「ねぇねぇ,ペテン師ってなぁに?」


『ペテン師?
　嘘を吐く人のことだヨ』


「本当?」


『えェ』


「その言葉に嘘はない?」


『えェ
　もちろン』


「そぉう
　じゃあ,ペテン師と嘘吐きは,いこーるで結ばれるんだ』


『うン』


「このペテン師が」





































可笑しな感覚

あたしは確かに此処に存在しているのに,貴女はいない
どうしてかしらねぇ?


えぇ?
分からないぃ?
そんなことはないでしょう

簡単なことなんだから


《あの人》に愛されなかった


それだけでしょう?


あたしはね,選ばれたのよ
【大好き】って言ってもらったのよ

ふふふ



貴女とは大違いね

貴女は捨てられた
塵よ塵

哀れねぇ



そんな汚い顔にはねぇ,どれだけ化粧しても意味ないのよ?

所詮は,上辺だけの仮面作りにしか過ぎないのだから


ねぇ?










ほら

声が聞こえるでしょう?


何?
聞こえないの?



あ
そうね

貴女,この前耳もがれてたものね


でもね
あそこで反抗しちゃいけないわ

貴女は所詮,玩具
玩具は何されても黙ってじーっとしていなきゃいけないのよ?


ほんっと
駄目な子よねぇ
不良品



ほら
特別に教えてあげるわ

あっちよ


流石に,目はまだ腐ってないでしょう?









跪きなさい
頭を下げなさい
拝みなさい

哀れに願い乞いなさい


私を壊してくださいと























可笑しな感覚

私は確かに此処に存在しているのに,【貴女】はいない
どうしてかしら?


え?
分からないの?
そんなことはないでしょう

【貴女】は頭の良い人
分かっているのでしょう?


《あの人》に愛されたから


ただ,それだけ


貴方は,選ばれた
【大好き】って言ってもらった


【貴女】はそれを誇りに思っているのね
でも,私にはそれがどれだけ名誉なことなのかがイマイチ分からない

だけど,それを胸に【貴女】は毎日を過ごしている



私とは大違いね

私は捨てられた
それに対しては何の感情も無い

塵と云われようが,何とも思わない




私に無いものを持ってる【貴女】が羨ましい
私が抱く感情は,此れだけ




こんな汚い顔には,どれだけ化粧しても意味はない

所詮は,上辺だけの仮面作りにしか過ぎないのだから


分かってるわよ
誰よりも分かってる


でもね,しなくちゃいけないのよ


私が,死にたくて死にたくてたまらない【貴女】に出来る,ささやかな抵抗はこれぐらいしかない


でも

これが一番効いてるんでしょ?


普段は見せないマヌケ面

化粧,出来ないのよね



私は,【死】の塊だから,いつでもこの化粧なの

どぉう?
羨ましいでしょう?










『ほら
　声が聞こえるでしょう?』



首を振る



『何?
　聞こえないの?』



頷く頷く



『あ
　そうね

　貴女,この前耳もがれてたものね』



どうやったら,哀しそうな顔って出来るのかなぁ?
眉をひそめてみようかな……



『でもね
　あそこで反抗しちゃいけないわ』



目を見る
汚い目
薄汚れてる



『貴女は所詮,玩具
　玩具は何されても黙ってじーっとしていなきゃいけないのよ?』



私が玩具だったら,【貴女】は何になるのよ?


えぇ?
お姫様?

笑わせないでよ




玩具を夢見る,小娘さん













『ほんっと
　駄目な子よねぇ
　不良品』



確かに,私は不良品かもしれない
だけど,不良品になるまでの過程に全く触れることも出来ていない【貴女】には云われたくないわね




『ほら
　特別に教えてあげるわ』


『あっちよ』



【貴女】は指差す
その先には,《あの人》の姿



『流石に,目はまだ腐ってないでしょう?　』



【貴女】は嗤う

そんな顔していて良いの?
大丈夫なの?

あとで,捨てられても私は知らないからね









跪きましょう
頭を下げましょう
拝みましょう

哀れに願い乞いましょう


私を壊してくださいと













全ては,《あの人》の為


嘘



全ては,《あの人》と遊ぶ為




















でもね,遊ぶ場所には注意が必要


今夜もそろそろね
私は,××に帰らなきゃ


【朝】が来る
太陽が来る
光が来る



【貴女】の時間が来る






だから,帰るの
××に


続きはまた今夜ね

夜更かしも程々によ?
















夜が良いの

朝は嫌い
昼も嫌い
光が嫌い


これっておかしいの?
























あぁあ
ツマンないの

もう,夜かぁ



夜になったらさ,《あの人》は塵と遊び始める
塵よ?　塵



だけどね
わたしはそれでも可愛い子でいなきゃいけないの

分からないフリをして馬鹿を演じる



上手に《あの人》に騙される
上手くいけば,御褒美が貰えるの


何かって?

それは,云えないわね
自分で掴み取ってからのお楽しみだから





















今夜は,《あの人》は私とは遊んでくれないみたい
【貴女】の方へ行ってしまった



まぁ,いいわ

可哀想な娘
自分がどうなっているかも分からずに,そうしているのね


云われるがままに,されるがままに……





一つ,残念な点を上げるとすれば,それを【貴女】自身,不幸と感じていないところ
でも,それでも十分面白いことになってる












【他人の不幸は蜜の味】


誰が考えたのかしらね
素晴らしい言葉だと思うわ

でもね,もーっと甘い蜜を見つけたのよ
それはね……





己自身の不幸





これが,一番の蜜

結局,一番甘いものは近くにあるの
そんなに遠くまで,危険を冒して探しにいく必要はないのよ?

























擦れっ枯らし
莫連


阿婆擦れ


不潔
不浄
汚濁
汚穢
尾篭




嗚呼
この世は汚いものばかり




皆様,美しい玩具になってみる気はありません?











そんな醜い肢体を晒して何になるの?


嗚呼
此の世は馬鹿ばっか




馬鹿は嫌い


死んじゃえばいいんだよぉ






















《あの人》は,滅多に笑わない

ニコリとするなんて,考えられない
だからね,笑ってる《あの人》を見たときにはすぐに逃げなきゃいけないの


何かいつもと違うことが起こるから……

















『私ねぇ,この前,男に騙されたのよー
　でー,そいつが言ってきたわけねー
　『お前は俺の目に映ってないから』ってー
　何な訳!?』



ふーん
馬鹿は気楽で楽しそーだねー


そーんな,安い不幸自慢で何が変わるっていうの?
話すのならもっと壮大な話をしなさいよ






私は相当のことが無ければ【涙】なんて流さないわよ?
















【貴女】は,どうしてそんなに驚いているの?
ただ,《あの人》が珍しく笑っているだけでしょう?




喚くな
五月蠅い

黙れ


この,キチガイ善人気取りの大馬鹿醜雌が









何?
そんなことして楽しいの?



えぇ,確かにその儀式はとっても素晴らしいものよね

何て云うのかしらねぇ……





純潔
純真
至純
純然
無垢
生粋


永久に孤高の少女【天使】となれるの







とってもとってもぴゅあなのよ?
この人害を,終わらすことは【貴女】には出来ないでしょうね



だって,薄汚れたいと願いながらも,誰よりも早く,硬いシェルターの中に避難する
そんな存在で在るのが【貴女】でしょう?


























花を見つけた
誰にも見つけられることなくひっそりと咲いていた花


どうして,そんなにいっしょーけんめー生きてるの?

そんなことしたって,所詮はただの花
ずーっと,誰も見てくれないのよ?



花は黙って背を伸ばす



気付かれなければ,無意味な存在なの
なのに,我武者羅に生きるなんて無駄でしょう?



花はこちらを見つめてくる



今,私が楽にしてあげるからね







花は其処に咲いていました

















花が其処からいなくなっても『其処に居た』という過去はなくならない
器はなくなっても中身は今も其処に存在している



中身を失くして器だけで彷徨っている【貴女】とは随分と違うわね
器なんて無くなっても全然構わないのよ

中身が無い【貴女】なんて,塵以下よね




あぁあ
醜いわねぇ


その躰




私は早く忘れたいの
ねぇ,今すぐ消え失せてよ




















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