#77「答え」
「ミク~!!」
僕は真っ暗な暗闇の中、傷つけてしまったミクを探していた
今となっては、自分でも、どうして気付けなかったのかと思う
僕はレンの言うとおり、馬鹿野郎だった
しかし、今は後悔している暇はない
早くミクを見つけなくては……
僕は思い当たる個所を片っ端から行ってみた
そして、最後、前に僕が逃げ出してきたときに来た野原にやってきた
辺りは真っ暗で、よくわからない
でも、よくよく見るとうっすらと人影が見えた
「ミク?」
僕は、それがミクであるという自信はなく、小さな声で呼びかけた
「え?わっ!え!か、カイト兄!ど、どうしてここに!」
返って来た声から、それがミクであるとわかった
「ミク、探したよ……」
「うん、ごめんね……」
ミクがそういったが、その後の言葉が見つからない
2人の間に気まずい沈黙が流れている
「ねぇ……カイト兄……さっきはごめんね」
口を開いたのはミクだった
「その……私、ちょっとどうにかしてたみたい。はは」
ミクが苦笑いしている
ついさっきまでの僕なら、笑って受け流せていただろう……
でも、僕は気づいてしまった
ミクの……気持ちに……
「あのさ……ミク」
「え?な、何?そんな真剣な顔して?」
僕は正直、迷っていた
このまま気付かないふりをするべきなのか……
それとも、ちゃんと向き合うべきなのか……
「僕って……やっぱり、馬鹿野郎かな?」
「え?ええ?!な、なに?いきなり?!」
ミクの反応は当然だ
「ミク……さっき、僕に「カイト兄にとって、私って何?」って聞いたよね」
「う、うん……」
ミクの声のトーンが落ちた
「それに対して、僕は「大切な義妹だ」と答えた」
「…………そうだね」
「これは……僕の本当の気持ちだ」
そう、本当にそう思っている
「……うん。わかってる。わかってるよ……」
ミクの声がとても小さく……そして、震えている
「僕は……馬鹿野郎だから……ミクの気持ちなんて、これっぽっちも気づいてなかった」
「え?そ、それって……」
やっぱり……馬鹿な僕には気づかないふりなんて、器用なことはできない
「僕は……ミクをずっと本当の妹だと思って接してきた……だから……」
「………………わかってるよ。カイト兄。いわなくていいよ。わかってるから……」
ミクが顔を伏せたまま僕の袖をつかんだ
「……ごめん」
それが僕の答え……
ミクが強く僕の袖を握っているのがわかる
「うん…………はっきり言ってくれてありがとう」
ミクは強い子だと思った
どうしてこの状況で「ありがとう」なんていえるだろうか……
「カイト兄、一つ聞いてもいい?」
「うん……」
……わかってる。いわなくても……
「…………泣いても……いいかな……?」
「うん……」
僕がそういうのと同時に、ミクは真っ暗な野原で大きな声で泣いた
幼い時と一緒で、僕の袖を強く握りしめながら…………
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ご意見・ご感想
june
ご意見・ご感想
む…胸が……。
何となーくは感じていましたが、やはりミクはカイトのことを……だったんですね…。
カイトが鈍感なのに対して、レン君は敏感な感じがしますね。
ミクは少しリンちゃんにやきもちをやいていた…というところでしょうか?
ずっと「マイちゃん」か「リンちゃん」でしたものね;
2012/10/23 21:19:41
しるる
投稿が滞っていてすみませんorz
そうです!よく気がついてくれました!
ずっと「マイちゃん」だったっていうのが、無意識にどこか嫉妬していた部分だと!
2012/10/23 21:30:38
イズミ草
ご意見・ご感想
ぅう……。
ミクは強いですね…。
カイトの気持ちが自分に向いてないって、知ってたのに、
直接言われて…。
それでも、「…………泣いても……いいかな……?」
とか…。
泣いてもいいに決まってるじゃないか!!!
でも、ちゃんと気付いて伝えたカイトもカッコいいっ
2012/10/14 10:25:45
しるる
誰も悪くはない
けれど、こんないい子をこんな目にあわせている私は悪い
カイトは不器用ゆえに、隠せないだろうなと……
それはよかったと感じます
2012/10/14 10:47:38