空想癖(妄想癖とは敢えて言わない)のある、小説を書くのが大好きな人間です。 最近(?)某動画投稿サイトで偶然あるVOCALOIDの曲を聞き、 VOCALOIDに嵌まると同時に持病の空想癖がスパークし、ピアプロの存在を知りました。 それに関して無駄に長い小説も書いてしまったので、投稿してみました。 pixivでも同じものを投稿しております。こちらの方が見やすいので、宜しければどうぞ。 http://www.pixiv.net/member.php?id=2887590 読んでくださると言う心の広い方が居れば、どうぞよろしくお願いします。 今一番欲しいものは、ネーミングセンスです。
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東暦六八一年、――数年にわたり異常気象が大陸規模で続いた。農作物の不作による深刻な食糧不足が大陸中で問題になり、食料を確保するために犯罪に走る者も少なくなかった。弱い者は強奪され踏みにじられた。小さな諍いの火種は簡単に規模の拡大を果たし、半年の内に大陸全土が戦火に包まれた。
事の発端は何だったの...心の設計図1-2
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第一章 殺戮人形は籠の外
東歴七〇一年。軍事基地総司令部《ジャッジメンテス》にて。
ボコボコボコ……
「なんだかなぁ、ここ」
一人の少女、十代後半だろう。が、情けないセリフと共に入室する。
無理も無いことかもしれない。一歩この部屋にはいれば、視界百八十度ずらりと並ぶ円筒形の水槽。さらにその中...心の設計図1-1
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救われた者
秋晴れの澄んだ空気を吸い込みながら、一人の女性が郊外にある霊園を歩いていた。今は時期ではないせいか、人通りは少なく閑散としている。
「もう十年か」
世界の医学界屈指の権力者だった男の跡取りである少女が多大な犠牲の上に、大病によって脅かされていた命を長らえてからこれだけの時間が経った...【二次創作】サイノウサンプラー3
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光が収束すると、ぼやけた視界に手術室が見えた。頭が回らず消えたライトを眺めていたが、やがてそこに一人の人物が映った。
父だった。
従兄妹は助かったのか。そう訊ねたくとも口が思うように動かない。指一本動かず己の胸から物々しい管が生えているところを見ると、機械を繋いで無理やり血液を回しているのだろ...【二次創作】サイノウサンプラー2-2
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僕は君の
国一番の総合病院、その院長息子が入院患者であった少女を地下の手術室で解剖し、失血死させた。
こんなホラー映画の一部分のような報道は一切されなかった。理由は簡単だ。醜聞と責任追及を恐れた父が、文字通りその権力の全てを駆使してもみ消したのだ。
少年は総合病院の特別待遇という名の隔離病棟...【二次創作】サイノウサンプラー2-1
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君は僕の
掌からメスが零れ落ちて行った。
目の前に広がる紅い光景。
これは誰がしたんだろう。
どうしてこんなことをしちゃったんだろう。
答えはあまりにも明白だ。
全ては、僕がしたこと。
僕が僕の意思で、僕のために『これ』を切り刻んだ。
錆びた鉄の匂いが消毒薬のそれと混じって充満して...【二次創作】サイノウサンプラー1
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終章 悪ノ卒業
緑の国との友好条約から四年後、ジンとアレンが十四歳になった年の革命記念日。
かつて国を救う技術が開発され、王宮裏に隠された研究施設。機材は全て破棄されて、その代わりいくつか寛ぐための家具がある。そして広い空間の中心には一つの肖像画が鎮座している。顔の良く似た、双子の兄妹のものだ...悪ノ父親(終章
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第八章 夢現
馴染みのある子供部屋のベッドの上で、アレンは意識を取り戻した。もう夜なのか部屋の中は薄暗く、夢の中で会った『天使』の記憶は現実を認識する分だけ壊れていくようだった。
アレンとよく似た、いやもっと言えば父とよく似た容姿をした年齢はアレンより三つか四つ年上の、可愛らしい少女。彼女は背...悪ノ父親(8
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アレンが退出した直後、イルの部屋にて。
「伯父さん、酷いぞ! アレンは本当に伯父さんの目を治したくて」
喚き始めたジンの口を再び塞ぐ。正直イルも息子とほとんど同意見なのだが、言われるまでもなくレンは心底後悔している。傍目には分からないかもしれないが、恐慌状態と言ってもいいくらいだ。
「ジン、いい...悪ノ父親(7-3
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父はアレンに優しくなった。理由は考えるまでも無くて、陛下がそう父に言ったからだ。
嬉しいか嬉しくないかと問われれば、もちろん嬉しい。朝の挨拶でほんの少しだけどこっちを見て笑ってくれた時もだが、夕食後部屋を訪ねて来てくれて分からない事があれば教えてくれると言われて、実際質問に答えてくれた時は、目眩...悪ノ父親(7-2
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第七章 留学
少し時間は遡る。アレンが九歳の時、イルの部屋にて。
「よう、レン」
近年はそこまで珍しい事でも無くなったのだが、本日は有能宰相の休日だった。イルとレンの休日はほぼ重なる事が無いので、更にアズリの休みとも違う日は大抵この義兄はイルの仕事を手伝ってくれている。
十年くらい前のいつか...悪ノ父親(7-1
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窓から夕焼けが差し込み始めた頃。
「たったこれだけで済む事を、なんでお前らは自分達だけで出来ねえんだよ?」
泣き疲れて眠る金髪の少年の身体を愛おしいげに撫でつつ、ブランデーを煽るレンにこう言わずにはいられなかった。
「僕らにとっては、『これだけ』じゃないんだよ」
不貞腐れるように嘆息される。
...悪ノ父親(6-3
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ソファに座って本格的に落ち着ける。
「ごめんなさい、陛下」
一しきり泣き切るまでただ抱きしめていると、天才少年からぼそりと普遍的な謝罪が漏れた。
「言うまでも無いと思うけど、もう絶対するなよ。信用ってのは、たぶんお前が考えてる以上に大切なんだ」
イルの個人的な意見を言ってしまえばむしろ感謝した...悪ノ父親(6-2
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第六章 馬鹿親子
レンが診察を断った一週間後、イルの部屋にて。
「え、青の国から?」
正式な断りはまだ入れていないが、頼んでもいない青の国からの医者が王宮を訪ねてきたとルナから聞き、イルは首を傾げた。更に彼女から医者が持って来たという黄の国からの手紙を渡され、度肝を抜かれた。
受取人がカイル...悪ノ父親(6-1
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宰相拉致事件から丸二日。赤の国へ送ったマリルが帰還したと知り、レンは仕事を中断して執務室に呼びだした。
「ご苦労様です。目的のものは手に入りましたか?」
侍女よろしく女中服に身を包んだ青の国の諜報員は、無言のまま紙束を取り出した。
「ありがとうございます」
笑顔で受け取るが、マリルはどこか納得...悪ノ父親(5-2
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第五章 帰還と反撃
王宮の入り口に一番近い応接間。
イル、ヴィンセント、ディーの三人と、どうしてもここに居ると言って聞かないジンが無言のまま待機していた。セシリアは完全な恐慌状態に陥ったアズリを部屋で宥めてくれている。
急いで最寄りの屯所に行って、数名の兵士にジンを預けて残りを率いて戻ったも...悪ノ父親(5-1