世界の終わり。
 テレビや新聞でそんな話題が多く取り上げられるようになったのは、一年前のことだった。
 シナリオもベタなもので、隕石が普段の軌道とは違うらしく、そのままこの星に衝突するらしい。
 小説やドラマ、はたまた映画でやり尽くされた題材――そう言ってもいいだろう。
 事実は小説よりも奇なり、とは言ったものだと思う。
 では、世界の終わりを知った人間達はこの惑星から脱出を試みたか?
 答えはノー。そもそもそんなことを出来る技術が、存在しなかった。
 開発をしようにも、時間はあまりにも不足していた。
 だから人間は――残された僅かの時間を過ごすことにした。成長を諦め、維持に尽くした。戦争は終わり、平和となった。皮肉にも、戦争の時代を終わらせたのは残り僅かの人間の種、そのものだった――ということ。
 それは、私も変わらなかった。
 今日は世界の終わり、その前日。夜にもなると、バーは盛り上がっていた。酒を飲んで世界の終わりを忘れたい、という人も居るのだろう。それは私も一緒だ。
 世界の終わりなんてことは、誰だって忘れたい。
 そこでふと奥の踊り場を見ると、人たちは踊っていた。
 それはどういう踊りかというのは、具体的に一言では言いあらわせない。ワルツ、社交ダンス……ええっと、あれはどういうダンスだったかな? まあ、そんな感じ、といったくらいには雑多なダンスを踊っている。
 いつもはそんなことをする私では無いけれど――どうせ明日には世界が終わってしまうんだ。たまにはそんなことをしたっていいだろう。
 そう思って、私はダンスの相手を探しに席を立った。




 意外と人は居るのだけれど、それでも踊ってくれそうな暇な人は居なかった。
 みんな踊っているか、だれかと一緒に酒を嗜んでいるかのいずれかだから。

「まあ、そんなもんか……」

 なんてことを思わず呟いていたら、一人の青年が目に映る。
 紫の髪をした青年だった。彼は、カウンターで一人酒を嗜んでいた。見ると年齢も近いように見えるし、彼しか居ないだろう。
 そう思って、私は彼の隣に腰掛けて、こう言った。



「ねえ、私と踊らない?」

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【世界の終わりの】ワールズエンド・ダンスホール【………恋】 プロローグ

これ(http://piapro.jp/t/Dhzr)をそろそろまとめようと思ったら、プロローグというか前日譚ができあがりました。
五年ほど待たせてしまってすいません。続きは、まもなく。


原曲「ワールズエンド・ダンスホール」:http://www.nicovideo.jp/watch/sm10759623
イメージソング(モチーフ)「【カバー】ワールズエンド・ダンスホール(piano rock ver.)【ルカ,がくぽ】」:http://www.nicovideo.jp/watch/sm15245979

前編→http://piapro.jp/t/Dhzr

閲覧数:284

投稿日:2017/06/11 22:49:11

文字数:906文字

カテゴリ:小説

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