって最後の文化祭がやってきた。

その土曜の夜に私はヒロと優希に電話をした後、サキに電話をかけた。



「もしもしサキ?私だよ、ハナ」

風呂上り、頭を拭きながら電話に話しかけると

 『分かるよ…どうしたの?』

サキの落ち着いてる声が返ってきた

「うん…あのね…用があるってわけじゃないんだけど…」

自分から電話しといたくせに、歯切れ悪く答えると

 『そうなの?…まぁだいたい何考えてるか分かるからいいんだけど…』

なにぃ?

「え?な、何よ…いったい何だと思ってるのよ?」

サキの言葉に少しだけ驚き、自分の考えが見破られてることにちょっとだけ

ムッとしてしまった。が、

 『何って…明日のことでしょ?明日の文化祭のことでしょ?』

「んがっ!!」

約6年の付き合いの友人には全部お見通しみたいだった。

くそ~~、何でサキはこんなに頭がいいんだ?

なんで私の考えが読めるんだよ~~ちくしょ~~

「…そうだよ…明日の文化祭のことだよ…なんで分かるのよ?」

ぶっきら棒に答えると、笑いを含んだ声で

 『ハナが単純だからよ…読めないほうがおかしいって…』

「ちきしょ~ヒロと優希と同じこと言いやがって~~」

サキに電話する前に2人に電話したけど、用件を言う前に明日の文化祭?

と言われてしまったのだ。

 『ふふっ、まぁ明日が私達にとって最後の文化祭だから分かったのよ。

 だからハナから電話が来るだろうなぁ~って思ってたわ…

 それで?何なの?』

「電話が来ることまで分かってたのかよ…頭良すぎだろ…」

私が単純だから考えが読めると言うが、やっぱりサキの頭が良いんじゃ…

「え~っとね、サキの言う通り明日が最後の文化祭じゃん?

そんで明日で私達、合唱部を引退するじゃん?もうお終いじゃん?」

サキに分かってることを改めて聞くと

 『そうね、明日が最後だね…終わると思うとちょっと寂しくなるね…』

しみじみと言われ私も少し寂しくなったが

「そうだね…それでさ…明日の舞台の後の話なんだけどさ…」

それでも用件を切り出すと

 『舞台の後の話?なにそれ?私が思ってたのと違うこと言ってくるね?』

どうやらサキの予想とは違うことを私は言ってるみたいだ

流石のサキでも分からないとは…やるな、私

サキを驚かせたことにちょっとだけ優越感に浸りながら

「え~っとですね、舞台の後にまぁ私達は部室に戻るじゃん?」

明日のことを想像しながら話しをする

 『そうね、部室に帰ると思うわね…』

「それで…まぁ部室に帰ったらみんなで話をすると思うのよ…

最後の文化祭だし、みんなで今までのこと話すと思うのよ。」

みんなで部室で話し合ってる姿が簡単に想像できる

 『まぁそうだろうね…最後の文化祭でアッサリ帰るみんななんて考えらんない

 わよ…それで何よ?何が言いたいの?』

怒る様子も無く、それでも早く用件を言わない私を急かすサキ

「ゴメンゴメン…えっとね、その部室に帰ってみんなで話すってのを

ちょっとだけ後回しにしたくてさ…」

 『は?何よ後回しにするって…何でよ?』

驚いてるなぁ~そりゃそうか…

「えっと…今年こそはちゃんとガク君、来れると思うの…

つーか来てもらわなきゃ困るんだけどさ…それでね、舞台が終わった後に

流香とガク君に、2人っきりで話しをさせてあげたいと思ったのよ。

だって2年前のこと覚えてる?あの時2人って20分ぐらいしか

話できなかったんだって…言ったでしょ?

だからさ、今年は2人でゆっくりとお話してほしいわけよ……だから…ね?」

2年前の文化祭の帰り、流香の寂しげな顔が忘れられなくて…

去年の文化祭、合唱部の出番が終わり、部室でみんなで話してる時の

妙に明るい流香の顔が少し悲しかったから…

だから電話の向こうのサキにお願いをすると

 『……そういうこと……分かったよ…明日は部室に帰った後すぐ出るよ…』

私より大人なサキは私の提案を受け入れてくれた

だから嬉しくなって

「ありがとうサキ…大好きだよ」

優しくて…とっても優しいサキに感謝と今の気持ちを素直に言うと

 『ありがと…そうゆうのは彼氏だけに言いなさい…そういや最近どうなの?

 夏休みに一緒にお祭りに行ってから、それっきり話聞かないんだけど…

 もしかして別れたの?どうなのよ?』

………ん?サキは何言ってるんだ?

急に私と私の彼氏について聞いてきた

「え、え~っと急に何ですかサキさん?どうしたのかな?

わたくし、今晩は明日の文化祭のことで電話したんですよ?それだけですよ?

だから私と彼氏のことを話すつもりなんか一切ございませんよ?」

彼氏とのことをみんなに言いたくないので、丁寧に返すが

 『いやいやハナさん何言ってるんですか?忘れたのかな?

 告白したデートの日、誰が服を選んだんだっけ?言ってごらんなさい?

 私ですよね~?ハナが私にどんな服着て行けばいいか分からない…って

 言うから私が選んであげたんですよね~? 3時間も一緒に!!

 誕生日も何をあげればいいか分からない…どうしよ?って言うから

 一緒に選んであげましたよね~?彼氏、喜んだんでしょ?

 お揃いの携帯のストラップあげて喜んでくれたんでしょ?

 あなたが選んだヤツは趣味が悪いヤツだったから私が選んだヤツを

 買いましたよね~?それなのにハナさんは何を言ってるのかな~?』  

サキも丁寧に、なおかつネチネチと私にしてくれた恩を言ってきた。

だが!

「いやぁ~サキさんには感謝しております。一生の恩人だと思っております。

でもですね~私達としては静かに見守っててもらいたいなぁ~って思ってて…

しかも恥ずかしいからあんまり人に言いたくないんですよ。

もちろん何かあったら真っ先にあなたに言いますよ?約束してますからね~

だからそれまではそっとしといて貰えませんかね?」

再びサキに丁寧に返すと

 『いやいや、ハナさんが言う通りに私は2人を見守っていますよ?

 このまま2人はずっと仲良いままでいてもらいたいなぁ~って思ってます。

 でもですね、やっぱり本人達が気付いてないだけで、何か問題が

 起きてるかもしれないじゃないですか?それを私は心配してるんです。

 それが心配なんですよ!

 だってハナにとって初めての彼氏なんでしょ?あのね…初めて恋人ができた

 ときって、すっごく舞い上がるのよ…そうだったでしょ?

 ハナには舞い上がって失敗してほしくないんですよ。分かってくださいよ?』

また丁寧に、しかももっともらしい事を理由にしてきたが

「ありがとうございますサキさん。いつも気にかけてくれて嬉しいですよ。

本当にサキさんには頭が上がりませんよ… 

確かにあなたが言う通りに付き合い始めたばっかの頃は舞い上がっていました。 

そのせいで皆様に大変ご迷惑をお掛けしたことを反省しております。  

でも2年前にサキさんに数え切れないほどのアドバイスを頂いたので、

舞い上がっていた気持ちを落ち着けることができました。

そのお陰で今の私と彼があると言っても過言じゃありません。

でも今は大丈夫です。もう2年の付き合いだし大丈夫です。

なのでサキさん、これからは問題が起きても2人で乗り越えていこうと

思っております。

だからこれからも何卒、私達を見守ってて下さい。お願いします。」

電話なのに頭を下げてより丁寧に、聞くなよ。とサキに言うと

 『…ったく、分かったわよ…聞かなきゃいいんでしょ?

 少しぐらい教えてくれてもいいじゃない…協力してあげたんだからさ~

 まぁ、とりあえず明日のことは分かったわ。すぐに出ればいいのね?

 でもホントに、彼氏と何かあったら相談しなさいよ?

 流香だっているし私もいるんだから…いーね?じゃあ明日』

そう言って『今まで彼氏ができたことの無い』サキが電話を切った。 

切れた電話を見つめながら

よく今まで彼氏ができたことの無いヤツがあそこまで言えるな~?

まぁアドバイスは正しかったし、心配もありがたいけどよ~

なんで彼氏ができたこと無いのにあんなに自信満々にアドバイスできるんだ?

普通だったら相談しても、彼氏できたこと無いから分かんないって

返すと思うのに、サキに相談したら任せなさい!って自信満々に

返しちゃってさ~どっからあの自信は来るんだ?

私が1年のときに、初めてのサキへの相談。

好きな男の子と、告白をしようと思って一緒に出かけたデート。

そのデート服をサキに相談した時のことを思い出した。

サキは任せなさい!と相談に乗ってくれたから、彼氏ができたこと

あるんだろうなぁ~と思って安心したのに…はぁ~

後になってサキが彼氏?できたこと無いよ?とあっさり言ったのだ

しかも流香だっているしって言うけど…サキは知らないんだろうなぁ~

流香ってガク君とキスしたことも無いって知らないんだろうなぁ~

2年前に聞いて驚いたよ…4月に合唱部を作る時にガク君とどこまでいってるの?

って私が聞いたときに顔を赤くしてたから、もうしてるもんだと思ってたのに…

だから6月に彼氏ができて初めてキスした後に、嬉しさがあったのか、

そのことを流香だけに恥ずかしかったけど言ったら

え!?私もまだなのに!?ハナもうしたの!?どうだった!? 

と聞かれて驚いてしまったよ。流香キスしたこと無いのかよ!!って…

しかも、じゃあなんで顔を赤くしたんだよ!?ってさらに追求すると

だ、だって~もう1年以上の付き合いなのに、キスもまだ!?って言われたく

なかったのよ~してないことが恥ずかしかったのよ~

でもまさかハナに先を越されるとは思わなかった~悔しい~

と割とマジに落ち込んだ。

そんな流香を見て失礼なヤツだな…と思って

キスしたことも無いってことは…つまり…と考えを巡らせて、分かった。

私が流香にキスしたことを言ったのは相談したいこともあったからだけど、

流香がキスしたことも無かったから、キスの『先』の相談はできなかった。

キスもまだな人にそんな相談はできないと思ったから…

流香だったらもう…と思っていたのだが…

だから彼氏とのことは、あまり流香に相談しなくなった。

だって…ねぇ?キスもまだな遠距離恋愛してる子に何を相談するの?

いくら私が頭が良くなくてもそれは分かるよ…

だから…

………

………

………

やめよ…もう考えるのをよそう…





私は携帯を充電器に納め、電気を消して窓を開けた

明日はガク君が来てくれますように…

明日のことをまん丸のお月様に祈ってから眠りについた。





そして次の日の一般公開の日曜日。

クラスの当番を終えて、合唱部はみんな体育館にいた。

その舞台袖で合唱部の出番を待っている時

流香…携帯見てる…

今日こそはガク君…来てるのかな?

流香はさっき、念のために朝に電話したら繋がった…って言ってたけど

…それっきり何も教えてくれない……は!

も、もしかしたらまた急に来れなくなったのかな!?

ま、またメールの返事がないんじゃ!?

ガク君からメールが来なかった2年前の文化祭を思い出してしまった。

流香の後ろ姿を見ていたらたまらなく不安になったので

「流~香!ガク君どう?来てる?」

流香の背中に寄り添い、心配してることを聞くと

「うん。来てるよ。もう座ってるみたい」

流香がそう笑顔で返してくれたので

「そう!良かった良かった~~今年はガク君ちゃんと来れて良かったね?」

私もたまらなく嬉しくなった

「うん…良かった…」

流香は携帯を胸でぎゅっと握って、目を閉じた

「良かった~これでやっと…」

私は流香の肩に顔を埋めてそう言うと、私の頭に流香が手を置いて

「ん?これでやっと?」

優しく聞いてきたので顔を少し上げて

「いやぁ…流香言ったじゃん?1年の時に私に言ったじゃん?

ガク君が歌をまた聴きたいって言うから合唱部をまた作ろうって。

それがやっと叶うんだな~って…」

2年前の入学したばっかの春の日、教室での出来事を思い出しながら…

流香が私に合唱部作る気ない?と聞いてきた日の事を思い出しながら…

その理由が…やっと…

懐かしく、そして今もずっと続いてる合唱部ができた理由…

「…そうだったね……」

2年前、その理由を私に言った流香が…

2年前よりもずっと大人の顔になった流香が…

2年前よりも大人な顔で…すごく大人な優しい顔した流香が…

「…ありがとね、ハナ……ハナのおかげよ…あの時、一緒に作ろうって

言ってくれて本当に嬉しかったわ…ハナがOKしてくれて…みんなも

OKしてくれて合唱部ができて…この3年間本当に楽しかったわ…

全部…最初にOKしてくれたハナのおかげよ?ありがとう…」

私にありがとうを言った。

私は流香にありがとうと言われたことが恥ずかしかったので

「…私は…私は流香とガク君が仲が良いのが好きなんだ…それだけだよ…」

ぶっきらぼうに答えることしかできなかった

「…うん…ありがとう…」

流香がそんな照れている私の頭を撫でていると 

「流香ー?ハナー?出番だって~行くよー!」

実行委員と話してたヒロが私達を呼んだので

「…じゃあ最後の舞台に行こっか?」

「うん…」

流香と一緒にみんなと舞台に上がり






私は流香とガク君がついに約束を果たすとこを見ることができた。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

初恋メロディー 過去巡り 外伝 花の祝福その7

過去巡りの花の祝福のその7です。

過去巡りを読んで分かっていた人はいると思いますけど、ルカは

まだキスをしたこともありません。

閲覧数:31

投稿日:2011/11/25 14:53:16

文字数:5,720文字

カテゴリ:小説

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