砂の中から突き出す手。その手には見事な装飾の施された指輪がはまっていた。
本当に死ななかった。
元、城だった砂の中から這い出した俺は目をぱちぱちとさせて、自分の身体を見る。傷一つない。

『任務を遂行するまで、死ぬことは許さぬ。』
こういうことか…
俺は神が去り際に言ったことを思い出しながら、妙に納得していた。あの後俺は王室と共に崩れ落ち、砂と化した城の残骸に埋葬されてしまったのだ。生きているとすれば、神の加護があったとしか思えない。
一呼吸置いて、俺は周りを見渡した。酷い有様だ。辺り一面砂と瓦礫と骸の山だった。

「惨い…」
俺は一言そう呟いた。風が辺りを撫でて砂が舞い上がる。神が抱懐させた人の城は城下街まで飲み込み巨大な死の山を作っていた。場内にいた騎士団はおそらく全滅だろう。俺は砂の山から下り、かつて俺と姉さんが住んでいた家のあったであろう場所に向かった。比較的城に近かったそこは、もはや見る影もないほどになっていた。

「…姉さん。」
俺は感覚で場所を決めると、手ごろな大きさの石を置き、その前に俺の元からの剣を突き刺した。

「俺、結局守れなかったよ…姉さんが大好きだったこの町を…」
俺は石に手を合わせて、そう呟いた。

________________________________________

「私は、この町が好き。空気が綺麗で、にぎやかなこの町が…」
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眼を瞑ると姉さんが今でも微笑んでいてくれるような気がした。いつまでもここにいたい…でも、世界はそうはさせてくれなかった。
しばらくそのままたたずんでいると、ガヤガヤと大勢の人間が言い争っている声が俺の元へと届いてきた。その声は俺の集中をかき乱し、まるで俺と姉さんの間に割って入るように聞こえた。

「城が崩れたのは神に逆らったからだ!」

「いや、王は間違っていない!神は元々こうされるつもりだったのだ!」

「騎士団は何をやっているのだ!」

「貴様!我々を愚弄する気か!」

「そんなことより、うちの、うちの息子を帰してくれ!」

「やかましい、じじい!国家反逆罪で連行する!」

「そんな事言っても、どこに連れて行くんだ?」
何人かの町の人々が殴り合いになりながら、城の崩壊のニュースを各々で考察していた。何人か騎士団の兵士も混ざっていたが、最早騎士団に治安維持の能力はないようだ。
…五月蝿い。
俺は、素直にそう思った。

「神に反逆した国が悪いのだ!」

「フン!貴様らこそ国の民であるのならば国のために尽くせ!」

「わしの、わしの息子は牧師として国に殺されたんじゃ…」
どいつもこいつも、人のせいにしてばかり…

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「人の心が澄んでいる。神様は違うっておっしゃるけど、私にはこの町の人達の心はとても綺麗だと思うわ…」

________________________________________

姉さんの言う理想とは大違いだ…
俺は、無言で言い争っている民達の方へ歩いていく。

「ヒッ!騎士団の親玉!」

「団長!」
俺の登場に、民達は各々の反応を返してくるが俺は黙って彼らに近づく。

「団長、聞いてくださいよこのじじいが…」
すると、一人の騎士団員が近づいてきて俺に言い争いの内容を話してくる。しかし、俺はそいつの話の途中で抜刀して団員の首を切り落とした。

「ヒッ!」

「団長!?」
崩れ落ちる死体を見て、民は仰け反り、団員達は戸惑った。

「五月蝿い!」
俺はその場にいた人間をなで斬りにした。何人かは手向かいしてきたが、たいした問題にもならなかった。地は紅く染まった。俺は死人を見て思う。姉さんが望んだ物にそぐわないお前達は醜い、この紅い地と同じように…

「へへ、こりゃいい代物だ。」
俺が、一呼吸置いていると背後からそんな声がした。振り返ると一人の盗賊らしき男が、姉さんの墓から俺の剣を抜き取り、持ち去ろうとしていた。

「貴様ー!」
俺はその男を切りつける。しかし、男は俺自身の剣であろうことかカウンター攻撃を仕掛けてきた。俺は喉を切られたが、死ぬことはなかった。

「ば、ばけも…」
いいかけの男を切り捨て、取り返した剣を元んの位置に戻す。
そして、再び姉さんの墓に手を合わせながら俺は隣町の旧都に向かうことを決意した。
俺はこの戦いを終わらせるよ。姉さん…

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

孤高の騎士―Lost Destination③―

150Pさん(http://piapro.jp/aaa_2009)のLost Destination(http://piapro.jp/t/y0NF)(http://www.nicovideo.jp/watch/sm15271378)を自己解釈たっぷりに小説にさせて頂きました。

間、空きすぎじゃね?
おっしゃるとおりでm(_ _)m
軽いスランプで、なかなか書けなかったのですが、今日台風で学校が休みになったので無理やり書いてみました。

なんかだんだんだれてきちゃってるぞ^_^;
だいじょうぶかなぁ…

閲覧数:333

投稿日:2011/09/21 15:10:07

文字数:1,879文字

カテゴリ:小説

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  • 目白皐月

    目白皐月

    ご意見・ご感想

    こんにちは、目白皐月です。

    えーと……すいません、私としては読んでいて非常にひっかかる箇所が複数あるのですが、それを書いちゃっていいのかどうかが判断がつかなくって……。ライトさんが筆を折ったら嫌ですし。
    ですので、ライトさんが「多少きつめでも、この作品を読んでどう思ったのかをはっきり訊いてみたい」のかどうか、ちょっとお伺いします。逆に「自分は楽しみで書いているだけであって、手厳しいことなんか聞きたくない」と言われるのでしたら、この先は書きません。

    どうでしょう?

    2011/09/22 00:33:06

    • Raito :受験につき更新自粛><

      Raito :受験につき更新自粛><

      いつもありがとうございます。
      正直言うと趣味で楽しく書いております。ただ、やるからには技術の上達もしたいと考えております。そのためのアドバイスや質問でしたら喜んで受けたいと思っております。

      ただ、まだ作品自体が未完なのでプライベートメッセージや完結した後のコメントにてしていただけると幸いです。

      遅更新、遅コメントですみません^_^;

      2011/10/04 18:09:11

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