「おっ、電話だ。誰からだろ」

 初音はそう言って電話に出た。誰からだろう?

「……なんで解ったの」

 初音の声が変わった気がした。怒られているわけでもなさそうだが誰からの電話だろう。まさか親というわけではないだろうけど。

 初音は事故で姉と両親をなくしている。そのためか、遠い親戚――確か僕の祖父の弟のお嫁さんの兄の友人の務めている学校の教頭の父親の孫の兄の子供が初音だったと思う――を頼って僕の家に居候していた。

 なぜ、過去形なのかといえば今は住んでないから。つい数か月前に家を出て近所のアパートを借りているらしい。何かの実験をするためだとか言ってたけど果たしてそれは本当なのだろうか。怪しい。

「――だから、今は関係ないって言ってるでしょ!! 箱庭も実験もただの塊って解ってるんだから水素爆弾でもなんでも使えばいいじゃない!!」

 おい、今縁起でもないこと聞いたぞ。グミはまだジャムパンを頬張っている。どこから取り出したのか牛乳も飲んでいる。

「……ふぅ」

 あ、電話終わったらしい。

「だれからだったんだ?」

 僕は初音に訊ねてみた。

「――姉さんから」

「……は?」

 ――ちょっと待ってくれ。

 僕は今、『初音の姉は事故で死んだ』って読者に説明したばかりだぞ?

「だから。姉さん」

「いや、待ってくれよ。誰なんだよ。そんなわけないだろ」

「いやー。まさか生きてるとは思わなかったよ。それに私の実験手伝ってくれるんだって! 完璧だよね全く!」

 そう言って初音はグーサインを出す。論点ずれてるぞ。

「あ、神威確かあれだよね! リアリストすきだよね! CD頼んどいたから! 初回特典ばっちり入ってるから!」

「なんだよ急に! ……まぁ、嬉しいけど」

「――兄さんがデレた。本気でキモイ」

 言うなよ! 僕だって音楽聞くんだよ!

 というか本気で部屋の端まで行かないで二人とも! 悲しくなるから!

 ……これから、どうするかなあ。




≪【リレー】僕と彼女の不思議な夏休み 3≫




「三話で話を惹きつける、っての解る?」

 いきなり僕に言われても困るんだが。

「例えば三話で死亡フラグ打ち立てた魔法少女が首チョンパされたり」

「ふむふむ」

「まあ、三話ってのは重要なターニングポイントなの」

「それと、この状況に何を?」

「解ってないなー」

 初音は僕の頭を叩いた。痛い。

「おー。いい音したねえ」

「そーいう問題じゃないだろ!」

「解った、話題を変えよう」

 とか言ってまったく話題が変わってないとか……。

「ムーンリット・アートって知ってる?」

「……ムーンリット・アート?」

 聞いたこともない。思わず僕は首を傾げてしまった。

「聞いたことない?」

 一方の初音はその反応に驚いているらしい。聞いたことないんだからしょうがない。嘘の付きようもない。

「そっかー。きっと聞いたことあると思ったんだけどな。今のあんたなら」

 そう言われても聞いたことないものは聞いたことないんだから。

「……まさか、まさかだけど、神威」

「どうした?」

「――あんた、カミサマって信じてる?」



つづく。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【リレー】僕と彼女の不思議な夏休み 3

遅れました。そして、あのシリーズにしました。


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投稿日:2013/01/05 00:01:44

文字数:1,353文字

カテゴリ:小説

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  • 雪りんご*イン率低下

    雪りんご*イン率低下

    ご意見・ご感想

    あ の シ リ ー ズ に し て し ま い ま し た ね!!!←

    っていうか冒頭文が長いですよ!www
    タイトルが遅刻しとるがなw
    そして神威はリアリストが好きなんですね。
    ゴメンよ、私は冒険少女が好きなんだ(叩(……痛い
    で、タイトルが遅刻しt(ry

    それにしてもムーンリット・アート懐かしいですねー。←

    2013/01/05 00:44:03

    • aurora

      aurora

      懐かしいでしょう、そうでしょう。

      神威はリアリストが好きなんですよ……タイトルは僕はいつも区切りがいいところで入れるんで遅刻することがたまーにありますww

      2013/01/05 16:08:26

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