カイトと來果のようには、自分たちはどうしてもなれない。離れていても距離を感じさせないような彼らと違って、自分とマスターはどれだけ近くにいてもその間には越えられない距離があるから。
マスターは自分の言葉を受け入れてくれなかったし。自分も又、こうして逃げてしまった。
「けど、ここのコンビニでメイコさんに会うなんて思っていなかった。メイコさん家、駅の向こうでしょ?」
アイスの棚を物色しながら來果がそう問い掛けてきた。その言葉に、ああまあそうです。とメイコは歯切れ悪くもごもごと呟いた。
「ちょっと、あって」
自分とマスターの問題だから他のボカロマスターに心配をかけるのは良くない。
それにこんな風に心配をかけたらまたカイトさんに嫉妬されてしまう。そう思ったけれど、來果の柔らかな雰囲気に甘えてしまっている自分が居るのも事実だ、とメイコは思った。せめて何でもない事のように感じてもらえるように、と苦笑を浮かべて、マスターに小言を言っちゃったんです。と言った。
「マスター自身が一番よく分かっているだろうことを、つい指摘してしまったから」
そう言って、たははと笑うメイコに、そっか。と來果はいたわるように微笑んだ。
「うん、それが…ちゃん、だよね」
「え?」
珍しくちゃんと聞きとれず、思わず訊き返したメイコに來果はうん、と穏やかにひとつ頷いていった。
「やっぱりMEIKOはお姉ちゃんだから。相手を大切に思うからこそ、つい小言を言ってしまう印象があるなぁ。自分が不利になってもそれでも言いたい事はちゃんと言う強さ、というか」
そう言って、まだ知り合って間もないのにこれってきめつけだよね?と來果は苦笑した。
ううん、とメイコは首を横に振って。ありがとうございます。と微かに掠れた声で言った。
「なんか、なんだろ、嬉しい、です」
そう言ってメイコはそっと自分の胸元を抑えた。
上手に言えない感情がそこにあった。すごく当然な事に気が付かせてもらったような気がした。そう、それしかない。それしか持っていない。
距離を感じて、マスターが要らないといっても、自分を必要としないとしても。
そうじゃない。それでも、やっぱり伝えたいのだ。
自分が、マスターを大切に思う限り何も終わらない。距離なんか関係ない。目の前に何かが立ちふさがってもそんなものは知らない。
自分ははじめてのボーカロイドで、皆の一番上のお姉さんで、だからこそ持っている力がある。カイトのようにただ真っ直ぐにマスターを慕うような強さは無いけれど。必要ないといわれても遠くに感じても、追いかける力も前を切り開く強さを自分は持っている。
マスターに嫌われてしまうかもしれない。お前なんかいらないといわれてしまうかもしれない。受け入れられなくても良い。それでも、伝えたいのだ。自分が言いたいのだ。
もういちど、マスターに言おう。同じことの繰り返しになっても良い。自分は一番最初に生まれて器用さなど身につけてこなかったから、真っ直ぐに追いかけることしかできないけれど。それでも追いかける事はできる。
いらないと冷たくされても痛みを感じても、それでも自分はくじけない強さも持っているはずだから。
「來果さんはやっぱり凄いなぁ」
自分の身の内の熱を感じつつ、メイコが思わずそう言うと、えぇ!?と來果は驚いたように声を上げた。
この人は自分の凄さを分かっていない。そう思ったらなんだか可笑しくて、メイコはくすくすと笑った。
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