展示会の会場で、霧雨さんのブースの前の、ゴタゴタは、まだ続いている。
「ネエ、たこるかチャーン、ボクが悪者でないことを、皆サンに言ってクダサイヨ」
皆に白い目を向けられたおじさん、ジローラモ・れおんさんは、困ったように言った。
「うん。悪者かどうかは、別としてさ」
皮肉っぽく、たこるかちゃんは片目をつぶった。
「この人、いちおう変な人じゃないですよ。うちの会社の、チーフのバイヤーさんです」
リンちゃんと、霧雨さんは、それを聞いて目を丸くした。
「え、バイヤー? そういう貴方は?」
霧雨さんが、2人に向き直って聞いた。
たこるかちゃんは答えた。
「私、ハミングスの移動カフェ、“ドナドナ号”の担当の、多胡流香です」
リンちゃんは、目をさらに見開いた。
「ハミングス、って、ルカさんのいる会社でしょ。じゃ、このオジサンは、ルカさんの同僚さんなの?」
●“はっちゅーね”量産計画
「エエ、そうデスヨ」
れおんさんは、ニガ笑いして、首をすくめた。
彼は、頭を掻きながら、説明をはじめた。
「アノ、今日、ボクがここに来たワケは、ウチの会社の新しい商品のもとになる、良いキャラクターを探そうと思ってデス」
彼は、そう言って、霧雨さんが持っている“はっちゅーね”に目をやった。
「とくに、そこの“はっちゅーね”は、前から知ってましたネ。これは、たしか、ギャル社長の、初音ミクさんの手作り商品でしたネ」
「そう。ミクさんたちが手作りで、こつこつ作ってるのよ。“知る人ぞ知る”スグレモノの、人形よね」
霧雨さんは、人形を“奪われまい”とするように、しっかりと持ち直した。
「ソウデス。でも、ウチのハミングスで、ミクさんとコラボして、ライセンス商品として、量産したいと思いマシタ」
れおんさんは、リンちゃんの方を向いて言った。
「アナタが“はっちゅーね”を抱いている“イラスト”で、キャラクターグッズを作ったら…とオモイマシタ」
●この際、ブレイクしちゃいましょう…
それを聞いて今まで、リンちゃんと“はっちゅーね”を、彼から守ろうと身構えていた、ファンの男の子たちは、表情をゆるめた。
「へえ、結構、面白いじゃん、おじさん」
「いいところに、目を付けますね」
敬語を使う人もいる。
リンちゃんは、それを聞いて、さっき、冷たくあしらった態度を思い出して、少し悪いような気がしてきた。
「私をキャラクターに…?、でも、まだ私、高校生だしなぁ」
「いいじゃないですか、リンさん。この際、人気者になって、一気にブレイクしちゃいましょうよ」
勝手なことを言うファンもいる。
そんなやりとりを、うしろで聞いていたコヨミ君は、腕を組んだ。
「ハミングスが、ミクさんたちとコラボ、ね…? リンちゃんがらみでねぇ」
首をかしげていた彼は、ふと会場の向こうに目をやった。
「あ!あれは、ルカさん」
雑貨フェアの会場の通路を、こちらに向かってゆっくりと長身の女性が歩いてくる。
いま、話に出た、ハミングスの商品担当の、巡音ルカさんだった。
その声で、リンちゃん、れおんさん、たこるかちゃん、霧雨さんも、その方を向いた。
ルカさんは、ブースに向かって笑いながら歩いてくる。
霧雨さんの抱いている“はっちゅーね”が、大声でつぶやいた。
「さぁてさて、お立会いー。役者が、そろってきましたヨー」(σ_σ)ゞ
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もっと見る霧雨さんのブースに向かって、ルカさんがゆっくりと歩いてきた。
「ルカさん!」
「たこるかちゃん、おつかれサマ」
彼女は、たこるかちゃんに向かって微笑んだ。
「あら、れおんさん。どうしたの?」
たこるかちゃんは、ルカさんにこれまでのいきさつを、手短かに説明した。
「そうなの!れおんさん、リンちゃんと“...玩具屋カイくんの販売日誌(192) リンちゃん+“はっちゅーね”の行方は?
tamaonion
“はっちゅーね”の人形を持った、リンちゃんに、どこかアヤシイおじさんは、話しかけつづけている。
「アナタもかわいいし、人形もカワイイねー。」
リンちゃんはちょっと困って、でも強気に応戦する。
「でも、おじさん。写真ばかり撮ってるけど、私が目的?人形が目的?」
おじさんは、ニコッと笑って答えた。
「ウ...玩具屋カイくんの販売日誌(189) リンちゃん攻防戦、開始!
tamaonion
ブースの前で、コヨミ君と、れおんさんは、にらみあって立っていた。
ザワザワ、と騒ぎ出した男の子たち。
それを見て、テトさんは思わず、コヨミ君に声をかけた。
「ねぇ、どうしたの? もめ事はよくないですよ」
フッと我に返ったように、コヨミ君は彼女の方を見た。
「あ、テトさん。ごめんごめん。ちょっと、大人...玩具屋カイくんの販売日誌(194) 新商品で勝負だ!
tamaonion
お店の売り場には、コスメや、美容関連のアイテムが、いろいろ並んでいる。
それを、レイムさんは目を丸くして眺めている。
「ワタシ、こういうの詳しくないんだわ~」
そうつぶやく彼女に、後ろを歩いているぱみゅちゃんは、諭す様に言った。
「そうそう。あんたはちょっと化粧っ気が無さすぎるからネ。少しは知っとい...玩具屋カイくんの販売日誌(179) レイムさんのオカルト理論 (その1)
tamaonion
「はーい。コーヒー、入りましたよ」
ルコ坊がカップに入ったコーヒーを、レン君たちに運んできた。
ちょっと不思議な雰囲気の、りりィさんのお店「星を売る店・上海屋」
りりィさんを送ってきたレン君は、美味しそうにそれを飲んだ。
「いつも、美味しいね。ルコちゃんの淹れるのって」
「へへ、どーもありがとう」
...玩具屋カイくんの販売日誌(187) 困ったヤツの目的は?
tamaonion
ゆくりさんのお店で、バイトのレン君が、青くなっていた、その頃。
東京・有明にある東京ビッグサイトで、人気のイベント「雑貨&コミック・フェア」が開かれていた。
企業のブースをはじめ、コミックやフィギュアを作る有志や同人の人たちが、それぞれにブースを出展している。
会場のホールの一角に、移動式自動車のカ...玩具屋カイくんの販売日誌(182) コミックフェアで、ひと騒動
tamaonion
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ご意見・ご感想
オレアリア
ご意見・ご感想
tamaonionさん、今晩は!
リンちゃんへの執拗な行為で周囲から責められ、窮地に陥ったジローラモ・れおんさん。どうなるかと思いきや、たこるかちゃんの助け船で皆からの理解を得られて何とか一段落。ヘンなおじさん危機一髪!
しかしenarinさんのお話で、多胡という名字の方が本当におられるというのは驚きました。ちなみに僕の姉の子供の名前が瑠華なんですが(←聞いてない)
ハミングスのルカさんとれおんさん、そしてはっちゅーね。いよいよ役者が揃いましたね!商品化の計画は、果たして進展するのでしょうか?
さぁれおんさん、もうひと押しだ!
次回も楽しみにしています!
2013/04/09 21:16:38
tamaonion
オセロットさん、コメントありがとうございます!
>しかしenarinさんのお話で、多胡という名字の方が本当におられるというのは驚きました。ちなみに僕の姉の子供の名前が瑠華なんですが(←聞いてない)
へええ、そうなんですか!いいお名前ですね。品があって、印象的ですよね。いやぁ、偶然って重なると何だか不思議ですね。楽しくなります。きっと皆に好かれる方になるでしょうネ。
>さぁれおんさん、もうひと押しだ!
あはは、こうして書いていると、何となくイジメたくもなりますが?(笑)、まあ人の良いおじさんということで、試練は与えないようにしようかとも、思ってます。
また、感想を聞かせてください!
それでは、また。
2013/04/10 22:01:07
enarin
ご意見・ご感想
こんばんは♪ 早速拝読させていただきました。
いや?、れおんさん、偉い人だって事、全員わかってくれたようでなによりです。それにしてもファン連中の変わり様は、まさに現実の一部のファンの態度そのもので、わかっていた物の、いいような悪いような…。
で、たこるかさんの漢字名には唸ってしまいました。実は、”多胡”って名字の方、母の知り合いで、実際にある名字なんですよね。勿論、若い人限定だと思いますが、”流香”って名前の女性もいると思います。
さてさて、れおんさんが企画し、ファンが押せ押せの状態になっている、リンちゃん+はっちゅーねの企画、どうなっていくのか楽しみです!
ではでは?♪
P.S 今日はとても風が強い1日でした。各地で風の被害も出たようです。まだまだ春の嵐がやってきて、落ち着かない天気ですが、是非ともご自愛くださいませ。
2013/04/07 20:42:33
tamaonion
enarinさん、感想をありがとうございます!
>それにしてもファン連中の変わり様は、まさに現実の一部のファンの態度そのもので、わかっていた物の、いいような悪いような…。
ですね。ファン心理ではあれど、意外とちゃっかりしてる人、いますよね(笑)
自分のことはさて置き、贔屓の人のためには妙に行動力が出たりして。
>実は、”多胡”って名字の方、母の知り合いで、実際にある名字なんですよね。
そうなんですか、面白いですね。偶然は小説よりも奇なり、ですネ(笑)ビックリしました。
あと、「レイトン教授」の謎の監修をされている博士が、たしかそんなお名前でしたネ。
展示会場には、いろんな方が集まりますけど、個性がぶつかり合うところも、面白いですね。
また、感想を聞かせてください!
春も深まってきましたが、朝晩はまだ冷えます。健康に留意しましょう。
それでは、また。
2013/04/08 22:56:50