【15】
「あーっ、暇っすねー」
「セトにカノも……どうしてここに残ったんだ? 別にどっか行けばいいのに」
セトがソファーで横たわっているといつものパーカーにエプロンをつけたキドが箒で掃除をしていた。
ここのところ――目の能力は無くなった。
専門家が言うには、実験で使われていたエネルギーに感染し、能力が体現したのではないかと言われているが、そのあたりはキドたちにもわかっていない。
「だって、俺達ここが家なんだよ? キドが行くとこだったらどこまでもついていくさ」
「まあ、俺はマリーの家行ってもいいんすけどね……最近はモモちゃんの方行ってるから……」
「だからそんなにやる気ないのか。誰か雑巾がけでもやってくれないかと思ったんだがな。俺の仕事が増えるだけだ」
「……キド、ずぅーっと言いたかったんだけど」
「なんだ?」
「そろそろ“俺”って言うのやめない?」
「……は?」
「だって、女の子らしくないじゃん」
「ば……カノ、お前何を……」
「あれキド顔赤いドベフッ!!」
カノの顔面に蹴りが命中した。
「……いいんだよ。俺は俺のままだ。お前らもお前らのままだろ?」
「……まあ、キドがそうならいいんだけどね」
「そーっすね」
「さあさ! そう言うなら掃除すっぞ! カノはトイレと風呂! セトはキッチンをだ! さっさとやらないと飯抜きになるぞ!」
「「りょーかい」」
そう言ってふたりはパーカーの帽子を深くかぶった。
【16】
「あ、エネちゃんこっちこっちー!」
遊園地ではモモとマリーがメリーゴーランドの前で待っていた。ずっと走っていたのかシンタローはヘロヘロである。
「お兄ちゃん、ほんと運動不足」
「いやあ……これでも復学したんだぞ? 勉強は面白くないけど」
「……それ嫌味?」
「違う違う! だからマリーの目をそっちに向けるな! “マリーの能力だけはそのままになっている”ことを知っているくせに!!」
「……ま、いいや」
そう言ってモモはシンタローの手を握った。
「……今日はいっぱい楽しもう、お兄ちゃん」
「ああ、そうだな」
そして四人は遊園地へと向かっていった。
【17】
「……まさかまた人間と暮らすことになるとは」
アザミはメカクシ団のアジトで暮らすことになった。料理が旨いので当番はキドと交代である。
「アザミさん、今日料理頼めます?」
「……ああ」
セトの言葉にうつむいて、頷く。
「あれ? 体調でも悪いんすか?」
「いや……ただ、人間とまた暮らすのも……悪いもんじゃないな、と」
「なら嬉しいっす」
セトは笑顔で答えて、部屋を出ていった。
メデューサはひとりの男性に恋に落ち、子供まで儲けた。
だけど、人間は寿命が決まっている。
そしてメデューサは彼と永遠に暮らしたいから、終わらない世界を創った。
だけど、人間は死んでしまっていた。
その世界を利用したのは、人間だった。
彼女はもう人間を信用したくなかった。
しかし、エネという少女は――シオンの面影があったからか――少しだけ試したくなった。
そして、それがこの結果だ。
「……これで、よかったのかな……」
アザミは誰にも聞こえるでもない声をつぶやいた。
おわり。
カゲロウプロジェクト 最終話【二次創作】
4ヶ月間、この二次創作楽しんでかかせていただきました。
最後まで、ありがとうございました。
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