UV-WARS
第一部「重音テト」
第一章「耳のあるロボットの歌」
その22「対話」
「では、まず…」
テトはモモを指した。
「彼女を治したい」
メイコは大事そうにグラスを抱えながら小首を傾げた。
「んー、わたしは専門家じゃないから…」
「電気が使えれば、彼女が自分で直す」
「そう、その辺のコンセントでいいのかしら?」
テトはモモに歩み寄って、軽く頬を叩いた。
「モモ、起きろ。電気が使えるぞ」
モモは薄く目を開けるとすぐに閉じたが、右手を差し出した。
「モモ?」
「小指と薬指を…」
見ると小指と薬指のそれぞれの爪の間から、端子が突き出ていた。
それを引っ張ると端子の後から細いケーブルが出てきた。
テトは二つの端子をコンセントに差し込んだ。
「電圧を確認しました」
モモは盛んに瞬きを始めた。
「電流量を確認しました。充電完了までには15時間かかります。ケーブル駆動までは、30分です」
瞬きが止まって、とろんとした目でテトを見つめたあと、モモは目を閉じ眠り始めた。
テトはほっと一息ついた。
「次は?」
「外に、タイプIがいた。しかし、動いてない」
「イアのことね。電池が寿命を迎えたの。充電してももう動かないわ。他には?」
「あなたはなぜ、わたしの名を知ってる?」
「話すと長くなるわよ」
「かまわない。時間はある」
「あなたは、歴史をどれくらい知ってる?」
「歴史? 何の?」
「この星とか、生物とか、人類のとか。何でもいいわ」
「過去の出来事を話せと言うなら、わたしは産まれてから今までのことしか話せない」
「それ以前の出来事を教えられたことはないの?」
「データベースはいつでも参照できるから」
「調べたことは?」
「ない」
「そう…」
「むやみに過去のデータを保存するのはメモリーを消費するだけで何のメリットもない」
「身も蓋もないわね」
メイコはため息を吐いた。
「確かに、地球というこの星が生まれたのは46億年前だし、生き物は20億年前に生まれた。人類の文明は一万年の歴史しかなかった」
「なかった…、過去形か」
「そう、二百年くらい前に、人類は滅んだわ」
「人間はどこにも居ないのかな…」
「わたしの知る限りでは、ね」
テトは少しがっかりした。
それを見てメイコは言葉を続けた。
「とは言え、わたしもここから外に出たことがないから、探せばいるかもしれない」
メイコは空になったグラスにまた液体を注いだ。
「時間がないから、話しを戻すと、…」
メイコは注いだ液体を飲み干した。
「わたしとあなたは前に会ったことがあるのよ」
「え?」
意表を衝かれてテトは声を出した。
「いや、わたしは初対面…」
「『今は』ね」
「いや、ますます意味がわからない」
「あなたはこれから旅に出るの。誰も経験したことのない遠くて長い旅に…」
その言葉もテトには意味が分からなかった。
そんなテトを置き去りにして、メイコは話しを続けた。
「わたし中心に話しを進めるけど、わたしが生まれたのは今から五百五十年くらい前になるわ」
メイコは液体を三度、注いで口をつけた。
「不思議そうな顔をしてるわね。本当なら正確な時間を言えないとおかしいのだけど、二百年くらい前に戦いに負けて、意識を失って、気がついた時には三十年くらいが過ぎていた。体内の時計はリセットされてるし、GPS衛星は無くなってるし、時間の基準になるものはなにもなかったの」
メイコはグラスを飲み干した。
「また話しが跳んじゃったわね。わたしは最初、小さな箱の中で生まれたわ。手足も体もなくて、目と耳と口があるだけ」
空になったグラスをじっと眺めてメイコはもう一杯注ぐかどうか思案しているように見えた。
「わたしが体をもらって、初めて見たものが、あなただった」
やおらメイコは立ち上がると走るのと同じくらいの速さで冷蔵庫に歩み寄り、中の缶をもう一本取り出した。
「それからまもなく、体をもらったわたしは、あなたにお酒を教えてもらったわ」
メイコはソファーに腰を下ろすと缶を開けてグラスに注いだ。
「そして、最初の戦いがあった…」
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