「・・・あ、ここまででいいです」
とあるアパートの前まで来た時、めぐっぽいどは言った。
「ほんとに?」
「・・・大丈夫です」
「・・・あ、でも、これ」
「あ・・・」
「ほら、めぐっぽいどちゃん。今度、自分で買って食べるから・・・」
めぐっぽいどの手に持たせるカイト。
「じゃ、僕はこれで」
そうして、くるりと背を向いて、歩いていく。
「・・・・・・」
なんか言いそうなめぐっぽいど。
でも、言葉は出てこなかった。
その頃。
マスターの部屋には、ミクとリンがいた。
「もうめぐっぽいどちゃんが可愛いのなんのってさー!」
リンが言う。
「本当に可愛いねー。20分の遅刻がそんな理由とか」
マスターは頷く。
「・・・」
ミクは何も言わずに、マスターばっかり眺めていた。
「・・・ちょっと! ミクってば、さっきからマスターにけんか売ってるでしょ!」
「ちがうよ!」
「リンちゃんの方がけんか売ってるように見えるよ」
「ほーい」
マスターには素直なリン。
「今日は、ありがとね。張り込みみたいなのさせちゃって」
「いえ! 楽しかったです!」
ミクが言い、
「マスターのためだったら、どんなプレーでもやりますよリンさん!」
「・・・そっか」
リンの言葉に、若干苦笑いで頷くマスター。
「もうリンちゃんってば、もう帰るよ」
「・・・ミクは先に帰ってて。私はマスターと一緒にいるからー」
「ふ、ふ、ふ、ふ、」
がたがたと今にも泣きそうなミク。
「・・・大丈夫?」
マスターが声をかける。
「ふ、ふええええええええええええええええええええええええええええええええええええん!!!!!」
すごい足の速さで、外に飛び出すミク。
「あ、待って!」
そうマスターが言って返ってきたのは、ドアがバタンと閉まる音だった。
「・・・しばらく、ツッコミし隊見れないねー」
「ううん、明日にはころっとなってるよ」
「? どうして?」
「だって、こういう時は、ルカちゃんのところに走るからねー」
「あ、そうなんだ? ならいいや・・・」
「マスター、構ってー!」
「みかんある?」
マスターは、にっこりとして言ったのだった。
その頃。
「あれ、平熱・・・」
家に帰って、熱を計った私は首を傾げる。
「あれ? おかしいな・・・」
・・・そういえば、
「僕が絶対に守るって、言われたんだった・・・」
そこから頭にぼーっとして、
「あ、ボーカロイドだから、記憶回線が一時的に熱くなっちゃったんだ・・・」
そんなこと、マスターは言ってくれなかった。一言も。
「・・・似てたなぁ・・・」
マスターと、カイトさん。
どっち選ぶって、・・・やっぱりマスターだよ。
私を捨てたけど。
・・・でも、いやな思い出ばかりだけじゃないから。
楽しい思い出も、嬉しい思い出も、同じだけたくさんあるから。
それに私を捨てる時だって・・・
その時、携帯の着信音が鳴り響いて、思考が止まった。
手に取り確認すると、がくっぽいどくんの文字が画面に浮かんでいた。
「・・・もしもし」
『もしもし、カイコちゃんの件はどうなったでござる?』
「そっちは大丈夫だよ」
『そうでござるか。・・・』
「・・・もう切っていい? 今日は疲れたから」
そう言って、私はとっとと電話を切ろうとした。
『・・・カイトと、会ったでござるか?』
「・・・え?」
何で知ってるの? そう言おうとしたけど、言ったら会ったと認めるようなものだ。でも、うそをつくのはだめだから、
「何で?」
とりあえず、とぼけておくことにした。
『・・・今日、カイトから1年ぶりに電話があって、めぐっぽいどちゃんには手を出すなって言われたでござる』
「・・・え」
何で、そんなこと・・・。
『めぐっぽいどちゃんに手を出す気は無いんでござるがねー。・・・そんなこと言われると、手を出したくなるのが俺でござるよ』
「・・・がくっぽいどくんって、自分のこと俺っていうんだね」
気になったことを言う私。
『そうでござる。・・・めぐっぽいどちゃんは、俺のことが好きでござるか?』
「えー」
『その様子だと、あまり好感度は無いみたいでござるね』
受話器の向こうから、苦笑い混じりの声。
『ま、別に本気で狙ってるわけじゃないでござる。それじゃ』
そう言って、電話が切れる。私は携帯を閉じる。
「・・・人参アイスでも、食べよう・・・」
去り際、カイトさんから渡し返された人参アイス。
「と、溶けてる・・・」
あ、あれ? 今、冬だよね? なのに、なぜ、半分液体になってるの・・・。
「お、応急措置!」
私は、冷凍庫に人参アイスを避難させる。そうして、ほっと一息。
「これで、どっちか分かんなくなっちゃった・・・」
マスターと、カイトさん。
一体、どっちが私にとって大事なんだろう?
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