光が収束すると、ぼやけた視界に手術室が見えた。頭が回らず消えたライトを眺めていたが、やがてそこに一人の人物が映った。
父だった。
従兄妹は助かったのか。そう訊ねたくとも口が思うように動かない。指一本動かず己の胸から物々しい管が生えているところを見ると、機械を繋いで無理やり血液を回しているのだろう。
何故わざわざそんな面倒をしたのか。もしかすると心臓以外は、他の患者に移植するつもりなのかもしれない。
勝手に考えて思い付いた可能性にうんざりする。確かに一つの命で一つ以上の命を救えるならそれはいいかもしれないが、その為に亜麻色の少女から引き離されたのかと思うとやりきれなかった。
この状況はいつまで続くのだろう。本当の終わりが来た時、また彼女に会えるのか心配だった。
静寂の中、少年の苦しい呼吸音だけが木霊す。
最期くらい、楽に逝かせてくれればいいのに。ただじっと己を見降ろしている男に抗議の視線を送るも、それに気が付いているのかいないのか何の反応も返ってこない。
いつまで続くんだ。
そう考えた時、周りにある計器類が警告音を上げ、それと呼応するように少年の意識が薄れ始めた。どうやら、本当の終わりが来たらしかった。
「院長、もう限界です! これ以上の維持は極めて困難です」
他の医者達が騒ぎ始め、父が頷いた。そしてこともあろうに少年の頬にそっと手を伸ばして、触れた。手術用の手袋をしていない、生身の手の感触が消えそうな意識の中でもはっきりと記憶に刻まれた。
何を、してるんだろう。
そんな当たり前の疑問が頭の中で形作られた時、また新しい計器が吠え始めた。
「院長」
何かを促す様に切羽詰まった声を上げる周りにまた父は頷き、意を決したように口を開き始めた。
「サキ――……」
最後に自分の名前を呼ばれ、それに酷く安心させられた。
何を言っているのか、言葉を噛み砕く前に少年の意識は真っ黒に染め上げられた。
【二次創作】サイノウサンプラー2-2
文字数が中途半端だったので、これは2の残りの投稿となります@@;
文字数6064文字だった時のやるせなさと言ったらありません><
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