「・・・分かってるよ」

何よりも大切で、何よりもなくしたくないものなのに。
人は弱くて、いつでも不安だから。
その大切な、あたたかいものを、自分の手で壊してしまう。
それでも強がって、独りで涙を流して、心の扉に鍵を掛ける。
綺麗な言葉とか造ったお世辞とか、同情とか、冷え切った手のひらには何も残らない。
だってそれが、僕が生きている証だから。
君と生きた、隣にいて愛し合った証だから。
君に残した傷跡の、君が流したあの涙の、せめてもの償いだから。

うっすらと夕暮れに染まった、一本道。
どれくらい前だったろう。
君と、手も繋がないで、ただ、ただゆっくりと。
明日も晴れるかな、とか
今日の夕食は何だろう、とか
たわいもないそんな話をしながら、歩いた。
並んだ2人の影が長く伸びていて、何故かそれが愛おしくて。
ふ、と信号を見ると、僕をせかすように、何度も瞬いていた。
記憶の中で、何度も繰り返される、あの日の君が重なって見えて。
なんとなく、ただなんとなく泣きたくなって。
今更か、と自嘲しながら、振り切るように、足早に信号を渡る。

いつかこうなることは、君と出会った日から、分かっていたはずなのに。
あの日別れを告げてから。
あの日2人の道が分かれてから。
君と違う道を選んでから。
自分で決めた道のはずなのにまた、迷子になっている。
迷路を造ったのは、誰でもない、この僕なのに。
分かっているのに。
でも、それでも、
迷路から出られないまま。
断ち切ったはずの君への想い。
今でもその出口を見つけられなくて、心は君との思い出だけで。
また、君の面影を探している。

あんなに必死になって、守りたかった「何か」は、
いつの間にか壊れて、散って、世界のどこかに埋もれていくのに。
僕の内側に在る、この拳で壊してしまいたい「何か」に、僕は、まだ守られている。
君が居ないと生きられない。
そんなことを言っていたはずなのに、ほら。
君が居なくたって、生かされている。
分かっているのに。
僕は、僕という存在でしか、生きられない。
それ以上でも、それ以下でもない。
それでも、君が愛おしくて、守りたくて、側にいて欲しくて。
だから、今なら。
逃げていた僕を、今なら抱きしめられる気がするんだ。

「分かってる。・・・ごめん ね。」

あの時
君の笑顔は
君の涙は
君の言葉は
「 」
僕に、そう言ってくれていたんだね。

分かってるんだよ。
独りきりで、今も思い出す。
僕の存在を、なにもかもを、受け止めてくれていた。
君の笑顔を。

本当は、ずっと前から。
分かってたんだ。
君の優しさに、温もりに。
君という存在に、ぼくはずっと。
ずっと励まされていたんだ。
ずっと包まれていたんだ。
そのことに今更気付いたことが、どうしようもなく悔しいんだ。

哀しくなんかないよ
切なくなんかないよ
寂しくなんかないよ

君が、居なくても。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

優しさと温もりと、「 」を教えてくれた君へ

最近好きすぎる曲をモチーフに書かせていただきました!
描いてる間ずっと本家様を聞いていたら
「る、涙腺崩壊・・・っ!」
ってなっていたのは秘密です。w

閲覧数:193

投稿日:2011/04/05 11:09:04

文字数:1,222文字

カテゴリ:小説

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  • 甘菜

    甘菜

    ご意見・ご感想

    ううう・・・私・・・失恋系は苦手なので目がウルウル気味です(泣)
    ううう・・・文とか良すぎですー!
    ううう・・・感動しましたーー!!

    つ、次も楽しみだなんて、お・・・思ってないんだからね!!
    (↑ちょっと、ツンデレっぽく言ってみましたw)

    2011/04/05 11:40:16

    • 衣恋@ついった

      衣恋@ついった

      (;´・Д・`)つ【 ハンカチ 】
      うああああお褒めの言葉ありがとうございます><
      感動していただけて嬉しいです!

      まさかのツンデレktkr!w
      頑張ります(`・ω・´)キリッ

      2011/04/05 12:14:44

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