6月ハーモニー 未来音符 そのじゅーいちっ
私達がLilyの歌を聴き始めて、1時間ちょっと経った時だった。
ぽつぽつと、梅雨の空が雨を降らせ始めた。
その一粒が私のおでこに落ちてきた。
「冷た!」
私が上を向くと、雲は真っ白…とは言えないが、全体的に灰色になっていた。
うわぁ~超どんよりしてるじゃん…
傘は一応、折りたたみのがあるけど……丁度いいかな…?
Lilyのライブはどうやら、多少の雨が降っても止めないみたいだけど…
私は雨が降ってきたこともあるし、ミキにメールで言ったこともあるので、
横にいる幸せな顔した先輩に
「海斗先輩…雨が降ってきたし、もう帰りませんか?
この後、確か喫茶店に行くんでしたよね?それは別にメゾールの喫茶店じゃな
くてもいいんですよね?だったらもうメゾールから出ましょうよ?
……って、聞いてますか?先輩?もしも~し?」
普通に話しかけても先輩は、1時間前と同じで目を閉じて意識がどっかに
言っているのか、まったく聞こえてないみたいだったので、途中から
先輩をガクガク揺らしながら尋ねると、先輩はようやく覚醒し
「~~っん!?そうだね!?もうライブが始まるけど、どうでもいいよね!!
じゃあ喫茶店に行こっか!?初音さんはなに飲む!?俺はジョー○アだよ!!」
先輩はキリッといい笑顔で、でもワケの分からん事を言ってきたので
「あんた何言ってんだ!?ライブはもう1時間経ってるじゃんか!?
あんたこの1時間の記憶が無いのか!?頭は大丈夫ですか!?
あと何で喫茶店に行ってまでジョー○アを飲むんだよ!?それは缶コーヒー
じゃないか!?あんた喫茶店に缶コーヒー持ち込むのか!?
すっげ~嫌な客だな!?私そんな人とお茶したくないよ!!」
先輩はポカンと私を見下ろしながら
「初音さんは何言ってるの?大丈夫?まだライブは始まってないでしょ!?」
「いやいや!時計と周りを見てみなよ!!もう1時間は経ってるよ!!
あと大丈夫とか聞いてくんな!!あんたの頭の方がおかしいんだよ!!
この1時間あんたの意識はドコ行ってたんだよ!?」
すると先輩は私が言った通り、腕時計を見て
「うおっ!?本当だ!?もう1時間経ってる!?なんで!?
だって初音さんが俺の肩に手を乗っけたのがさっきでしょ!?なのに何で!?」
先輩は時計と私を交互に見ながら聞いてきたので
「あんたアノ時から記憶が止まってんかよ!?どんだけ嬉しかったんだよ!?
まぁいいや!ほら雨が降ってきたので行きますよ!
もうメゾールを出ますよ?いいですね?外にあるスタバに行きますよ?」
そう言って私がまだLilyが歌ってる広場から離れて、外階段に向かうと
「えぇ~?でも俺まだLilyの歌ぜんぜん聞いてないんだけど~」
知りませんよ…
私は振り返らず、歩みも止めないまま
「それは先輩の海馬に問題があったせいですね…脳外科に行ったらいいですよ?
じゃあ私だけでお茶に行くんで、今日は誘ってくれてありがとうございm…」
「行きます行きます!!俺も脳外科に行きます!!」
先輩はそう叫びながら私を追いかけてきた
私は脳外科に行くんじゃないよ…行くべきなのは先輩だけです…
私は横に並んできた先輩に
「先輩の意識はこの1時間、どこに行ってたんですか?いったい何を見て
いたんですか?もしかして天国にでも行っていたんですか?」
「いやいや、天国にも行ってないし、お花畑も見ていませんよ?
まぁ上手く言えないけど、1つ言えるのは、ずっと脳みそが気持ち良かったね…
頭がこう…ぽや~んとしてる感じ?何にも考えられなくなるって言うか…
考えが上手くまとまらない感じだったね……」
脳みそが気持ち良かったって……気持ち悪い表現だな…
先輩は変な人じゃなくて、変態だったのか…
私は先輩にちょっと引いてしまったので、先輩から横に2、3歩離れて
「はぁ…そうですか……」
自分でも分かるぐらいの引きつった顔で返事をすると、先輩は気にせず
「いや~あんな感覚は初めてだったよ~よく親戚の子が、酔っ払うと
すっっっごく気持ちいいの!もう全部が楽しくって楽しくって仕方なくてさ~
でも飲みすぎると朝になって記憶が飛んじゃってるけど、止められないんだよね~
ってよく言ってるけど、あんな感じなんだろうね~…………!!
そうだ初音さん!お願いがあります!!」
先輩が立ち止まってそう叫んだので、ビックリして私も立ち止まった
「ビ、ビックリした~急になんですか?いきなり大声を出さないでくださいよ…
ビックリしたせいで寿命が縮んだらどうするんですか……」
先輩が大声を出したことと、先輩の言うお願いが妙に不安だったので、私は
無意識に両腕を構えて、体の前に壁を作った。
先輩はそんな少し怯えてる私に真剣な顔で
「手を繋いでくれないかな!?俺もう一度、意識を飛ばしてみたい!!」
「はい!!先輩が気持ち悪いので絶対に嫌です!!
てゆーか色んな意味で嫌だよ!!なんだよ意識を飛ばしてみたいって!?
だったら柔道部の人に締められて落ちてればいいだろ!?」
だいたい付き合っても無いのに手を繋ぐなんて恥ずかしいじゃん!!
私が拒絶すると、先輩は明らかにガッカリした顔で
「えぇ~?なんで駄目なの?」
「なんで駄目だって!?あんたの頭は本当に狂ってるな!!
意識を飛ばしてみたいから手を繋いでなんてお願いを、はい分かりました。
なんてOKする人がいるわけないでしょ!?」
なんで先輩は普通にお願いできないんだ!?
ネットで、デートなんだから手を繋ごうよ?とか言ったりして
手を繋いだってゆうデート体験談を読んだことはあるけど、どうして先輩は
意識を飛ばしたいからってゆう理由で手を繋ごうって言ってくんだよ!!
雰囲気も何も無いじゃんかよ!!
先輩にはそこまでの期待はしてなかったけど、少しぐらいは体験談みたいな
事を言ってくれてもいいじゃんか!!
まぁ言われたら間違いなく断るけど、でも少しは言われてみたかったよ!!
言われたら少しは嬉しいと思うから、言われてみたかったよ!!
なのにこの人は…ホント……ホント残念な馬鹿!!!ホント馬鹿!!
普通に、手を繋ぎたいって言ってよ!!私を喜ばせてくれよ!!
もぉ~~~~残念な人だよ!!
私が心の中だけで叫んでいると、先輩は考えるように
「そっか……OKしてくれる人はいないのか…だったらどんな風に言うのが
いいのかな?……う~~ん……」
「いやいや、そんなに真剣に考えることじゃないでしょ!?」
先輩のいつものボケに、私はいつも通りにツッコミを入れた。
ツッコミを入れればお馬鹿な先輩は、馬鹿なことを考えなくなると思ったので
ツッコミを入れた。
しかし先輩は真面目な顔をしたまま、私の事を見ないで
「う~ん、でも、もう1回さっきみたいに意識飛ばしてみたいし…
う~~ん、どんな風に言えば初音さんは手を繋いでくれるのかな?う~ん…」
先輩の言葉で、私の周りの空気が空っぽになった感じがした。
今まで私の回りにあった、何かに満ちていた空気が無くなった感じがした。
一瞬でそれなりに楽しかった時間が…これから喫茶店に行って、少しは
先輩とのやり取りが楽しく感じるはずだった時間が……消滅した感じがした。
…………は?
先輩はおそらく…いや、間違いなく真剣に考えている。
ボケとかじゃなく、真剣に考えてるのが付き合いの短い私でも分かる。
だって先輩は手を顎に添え、目は前を見ているけど思考の世界を見ているし、
眉はいつもと違って少しキツくなっていて、前を睨んでいるように見えるから。
何よそれ……何よそれ……そんなに真剣に考えることじゃないでしょ……
私は少しだけあった期待がものの見事に粉砕され、さらに期待があった
ことを先輩に全く気付いてもらえなかったことに…
それから先輩が今でも、意識を飛ばしたいから手を繋ぎたい…
でもストレートにそう言うと断られるから、言い方を変えて言わない
と、意識を飛ばすために手を繋いでもらえない。と…
ちゃんとした理由を言わないと、手を繋いでもらえない。と…
意識を飛ばすこと『だけ』の目的で手を繋ぎたいと考えてることに…
何よ……意識を飛ばしたいって……何でそんなふざけた事のために手を
繋ぎたいって思うの?……何よそれ……
さらに、手を繋ぎたい。『以外』の理由を真剣に考えてることに少しだけ…
いや、かなり腹が立った…
私のこと、馬鹿にしてるの?と…
手を繋ぎたいなら、手を繋ぎたいって言えばいいのに!と…
真剣に考えてる先輩に段々と、イライラしてきて私は
「意識を飛ばすことを真剣に考えるなんて、ホントに先輩は馬鹿ですね!!
そこまで真剣に考えることなんですか!?ねぇ!?」
ついに先輩に本気で怒ってしまった。
先輩は急に怒られたことに、目をぱちくりさせて驚いて
「え?え?え?は、初音さん?ど、どうしたの急に…?」
私は頭がかなり熱くなっているので、周りの目を気にせず叫ぶように
「どうしたの急に、じゃないでしょ!?私は先輩にずっと言ってますよね!?
なんでも思ったことを言い過ぎだ!って、さっきからずっと!!
今がそうじゃないですか!!先輩は意識を飛ばしてみたいから手を繋ぎたいって
思って、その事を真剣に考えてるじゃないですか!?
何よ意識を飛ばしたいから手を繋ぎたいって!?私のこと馬鹿にしてるの!?
私をなんだと思ってるのよ!?ねぇ!?
手を繋ぎたいならそう言えばいいじゃん!?なのになんで変な理由を探すのよ!?
流香先輩から先輩のことを聞いて、ある程度は分かってましたし、
先輩が馬鹿なことを言ったりしても、許してあげなね?って流香先輩から
言われて今までは許してたけど、でも今のだけは許せないよ!!
お昼ご飯の時に、映画の話をしないでって言ったら先輩はしなくなったから、
まぁ許せましたよ!!
映画を見てる時だって…っ…ム、ムカつくことがあったけど、我慢したよ!!
流香先輩から先輩の性格を聞いてたから許せたよ!!
そうゆうことに鈍い子だからって言われてたから許そうと思ったよ!!
でもいま先輩が考えてる事は、好きな子に対してお願いすることじゃない
ですよね!?
先輩が私と手を繋いだら、意識が飛ぶぐらい嬉しいってゆうのはさっきので
分かりましたよ!!でもなんで意識を飛ばすことの方を考えるの!?
手を繋げたら嬉しいから、手を繋ぎたいってどうして考えられないのよ!?
少しは私の気持ちを考えなよ!!
先輩は確かに自分が思ったことに素直なんでしょーね!!
でも先輩がいま考えてる事はあまりにも馬鹿すぎるよ!!私の気持ちを
あまりにも無視してるよ!!少しは考えなよ!!考えてよ!!」
先輩の顔を下から睨んで、叩きつける様に言った。
私が本気で怒っているとゆうのが、いくら鈍い先輩でも分かったみたいなので
先輩の顔は、焦りと不安が混じった顔に変わった。
「ぇ……ぁ…あっ……そ、その…ご、ごめんね…お、俺…」
「そうやってすぐに謝るのも止めてよ!!なんで先輩はすぐに謝るのよ!?
もういいよ!!帰る!!さようなら!!」
私がさっきまで先輩と向かっていた外階段に再び歩き出すと、先輩が
「ご、ごめん!!本当にごめん!!気に障ったこと考えてホントごめん!!」
追いかけてきたので、私は手に持った鞄で
「ついて来ないでよ!!」
振り向きざまに先輩を叩いた
「痛っ!!ホントにごめん!!」
「もういいよ!!ついて来ないで下さい!!」
私が本気でそう言ったためか、先輩はその場に立ち止まった。
そして私は先輩を睨んだ後、階段を駆け下りた。
6月ハーモニー 未来音符 その11
6月ハーモニー 未来音符 その11
なんか無理矢理な感じですみません…
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