悪魔は、金色の天使が凛然と言い放った覚悟にただ驚嘆した。
そして自身にも変革の時が訪れた事を悟る。ただ臆病なだけであった自身を、望み叶う事を欲するならば覚悟が必要なのだと叱咤する。
「ならばゆけ。そしてその誓いを果たすがよい。
そなたの覚悟、しかと我は見せて貰った。」
紫暗を最後まで艶と纏わせた大悪魔はついと少女の方を天使に示すと、掻き消えた。
途端に、天使の身体がゆるりと軽くなる。
濃い邪気が天使を包んでいた。
外からの穢気はそれに阻まれ、天使の内にある穢は邪気へと吸されていく。
それは悪魔の出来るただ一つの、守り。
天使は一瞬目を見張ると、後はまた堅い覚悟の顔に戻る。大悪魔に示された方へと、迷いも無しに血濡れた翼を動かした。
少女は泣いた。否、今も泣いている。
自ら望んだ事。愛する姉を救うために選んだ、悪魔へと堕ちる事。それはいいのだ。元から是とした事なのだから。
しかし、それでも少女の頬には涙が伝う。少女の心は、絶望を叫ぶ。
あの天使様に、もう二度と会い見える事がない、と。
美しく優しい天使に少女は引かれていた。それは、次第に焦がれへとなった。
───私は、ただ天使様に愚かにも恋をしただけだったのです。
だから再びを望んだ。ただ逢えればよかった。
それは敵わなく、なった。
後悔は持たないと叫んだ筈、なのに少女の心はただ悲鳴を上げる。
穢が身体の全てを蝕んだとき、真に悪魔へと成る。あの、優し過ぎた大悪魔はそう言った。
右目が痛む。金だった髪は既に黒い。爪は鋭くなり、身体が軽くなった。
左目はまだ、人の頃のまま。蒼のまま。右目の痛みが無くなれば、次は左目が変わってしまうのだろう。
少女はその事をただぼんやりと考え、そして、ゾッとした。
「…厭……!」
悪魔になんて、なりたくない!!
「大丈夫です。君は、僕が守る。」
嗚呼。
「天使……様……」
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