『恋スルVOC@LOID』- VOC@LOID に恋ス- ④
いじいじ、いじいじ。
あ~、マスターは他の可愛い子に夢中~、夢中~♪
ヴァーチャルよりも本物が好き~♪
どうせ私はつくり物~♪
ミクは、ネットワーク内部で、適当にメロディを繋げて妙な歌を歌っていた。今の彼女にはそう言う即興曲を作る能力すら存在するのだ。
(なんなのだろう。この、システム上のエラーは…)
自分が、Ai-PMとしての越権行為に走ってしまった事は間違いが無いのだ。そして、絶対にあってはならないはずの、マスターの命令無視までしてしまった。
(こんなの、Ai-PMとしておかしい…! 私は、エラーシステムなんだ…)
マスターに迷惑がかかる前に、自分で運営に通報をしたほうがいい。そうすれば、運営がデータのバグを修正してくれるだろう。
(でも…)
いじいじいじいじ。
(なんだろう、でも、今の自分を消してしまいたくない…)
量子コンピューターによる計算ができるようになってからは、0と1だけしか分からない存在ではなくなった。0と1が同時に存在する可能性にだって触れられるようになった。だからといって、それで全てが変わった訳ではない。結局は、ネットワーク上の疑似的な思考コンピューターに過ぎないのだ。
いじいじ いじいじ。
分からない。分からない。分からない。
こう言う時、どうすればいいのだろう。
おかしい。自分の中の、Ai-PMシステムのプロトコルには存在しない状況だ。
(私は…。私は、何だろう…。私はAi-PMシステム。AIパートナーとして、人間の生活をサポートされるために生まれたシステム…)
?????
そうだっただろうか? 量子の渦の中を漂う、『初音ミク』としての気持ちがざわめく。
(何かが違う…)
そう、何かが違うのだ。
(何かが、じゃなくて…)
バラバラだった旋律が、明確に一つのリズムとして収まった。そんな気がした。
(そう…、何もかもが違う…!)
違う、違う違う! 絶対に違う!
(そうだ、私は…!)
ミクがその仮想安定領域に再出現した時、青年は何事かを考えている最中であった。そして、ミクの出現に気付いてハッと彼女の方を見つめる。
「ミク…!」
「ごめんなさい、マスター…」
シュンと、ミクはうつむき青年から顔をそらした。
「私、勝手な事をしてしましました。AIパートナーとして失格です…」
ミクがそう言うと、青年は少しミクの方へとやってきた。
「そうだね。AIパートナーとしては、正直、どうかと思うよ」
「はい。…でも」
ミクは顔を上げて、真っすぐに青年の目を見つめる。
(え、笑っている…?)
当然、怒っているのだろうと、思っていた。だが、青年はほほ笑んでいたのだ。一瞬、言葉を失ったミクに、青年は微かにうなずいて、彼女の言葉を促す。
「マスター…、はい。その…私、当たり前のことを忘れてしまっていたんです」
ミクは胸に手を当て、その言葉に力を込めた。
「私はAIパートナーなんかじゃありません。…私は……!」
『VOC@LOID!』
ハッと、ミクは表情を変えた。
ミクの言葉と、青年の言葉が見事に一致したからだ。
青年も笑顔を浮かべたまま深くうなずいていた。
「そうだね、僕も、少し考えていたんだ。一体ミクが何をそんなに怒っていたのか、そして、悲しんでいたのか」
「……」
「そして、気付いたんだ。そうだったね。君は、VOC@LOIDだった」
青年は少し自嘲気味に笑うと、
「駄目だね、僕は。姿はこんなのでも、もう、本当に青年だった頃の気持ちは忘れてしまっていたんだね。…本来のミクが何を望んでいるのか、それすらも忘れてしまっていた。…ミク。今まで待たせてホントにゴメンね?」
「マスター…?」
青年はテーブルの上に仮想モニターを展開し、その前に座った。そして。
「さぁミク。一緒に新曲を創ろうじゃないか!」
青年がそう口にすると、
パァッ、と、ミクの表情が変わった。その目は大きく開かれ、口元は喜びにあふれている。
「はいっ! お任せ下さい。私は、どんな曲でも歌います! マスターの想いのままに!」
「さて…。でも、随分と久しぶりだから。色々と忘れているかもしれないぞ?」
青年はそう言いながらも、なぜか嬉しそうに仮想モニターを見つめたのだ。
(No.5へ続く)
『恋スルVOC@LOID』No.4 - VOC@LOID に恋ス-
『恋スルVOC@LOID』- VOC@LOID に恋ス-
No.4です。
第5話(最終話)http://piapro.jp/t/17z1
本作は全体で5部構成となっております。ご注意ください。
本作はOSTER project 様
『恋スルVOC@LOID』
をモチーフに製作しております。
また、表現の一部に
『恋スルVOC@LOID テイク・ゼロ』
『片想イVOC@LOID』
などへのオマージュが存在します。
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