男は高校に入学し、初めて一目惚れというものを経験した。女を見るだけで男は幸せな気持ちになるが辛くもあった。
女とは同じクラスなのだが、碌に挨拶も交わすことはなく、ただただ想いを募らせるばかりの毎日。

 そんなある日、初めての席替えがあり、男は教卓の目の前という誰もが嫌がる席を引き当ててしまった。
憂鬱な気分のまま周りを見渡すと、右隣には女が座っていた。全く予想も期待もしていなかった展開に戸惑ってしまう。
そこに追い打ちをかけるかのように、女と目が合ってしまった。
女は挨拶もしたことのない男に向かって、笑顔で話しかけてきた。
その日は、自室の中では女の声と笑顔が脳内でループする。何度も何度もベッドの上で悶え、一つの考えを思いつく。

「これは告白しろという天啓ってやつかもしれない」

男は特に宗教や宗派に敬虔なわけでもないが、こういう時だけ神様を当てにしていた。

 それから数日が経ち、女とは友達と呼べる関係にまでなれた。
席が隣という事で朝の挨拶も自然と交わせるようになり、女が教科書を忘れてしまった時は心の中でガッツポーズをしていた。
そんな幸せな毎日を送っていたため、告白をしようという気持ちは、すっかり忘れてしまっていた。

 そんな普通の高校生活がいつまでも続くと思っていた男は、きっと浮かれていたのだろう。また席替えの時期が訪れてしまい、女とは席が大きく離れてしまった。
男は絶望し、女の事が頭から離れずに悶々とした毎日を過ごしていた。

 席替えから数日が経ち、ふと席が隣だった時の事を思い出してしまう。
あの時は天啓とか訳のわからない事を考えていて、浮かれていた自分を思い出してしまったのは恥ずかしかった。
しかし、あの事は本当に天啓だったのかもしれない。どうせ女とも席が離れてしまいほとんど会話ができない毎日。こんな日々をダラダラと過ごすぐらいなら、いっそのこと告白をしてしまおう。
失敗しても友達に戻るだけ、そう自分に言い聞かせ、逃げたくなる気持ちを抑えつけた。

 教室に居る時の女は、いつも誰かと喋っていた。しかし、仲の良い友達が欠席だったようで、窓際の席の女は外をボーっと眺めていた。
ああ、これも天啓なのだろう。今しかチャンスはない。
そうやって自分を奮い立たせなければ、自分の足は勝手に逃げ出してしまいそうだった。
なんとか女を呼びだす事に成功し、一安心して男は席に戻った。

 こんな時に限って時間の流れは早く感じてしまう。
放課後になり、女を呼び出した場所へと急いで向かった。

 なんとか告白を言い終え、女も男と付き合うことに頷いてくれた。
夏の香りが漂ってきそうな7月7日の夕暮れの出来事だった。


 あれから数か月、男は女と順調で健全なお付き合いをしていた。
女は学校で目立つ存在ではなく、かといって地味という訳でもない。ただ普通に可愛らしく、普通のお喋りが好きな、普通の今時の女子高生。
しかし、そんな普通な女に普通ではない出来事が起こってしまった。
なんと、父親の都合でアメリカに引っ越してしまうということだった。男は必死に説得を試みたが、女の意思だけではどうにもならなかった。
冷静に考えればそんなのは当たり前のことだったが、その時の男は冷静ではいられなかった。
いつしか、女と席が隣同士から離れ離れになってしまった時の事を思い出す。あの時も絶望をしていたが、何歩か行けば女とは話せた。
しかし今回は、歩くどころか海を越えないと女とは会えない。
男はどうする事もできない自分の無力さと、抗えない現実に打ちひしがれていた。



 当初は単身赴任という案も考えていた。
しかし、男と付き合い初めてから娘の成績はガクンと下がってしまっていた。また、妻と一人娘を置いて行くには不安もある。
男を家に呼び出し、事情を伝えてなんとか了承を得ることができた。



 女の両親はとても理解がある人で、引越しの日に男に一つの携帯電話を持たせてくれた。
それは海外への通話もできるもので、料金もインターネット経由なら無料だという。
別れは思ったよりアッサリとしていた。
ドラマのように女が泣き崩れる事もなく、男も悲しくはあったが、なぜか涙は出なかった。理由はあまりの突飛な出来事に、現実味がなく実感がなかったのだろう。

 数日後、女が隣に居ない事の寂しさを痛感した。
いくら無料で電話ができると言っても、時差があり、女の都合があり、男の都合もある。話をする時間はかなり限れている。
そんな限られた時間に、男は身の回りの出来事を面白おかしく伝え、その時だけは寂しさを紛らわせる事ができた。
しかし電話を切ると、悲しみの波が襲ってくる。

 あの時の出来事が天啓だったのならば、今回の事も神様が与えた試練なのかもしれない。ああ、神様って酷い人なんだな。

 7月7日、付き合い始めてから1周年という事で、男はサプライズを考えていた。
いつもは電話をするのにも、まずはメールで日時を調整してから電話をかけていた。それを突然電話をしてみたらどうだろうか、女は驚き喜んでくれるに違いない。
もちろん、女も1周年という事を覚えている。
しかし、電話をしても女は出てはくれなかった。

 次の電話の時、初めて喧嘩をしてしまった。
男はなぜ電話に出てくれなかったのかと、寂しさから女を糾弾してしまった。
女の言い分は最もで、いつもはメールで日時を決めてからなのに、突然かけられても困るという。
誰がみても、男の言い分は自分勝手で女には全く非はない。
そこから、売り言葉に買い言葉。些細なことでお互いに腹立ててしまい、男は電話を一方的に切ってしまう。

 男は冷静になってから、携帯電話を見つめる。
「なんて謝ろうか」
いつもの家に女が住んでいるのならば、道のど真ん中であろうと土下座をして謝る事ができる。
しかし今はどう足掻いても届かない場所にいる。電話口の前で土下座を女には伝わらない。
でも突然電話をしても、また女を困らせてしまう。それならメールをすればいいのだろうが、どうしても送信ボタンを押す勇気がでない。
悪い想像だけが頭を巡り続ける。
ボタン1つ押せば解決するかもしれない事柄だが、親指はそのボタンを押せるにはかなりの時間を要した。


 その後、両親の反対を振り切り、夏休みにバイトをしてシルバーウィークにアメリカに飛ぶ男。
もちろん約束をしているが、初めての海外に四苦八苦。なんとか女に会える。
そこで、大学を卒業すれば日本で働く、だからそれまで待っていてほしいと男に伝え、約束をする。

 6年間はあまりにも長く、また辛い日々だった。
しかし日本でのお正月の数日間だけは日本に戻って、男に会いに来てくれた。それを糧に、男は必死に勉学に励み、良い大学に行き、優秀な成績を修めた。

そして再会して結婚してハッピーエンド。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

七夕(仮)

女と男の名前は決めてませんが、織姫と彦星にちなんで「香織(カオリ)」と「和彦(カズヒコ)」とか考えています。他の案があれば、取り入れたいと思います。

プロットと呼べるモノでもないかもしれませんが、なんとなく道筋が分かってもらえたらと思います。
重点は「面と向かうことの大切さ」なので、付き合い初めてからのすれ違いや、引っ越しが決まってからの男の葛藤などの部分を細く書いていき、他の部分はサラッと流していこうと思います。

不整合な部分があったり、読みにくい文章かもしれませんが、よろしくお願いします。

閲覧数:126

投稿日:2016/05/03 11:55:08

文字数:2,834文字

カテゴリ:小説

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