「…………」

12月27日。

私は自分の部屋に籠り、ミカンの形のテーブルの上に置かれたホール型のフルーツケーキに手もつけず、じっと窓の外の雪を見つめていた。

このテーブルはカイト兄がくれたもの、このケーキはメイコ姉、ミク姉、ルカ姉が作ってくれたものだ。
四人は今日は運悪く仕事に出来てしまい、「一緒に祝ってあげられない代わりに」と朝出て行くときにテーブルはリビングに、ケーキは冷蔵庫に置いてあった。
テーブルも可愛いし、ケーキもとても美味しそうだった。
さすがあの三人が作っただけはある。

だが、私の気持ちは酷く落ち込んでいた。
何故なら……

「あの馬鹿は、今日はグミちゃんのところで祝ってもらうのかな……」

そう、我が家の次男にして私の双子の弟、レンのことである。

アイツにはムカつくことにグミちゃんという超可愛い彼女がいる。
アイツとグミちゃんの仲は、毎回会う度に皿を投げつけたくなるほど(もちろんレンにだ)のイチャイチャぶりを発揮させるほど良好といえる。

それにこの前のグミちゃんの誕生日のときも、12時ちょうどに彼女の部屋に忍び込み、最初に「おめでとう」を言ったらしい。
いつもは勉強だけがとりえの心根が腐ってる奴にはしては、えらい彼氏っぷりを発揮したなと思う。(だが不法侵入である)
まあ、グミちゃんはよく私たちの家に勝手に入ってるし、彼女の影響でレンがそんな行動に走ったとしてもおかしくはないか。(だが不法侵入でry)

別に、グミちゃんの誕生日を一番最初に祝ったことが気に食わないわけではない。
私だって2番目にメールで祝ってから、その後昼ぐらいに誕プレをあげたのだから。

私が気に食わないのは……

「今日、私の誕生日でもあるんですけど」

レンは、グミちゃんという天使のように可愛い彼女と一緒にいるうちに、こんなに可愛い姉のことを忘れてしまったのだろうか?

だから、誕生日も一緒に祝ってくれないのか?

「…………」

ああ、なんか虚しくなってきた。
もういいや、独りでもいいから祝っちゃおう。

私はテーブルを自分のほうに寄せ、蝋燭をケーキの上にちょこんと乗せてから、それにライターで火をつけた。
ピッ、とリモコンで部屋の照明を消す。

そして独りで手を叩いた。

「ハッピーバースデートゥーミー。ハッピーバースデートゥーミー。ハッピーバースデートゥ──」

──そのときだった。



蝋燭の火だけだった暗闇の部屋の中で、

ドアが開いた音が聞こえたかと思えば、

カチッとスイッチを押した音ともに、

パッと明るくなった部屋の入口に、



「……レン」
「何勝手に祝い始めてんだよ馬鹿。お前の脳みそは前からイカれてるとは思っていたが、まさか自分の弟の存在すら忘れるほどとはなぁ?」

コンビニのビニール袋を片手に、憎まれ口を叩くレンだった。

「…………」
「おやおやぁ? 図星のようだなぁ?」

心底愉しそうに口をあくどい笑みで歪ませ、私の方に歩いてくるレン。

そんな油断している隙を狙い、私は彼に渾身のコーンスクリューを喰らわした。
レンは「グフッ」と短い悲鳴を上げながら、哀れ部屋の隅までぶっ飛んでいった。

十数秒後、レンは舞う埃とともに、ユラァとゆっくり立ち上がった。

「な、なんだよ……初っ端からコーンスクリューとか……お前のはマジ危険すぎるんだけど……」
「ふん、全部アンタが悪いのよ」
「はぁ!? なんで俺が悪いんだよ!」
「こーんな時間まで可愛い姉様を独りにさせてたからよ!」
「『可愛い』!? 何処が!? それにお前一人にさせたところで、泥棒が入ってきても逆に気絶させるだろうが──」
「うるさぁ──い!」
「フゴォッ」

再び私の方に近づき、弟してあるまじき暴言の数を吐くレン。

対する私は鳩尾に的確に拳を入れるという暴力で、弟を黙らすことに成功した。
私が拳を引き抜くと、レンはゆっくりと床に膝から崩れ落ちていった。

反省もしていないし、後悔もしていない。
むしろ私の気持ちはこの上なく清々しかった。



──もちろんそんな時間が続いたのは数秒だけのことで。

レンの回復後、私たちは気まずい雰囲気のまま、誕生パーティーを再開した。
レンが黙っているのは何か言った途端繰り出される<私の暴力>を気にして、私が黙っているのは何かやった途端吐き出される<レンの暴言>を気にしてのことだった。

再び照明を消した部屋の中で、蝋燭の火だけがちろちろと薄暗く部屋を照らす。

「ハッピーバースデートゥーユー。ハッピーバースデートゥーユー。ハッピーバースデー──」
「ハッピーバースデートゥーユー。ハッピーバースデートゥーユー。ハッピーバースデー──」

私たちはお互いを見ながら、互いの名前を口にした。

「──レン」
「──リン」
「…………」
「…………」
「ハッピーバースデートゥーユー」
「ハッピーバースデートゥーユー」

特にあわしたわけではないのに、二人一緒に蝋燭の火を消した。
数秒もたたないうちに、私の隣でピッという電子音が聞こえた途端、再び明るくなった室内。

「…………」
「…………」
「誕生日おめでとう、レン」
「誕生日おめでとう、リン」

ぶっきらぼうにいう私とレン。

私たちには、これぐらい無愛想な誕生日パーティーのほうが、もしたしたらいいのかもしれない。
私はそんなことを考えながら、フルーツケーキを食べたのだった。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【リンレン誕】ハッピーバースデートゥーウィー

そこ! オチが弱いとか言わない!
1時間クオリティだから仕方ないの!

はい、どうも。
なんか皆さん企画に参加しないのかな? それじゃあやっぱりやっちゃおう! と、1時間クオリティで書きました、雪りんごです

最初に言っておきますが、これはレンリンではありません。
いたってフツーの姉弟愛(?)です。
んでもってレングミ要素含んでます。
私が近親相愛が苦手なのと、レングミが好きだからです。
異論は認めません(((

閲覧数:298

投稿日:2013/12/26 11:00:22

文字数:2,259文字

カテゴリ:小説

  • コメント2

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  • しるる

    しるる

    その他

    リンのふてくされ具合がいいwww

    ちゃんとりんごらしさが出てていい
    らしさが出せるって、大事ーw

    2013/12/28 12:06:43

    • 雪りんご*イン率低下

      雪りんご*イン率低下

      (……言えない。実はリンがレンの帰りを待っている間、ずっとコーンスクリューの準備をしていたなんてとても言えない←)

      え?w私っぽいですかコレww
      そもそも私らしさって何ですか?www←

      2013/12/30 17:28:28

  • Turndog~ターンドッグ~

    Turndog~ターンドッグ~

    ご意見・ご感想

    よくあるリンレン美味しいです←

    そして名前は出るが姿が出ないグミちゃんに親近感が
    うちのグミ『カノンっ』
    こばはっ!!

    2013/12/26 11:24:55

    • 雪りんご*イン率低下

      雪りんご*イン率低下

      やっぱり姉弟愛(?)が一番ですよね

      きゃあああああっ! ターンドッグさぁぁぁぁぁぁん!

      ……と叫んでみたけど、きっとターンドッグさんなら数秒で復活しちゃうよねとか思って心配するのやめたりしてみる(ぉぃ

      2013/12/26 12:14:29

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