「Sweet's Date」



かなりあ荘、初夏

梅雨が近づく五月半ば

暑かったり、涼しかったり、暑かったりする時期

どこかまわずひっつく私、しるるは、そろそろ「ええい!くっつくな!暑苦しい!」と言われ始める時期



そんな時期の、とあるお休みの日

午後2時を回ったくらい


「イズミさーん!おひまですかー?」


206号室イズミ草の部屋の前で叫ぶ私

かなりあ荘のみんなが口をそろえて【優しいよね】で同意し、いつも私が捕まえているつかさくんの尊敬する先輩、もちろん、私も尊敬しておりますです


部屋のドアをあけて、はーいと出てきてくれる彼女


「イズミさん!私とお出かけしませんかー?ってか、しよっ?」


私の強引かつ突然な提案


「…はい、いいですよ!」


少し考えた後に元気よく承諾してくれたイズミさん


「わぁい!イズミさんとデートだ!」

「ええ!?……わ、わぁい」


はしゃぐ私に合わせてくれるイズミさん


「じゃ、準備出来たら、かなりあ荘の前に集合ね?」

「え?……集合って?今から二人で行けばいいんじゃ?」


私の提案の意図がよくわからないイズミさん


「せっかくのデートだから、待ち合わせしようかと思って」


この辺がよく、「しるるは何かがおかしい」と言われる原因な気がしないでもない


「じゃ、準備してくるね!」

「え、あっ…ちょっ……」


ぴゅんと自室に戻った私に対して、イズミさんは呆気にとられていた









それから十数分後


「イズミさん、お待たせ!」


誘ったのは自分なのに遅れた上に、ゆっくりと歩いてくる私

しかも別段、さっきの状態とあんまりかわりばえしない姿

ちょっと髪型が変わった程度…


「じゃ、行きましょうか?」


それでもイズミさんは、少しも怒る様子はなく、むしろ、笑顔を見せて歩き出す


「うんっ!」


そして、その横を私はルンルンな気分で歩いた







しばらく歩いた後、イズミさんは私にたずねた


「これからどこにいくんですか?」

「決めてない」


にっこりと笑顔で即答する私


「え?……あ、そうなんですか?てっきりどこか目的地があるのかと…」


これにはさすがのイズミさんも苦笑い


「別にどこだっていいの。私はイズミさんとお話できて、一緒に歩けたらそれで。それが私のデート」


デートの大事なことは、何をするかじゃなく、誰とするか

歩くだけでも、話すだけでも、それは共に同じ時間を共有してるってことだから…

これが私なりの理論


「……ちょっと照れますね」


照れてるイズミさんがかわいい


「じゃ、そうだなぁ…とりあえず、いつもの喫茶店でいっか」


【とりあえずいつもの喫茶店】

本当の名前は【Sweet's Cafe】

かなりあ荘の住人御用達の喫茶店

彼らは思考を停止させると、【近いし、あそこでいいか】となる

別に特別なものがあるわけでも、値段がお手頃なわけでも、ましてや有名な場所でもない

けれど、だからこそ、地元の人だけが利用し、静かなひとときを過ごせる貴重な場所

つい先日もゆるりーさんとちずさんが、一緒にいったとかどうとか…デートか?


「はい、いいですよ、私もしるるさんと一緒ならどこでも」


私のはーとがどっきゅん!

意識してか、無意識か……いずれにしても、萌える









喫茶店のドアを開けるとカランカランとドアベルが鳴って店員の視線を集める


「しるるさん、お先にどうぞ?」


ドアをあけたままおさえてくれて、私を先に通してくれるイズミさん

さりげなくかっこいい…


そのまま私たちは窓際の席に通される

喫茶店の中は暑くもなく、寒くもなく、いい温度管理、むしろ窓から日が差してぽかぽかする


「私、アイスコーヒーと…あとオレンジジュース一つずつ、あとは…なにがいい?」


私が勝手にイズミさんの分の飲み物まで決めてから、イズミさんに意見を求める


「え、あ、えと……パフェとか…食べたいかなぁ、りんごパイとかも…うぅん」


か、かわいい……どうしよう、なんか迷ってる姿がとってもかわいい


「じゃ、パフェとりんごパイを一個ずつ、お願いします」


私が店員にそうつげると店員は一礼して奥にさがった


「え…あの…」


イズミさんが不安そうに私を見る


「ん?二人で半分こして食べよ?これで両方食べられるでしょ!」

「いや…そうじゃなくて…」

「あ!大丈夫!お金は私が払うから!ここは大人に任せなさい!」

「ええ?!い、いや、いいですよ、私も払います」

「だーめ!大人に恥をかかせない!」

「…………わかりました。ここはお言葉に甘えます」


イズミさんは不服そうな感じだったが、高校生と割り勘なんてできっこない


「って!そうじゃなくてですね!…よかったんですか?しるるさんが食べたいやつじゃなくて…もっと他にあったんじゃ…」

「へ?……ああ!そんなことかぁ、私は大抵のものは「食べたいやつ」に入ってるから大丈夫だよ、ははは」


かわいい……そんなことを気にしてたかと思うとかわいい

優しいゆえに相手のことを気にしすぎちゃうのかな?


「私なんか、勝手にイズミさんの分の飲み物まで決めちゃったしね」

「それは…私がコーヒーや紅茶、炭酸とかが苦手なの知ってるからですよね?」


……ばれたか

事前情報で手に入れたものだったのに…



「お待たせしました」の声と共に、頼んだものがやってきた


「ささ、先に食べて?全部食べ切れるなら食べてもいいからね?」

「いただきます」


そういって、イズミさんがパフェを食べる姿を、心のHDに最高画質で永久保存をする

すっごくかわいい……ほかに言葉がないくらいかわいい

悶えるかわいさ…おかげでガムシロップを少々入れすぎた

私は、コーヒーはほんのり甘ければいい人なので、いつもはミルクだけ

それより、イズミさんがかわいい、どうしたらいい?かわいいよ?

ストローでかきまぜられた白く濁ったコーヒーを飲みつつ、暴走しかける……

が、そこで……【牛乳を水面下くるみ事件】を思い出して、少し冷静になれたよ






結局、そこから小一時間、その場にとどまって、おしゃべりしてた

イズミさんは聞き上手で、私のどーでもいい話に付き合ってくれていた

挙句の果てには…


「…ふにゃ、ぽかぽか陽気で、私、眠くなってきた」


という私の失礼極まりないことまでになった


「窓際でぽかぽかしてますからね、じゃ、帰りましょうか?」


それでもイズミさんは怒らずに笑っていた

私は眠いまま会計をすまし、イズミさんに手を引かれながらかなりあ荘に帰ってきた

そんな私をイズミさんは部屋まで送ってくれた


「しるるさん、今日は楽しかったです」

「うん、私もたのしかったぁ…」


私はこっくりこっくりと船をこぐ


「じゃ、私いきますね?夕飯のころに起こしに来ますから、それまで寝ててください」


そういって静かに部屋を出て行ったイズミさん



結局、甘えているのは私の方で、イズミさんは私に振り回されているだけ……

それでも甘えられるのは、私がイズミさんのことを本当に信頼しているからだと……おも…う……zzzzzz

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【かなりあ荘】Sweet's Date【しるる】

イズミさんとデート?
一応、ゆるりーさんの「Sweet's Cafe」の後の話
http://piapro.jp/t/xh8Y
ゆるりーさんのにも登場した喫茶店の名前を勝手にそのタイトルの店に仕立て上げるという所業
そもそも、ゆるりーさんがちずさんとデートする話書いてるとツイキャスで発言したので、「じゃ、私はイズミさんとデートする!」…がこれ

イズミさんは私の嫁or私が嫁ですから、知らないことなんてない
……わけはないけど、それなりにはしってるつもり
ほんとはパフェのあーんとかもしようかとしたが自重←

最近、こういうことばかり言ってるから、
ターンドッグさんには「もう結婚しちゃえ」と言われ
ゆるりーさんには「そのままきゃっきゃうふふしてください」と言われ

でも、後悔はしていない
実際、イズミさん、やさしくて素敵なんだもん!

閲覧数:319

投稿日:2014/05/20 19:22:04

文字数:3,066文字

カテゴリ:小説

  • コメント1

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  • イズミ草

    イズミ草

    ご意見・ご感想

    なんだか私すごくいい人じゃないですか!
    ほおぅぅぅぉぉ……なんかもったいないですよ!!
    ありがとうございます!!!

    2014/05/20 20:35:04

    • しるる

      しるる

      本当にいい人だもんw
      私を夢中にさせて…罪な人(はーと

      2014/05/20 22:58:13

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