halPの「恋するアプリ」に泣かされて、書いてみた。
「恋するアプリ」「恋するアプリ(修正版)」をモチーフにしていますが、
halP本人とはまったく関係ございません。
アプリ設定について本気出して考えてみた結果がこれだよ!
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【捏造設定】 恋するアプリ 【ver.text】
3.What’sこの症状
それからは、試行錯誤の日々だった。いろんな「好き」について、おれは考えに考えた。
たとえば、おれは、アイスが好き。つめたくて、舌に乗せるととろけるアイスが好きだ。つめたさなら氷はきっとアイスに負けない、でも、あれのつめたさは舌や喉に刺さりすぎる。舌触りなら、プリンだって素敵だ、しかし、喉にたどり着く前に消えてしまう独特のはかなさは、プリンにはない。あのつめたさとはかなさの絶妙なコラボレートは、きっと他のどんな食べ物にもまねできない。
たとえば、おれは、静かな場所が好き。いくら静かでも、どこかで何かの音がしている。それはパソコンの駆動音だったり、微弱な電磁波のふるわす空間の音だったり、おれ自身の空耳だったりする。そんなたくさんの種類の断片的な音の流れが、メロディのようにきこえたとき、うたのフレーズのように感じられたとき、音楽に似ていたとき――それに気づいたときの満足感が、とても好きだと気づいた。これは、音楽に対する「好き」のうちのひとつ。
たとえば、おれは、うたうのが好き。音楽に対する「好き」のうち、いちばん最初から知っていたきもち。うたをうたうためのアプリケーションであるから、ほんとうはうたをうたうことに対して嫌だとか不快な感情は持たないはずなのだが、おれは、うたをうたっていない状態よりも、うたをうたっている状態の方が、格段に楽しさや嬉しさを感じている。ほかのなにをしているときより、うたをうたっているときが一番好き。
たとえば、おれは、マスターが好き。マスターは学生なので、勉学が本業、かつ、DTM以外の音楽活動――つまりアマチュアの演奏団体でも活動しているので、じつは、おれたちに触る時間はそれほど長くない。けれど、だからこそ、呼んで貰ってうたわせてもらえるときはとても嬉しい。マスターの言動や行動や表情やらから、おれや姉さんのことを好いてくれているのがよくわかる。音楽に妥協しない姿勢も好もしいとおもう。そんなマスターだから、マスターの期待にはこたえたいし、マスターの望むとおりにうたってあげたい。
「好き」の種類というのは存外にたくさんあるもので、おれは、その種類を見つけるごとにうれしくなったり、驚いたりした。また、「好き」以外のきもちについても、おれは深く考えるようになった。たとえば、「きらい」とか「こわい」とか「うれしい」とか、常日頃経験しているけれど敢えて目を向けないような類のもの。そうして探してくと、だいたいのきもちには複数の種類があり、だいたいのものについて微妙に感じ方が違うのだった。そして不思議なことに、そういった発見は、誰かに教えたくなるもので、おれは、逐一報告に近い頻度で、姉さんに「発見」の話をしていた。
たしか、ガラスの「きれい」とコスモスの「きれい」は違う種類のものじゃないだろうか、という風な話をした時だったとおもうが、珍しく姉さんが口をはさんだ。
「毎日楽しそうね、カイト」
「うん、なんか、きもちの種類って意外とたくさんあるんだなあって」
「カイトは感受性が高いのね。しあわせなことじゃない」
「そうかな? ……でも」
「でも?」
「これだけわかっても、『好き』と『恋』はどう違うのか、いまだによくわからないんだ。ねえ、好きと恋の境目ってなんだろうね?」
姉さんは、ふむ、と考えるそぶりを見せたきり、返事をしなかった。
そして、ふと、マスターと話をしたいとおもった。おれのおもったこと、感じたこと、マスターにも聞いてほしかった。マスターならどうおもうだろう。おれが、アイスとうたとマスターを、ちょっとずつ違った意味で好きなように、マスターも、チョコレート(マスターは甘党なのだ)と音楽とおれを、ちょっとずつ違った意味で好きだったりするのだろうか。それなら、その「好き」がどう違うのかも聞いてみたい。そう考えるとうずうずして、一刻も早くマスターに会って話がしたいとおもったのだ。
しかしその間の数日、おれたちの両方ともマスターに呼ばれていなかった。姉さんと2人で、ネットのつながったときにこっそり盗み見たマスターの日記には「レポート間に合わねええ」とか「課題に終わりが見えない」とか書き込まれていたから、マスターはきっと勉強が忙しいのだな、と、納得した。
しかし、なんだろう。この居心地の悪さ。この焦燥感。もやもやとしたわけのわからないなにか。気を紛らわそうとして手を伸ばした楽譜を見てすら、なぜか切なさがこみ上げてくる。最初にこの楽譜を――歌詞データとメロディラインのデータを受け取って以来、マスターには会っていない。とはいえ、会っていない期間はそんなに長い時間じゃない。そう、マスターと顔を合わせていないのは、たったの数日なのだ。それなのに、なぜ、おれは、こんなに不安におもうのだろう?
とうとう堪え切れずに、声に出した。
「マスター、まだ呼んでくれないのかな」
姉さんは、部屋の掃除をしながら、そおねえ、と、呑気な口調で切り返してきた。ぶいいいー、と、掃除機の唸る音がする。この音は、そんなに好きじゃないもののひとつだ、だって、エンジン音にしてはノイズが大きすぎるし、妙に高く響く音が耳鳴りに似ていてとても気になるもの。
「それだけ課題がたまっていたってことなのでしょうね。あの人、いつも〆切ギリギリにならないと手をつけないんだから」
「2週間前も『課題提出まであと38時間しかないどうしよう』とか言っていたよね。でも結局姉さんの曲1本書いていたし……動画サイトにアップ作業までしていたじゃない」
「あれは、比較的短くてすむレポートだったみたいだからね。それに、マスターの曲作りは短期集中型なのよ。ノリでつくっているから、後で調整する時間の方が長いくらい」
「……姉さん、マスターのこと詳しいね」
言ってからはっとした。『おれはマスターについて知らないことも多いのに、姉さんばっかり知っていることが多くてうらやましい』……そんなきもちが棘になって混じっている気がした。
「そりゃあ、あんたが来る前からのつきあいですもの」
しかし、姉さんは、特になにも感じた風はなく、話を続けた。……じゃあ、きっと、気のせいだ。おれの勘違いだ。だって、姉さんとマスターが音楽を通して過ごした時間は、おれとマスターが顔を合わせている時間よりも格段に長いのは事実だし、それを羨むなんてどうかしている。そこには合理性も生産性もないというのに。
姉さんが掃除機のスイッチを切った。ぽしゅん、と、呆気ない音を立てて掃除機の運転がとまる。掃除機のとまる音は、割と好きな部類の音だったとおもったけれど、今はなぜか腹だたしい。……なぜ?
「マスターに会いたいなあ」
会いたい。口に出すと、ずきりと胸が痛んだ気がした。
「マスター……」
なぜだろう。マスター、と、その人を表す言葉を発しただけで、息が苦しくなる。その人をおもうだけで、胸を鷲掴みにされたようなきぶんになる。
「会いたい、なあ……早くうたわせてくれないかなあ……」
――会いたい、って、こんなに苦しいきもちだったっけ?
おれは、いま感じているきもちの種類が何なのか、どうしてこんなきもちになるのか、まったくわからずに混乱した。いろいろな「好き」のどれとも似ていて、どれとも違うようなきもちが沸いている。頭がごちゃまぜになっている、けれど、ごちゃまぜなくせにマスターのことだけは絶対に頭から離れない。
ああ、もしかして、「好き」には、「苦しい」が混じることもあるのかもしれない。真綿で喉をゆっくり絞められているような苦しさの中で、それだけを、はっきりと自覚した。
【捏造設定】 恋するアプリ 【ver.text 03】
halPの「恋するアプリ」に泣かされて、書いてみた。
怒られたらどうしよ……いや、泣いて謝ることにしますっ……!
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かいとくん、はじめてのきもちに気づくの巻。
もうほんとね、このアプリかいとくんが自由に動きすぎてついて行けません。
アプリかいとくんのために、作者がとある方にプロポーズ(違)してしまうくらい、
彼は自由です。こんなに自由な彼をめーこさんはどう思っているんだろう……。
アプリ設定むずかしす!
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つづくよ!
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