クオ視点
「…ついて来るな…っ!リンは戻ってろ!」
俺は、ついて来るリンにそう言った。
「何で、何処に行くの?ミク姉を助けられるの!?ねえ、クオ兄、何か言ってよ!」
悪UTAUとの戦闘の最中、チャンスだと思って、ミクを助ける為にエンジェに早く行こうとしているのをリンにとめられている。
リンは、俺がやろうとしている事を、薄々わかったらしい。
だから、こうやってリンは俺を追っているのだ。
「エンジェで何をするつもりなの!ねえ、さっきの『ヒカリ』はまだ終わってないって、続いてたってどういう事!?」
「リンだって、わかってるだろ…」
俺は、転移ゲートを開いた。
これでいけば、リンはもう俺に追いつけない。
これが、俺とリンとの、最後の会話になる。
そして、ミクは、もう俺に会う事もないだろう。
その時には、もう…。
俺は、居ない筈なのだから。
「じゃあな。リン。ミクの事。宜しくな」
「クオ兄っ!やめて、やめてええええええええっ!!!」
ゲートは光り、俺の機体を包み込んで消える。
光が止んだ頃には、もうリンは一人ぼっちで宇宙に残される。
暫くすれば、エンジェルボイスターがリンをみつけるだろう。
俺は、ミクを助ける。
ミクの魂は…あの星に…。
キョウ視点
「あの…貴女は…」
私は、目の前に居る女性に話しかける。
その人は、先程私達の隣に居る子供達が『お婆様』と呼んでいた。
「ああ、いかにも。わしが、この子供達のいう『お婆様』じゃ。ふむ。お主らは、あのボーカロイド隊という者達であろう?わしの娘と孫が迷惑をかけていないか?」
「まご?」
私は、思わずその女性を見つめる。
うん、居たとしてもかなり小さい子供だろう。
いや、孫が居るほどの年じゃない気がする。
まあ、それは、彼女が普通の人間だったらの話だけど。
「わしは、アンジェ・ユネ・ドリームじゃ。ミリ達が世話になっとるの」
エンジェ星の王族。ドリームの姓を持つ者。そして…ユアさんの祖母であり、ミリさんの母親。
それが、私の目の前に居る女性だった。
「あの…失礼だと思うのですが…。年齢は…」
「う~ん、そうじゃな。もう…数百年…」
「え!?」
「とまではいかないが、百年はもう経っておる。それが、純血のエンジェ族という者じゃよ。だが、ミリは普通の人間くらいしか寿命を持っておらぬ。子が親より先に逝くのは…かなり寂しいのう。セリの事もじゃ。じゃが、ユアは何か強い力を持っておる。純血のエンジェ族も持っていない…。強い力を」
「おい…どういう事だよ」
これまで黙っていたアクアちゃんが口を開く。
「ユアはクォーター。エンジェの血はかなり薄いはずだろ?どういうことだ」
アクアちゃんの言葉に、アンジェさんは降参とでも言うように首を横に振った。
「それはわしにもわからぬ。ただ、ユアは只者ではないの。お主…アクアと言ったかの?その体も、ただの機械ではない。それの主人格のララは、今は何かに囚われておる。ララは…生まれるはずだったあやつの魂じゃからの…わしも、ララには、無事で居てほしいものだ」
「生まれるはずだった?それは、どういう事ですか…?」
私はアンジェさんを見る。
「おぬしは先程から質問ばかりじゃのう。もうそろそろわしの質問に答えてくれぬか?」
「え、あ、すみませんっ!…で、何でしょうか」
「ふむ。おぬしは…エンジェクリスタルを持っておるの」
アンジェさんがそういいながら、私の方を見た。
「えっ?」
「じゃから、持っておるのじゃろう?あのクリスタルを」
私は、何も持ってない。エンジェクリスタルなんて、ユアさんとララちゃんの持っているものしか知らない。
どういうわけか、よく分からなかった。
「その体に、破片が埋まっておる。それは、ララの力が込められている。あの、マイという者もそうじゃの。ララが力を貸した。という事か…。まあいい。次の質問にいっていいかの?」
「は、はあ…」
これは…質問ではない気がするけど…まあ良いか。
続く
歌姫戦士ボカロボット第31話
クオ君は一体何をしようとしているのだろうか…。
クオ君の生死はまだ分からないです…。
次回予告
リン「クオ兄を止めなきゃ…。そうしないと、クオ兄が…。もう、ミク姉を悲しませたくない…。次回「実らないモノ」ミク姉は、クオ兄の事を大切に想ってるんでしょ…?」
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