≪第三節≫

 そのころ、リン。

「人間はカミサマになるべきなのよ……。
 何がカミよ。
 何がカミサマよ。
 ヒトの面倒を見ないで、祈ったときに救わないで、何がカミサマだっていうの?」

 そんなことをつぶやきながら、真っ暗な場所をただひたすらと歩いていた。





 ≪ヒトはカミをどのように思うか?≫







 不意にリンの耳にそんな言葉が届いた。

「ヒトはカミをどう思うか?
 そんなのしれてる。たかが弱者が造りあげた偶像よ」









 ≪ヒトはカミを慕い、カミはヒトを憂う。その繰り返しで時代は形成されていったんじゃないのか?≫







「――さっきから命令口調というか上目というか、なんなのよ。あんた」








 ≪語るほどのものじゃない。そうだ、強いて言うなら、≫







「強いて、言うなら……?」







 ≪ただのしがない、科学者……かな?≫







 そこで、リンの意識は途絶えた。




✝




 そして。

「グミ、どうしてあなたがここにいるのかしら?」
「……命令など聞く気はない。今は私の意志でここにいる」

 そう言ってグミは初音とイアの間に割入る。

「……さて、二回有る10月28日から31日のループ。どういう理屈で、誰が成し遂げたのか、話してもらおうか」
「……言えない」
「なに?」
「言うことはできない。けれど、やったのは私。ただ一個言うなら神巡音ルカをあーいう風にしたのも」
「ほう」

 イアは笑い。

「どういうことか教えてもらおうか」
「簡単なこと。巡音ルカが計画の邪魔をすると考えたから。リセットの際にあんな措置をとった」
「…計画? グミよ。おまえ誰のために働いている?」

 イアは尋ねる。グミはその発言を待っていたかのように鼻で笑ってから――こう言った。

「私は神威がくぽのために働いているわ。彼を襲う大きなモノから守るためにね」
「……どういうことだ?」
「どうもこうもない、ただそれだけのこと」

 グミはイアとミクを一瞥して――

「だってこの世界のあんたたちには任せられないし」

 笑って答えた。

「――どういうことよ。それ――。だまって聞いていれば!!」

 初音は我慢が出来なかった。その言葉と共に初音はグミの元へと走り出す。

 だが、初音はグミの姿を見ることはなかった。

 直後に、グミの姿は、消滅したからだ。



≪第四節≫

 階段を登ろうとした瞬間、神威の世界が歪み出した。
 否、世界もろとも眩み始めていた。

「なんだ……、これ……?!」

 神威はそれに抗うことすら許されなかった。








✝










 そのころ、初音とイアも世界の歪みを体験していた。

「な、なにをしたの?!」
「わからないわ……。私だってそんなこと……」

 イアですら、この現状に理解できなかったようだった。
 そこへ、ひとりの人間が近づいてきた。

「リリー。なぜここへ……!!」
「リリー? だれよそいつ」
「神管とかなんとかほざいてるやつよ」
「――ちょっと待ってくれ」
「どうした?」

 イアは少し考えて、そして言った。

「――リリーなんて人間、神管にはいないはずだぞ?」

 その言葉を聞いて、初音の心はざわついた。それを解っていたかのようにリリーは微笑む。

「嘘だろ? なら、なにものなんだ……?」
「科学者さ。ただのしがない、ね」

 そう言ってリリーは消えた。

 そして、世界の歪みは頂点へと達した――


つづく。

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【リレー】僕と彼女の不思議な世界 05 MGR団【後編】

第四章後編。あと1話です。

第一章:http://piapro.jp/t/i9vG 03/10
第二章:http://piapro.jp/t/pZz8 03/10
第三章:http://piapro.jp/t/UAV6 03/18
第四章 前編:http://piapro.jp/t/WYaz 04/04
終章:04/24

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投稿日:2012/04/23 23:42:24

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カテゴリ:小説

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