驚きの表情で目を見開くリーリアと、訳がわからずきょとんと首を傾げるレン。
「レン・・・貴方、自分の顔を鏡で見た事はない?」
「いいえ。死神は、鏡や物に映りません」
だからレンは、自分がどんな顔をしているのか知らない。水に映る事もないので、本当にレンは自分の姿を知らなかった。
「私と貴方、まるで鏡に映したみたいにそっくりなの。私が髪を下ろしてその服を着たら、貴方になるくらい」
レンには今一つぴんと来なかったが、仲間内の死神達によく「女みたいな顔をしている」と言われた事を思うと事実なのだろうと考えた。
「何故でしょうか? 私がリーリアに会うのは、これが初めてなのですが」
「私だって知らないわよ、そんな物。ねぇ、それより死神って普段何してるの? 他にも死神っているの?」
リーリアは屈託なく笑い、レンに話を促す。
レンは聞かれるままに死神の事を話した。
死神に人を殺す力はなく、直接死に関わる力といえばただ残りの命を知る力があるだけという事。
自分以外にも沢山の死神がいて、それぞれに“鎌”という死を執行する者達がいる事。
自分は1番の新入りで、未熟だからリーリアがいつまで生きられるかわからない事。
死神は皆、生と死に関わる罪を犯した罪人である事。
「レンの罪は何なの?」
疲れたからかベッドに横になったまま、リーリアは問い掛けた。
「私は、私の罪を覚えていません。私には生前の記憶がないので、どんな罪を何故犯したのかわからないんです」
何かとよくしてくれる先輩死神のカイトは、誰もが最初は生前の記憶を持っていないと語る。

生前医者だった彼は、恋人の病んだ身体を癒すため、病んだ臓器を取り替えようとした。
幾人もの人を殺めてその臓器を取り替えた結果、その恋人は生きながらえた。が、彼は命を散らして死神となった。
母の死を看取って記憶を取り戻した彼が恋人に再会したとき、彼女は「人の命を奪って生きた化け物」と蔑まれていたそうだ。
彼女は命を奪いに来た彼に泣きながら「なぜ自分を生かしたのか」と詰め寄ったらしい。
それは幾百年も昔の話。
今となっては当たり前な臓器移植に、初めて挑んだ男の話。

「・・・そう。死神の罪って、そんなものがあるのね」
話を聞いたリンが憂いを帯びた瞳で言う。
「今度は貴女の話を聞きたいところですが、もう夜も遅いですし失礼します・・・そろそろ、人も来ますし」
そういって去ろうとするレンのマントの裾を掴み、リンは「また、会える?」と聞いた。
「また明日、会いに来ます」
レンはそっとリンの手を解いて言った。
「だってそれが“友達”でしょう?」
「そうね、また明日」
リンは笑って目を閉じた。
瞬き一つする暇ない刹那の間に、レンの姿は消えていた。

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【白黒P】鎌を持てない死神の話・4

元医者な先輩死神・カイト。
彼女はメイコです。
今回はギャグ要員でもかわいそうな子でもなく、レンのよきお兄さん役。

閲覧数:284

投稿日:2011/05/28 22:11:22

文字数:1,139文字

カテゴリ:小説

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