私は、開いているドアをノックして、目の前の人物に向かって礼をする。

「失礼します。」

リン警官は、私を見るなり、こう言った。

「ミク代表。お疲れ様です。」

「この姿を見て、初音ミクって良く分かりますね。」
「初音ミク見習いとして、あなたは登録されていますから。」

よりによって、警察にも初音ミクで登録されていたのか。
でも、見習いで本当に良かった。
あの露出度の高い初音ミク公式衣装を着る事になったら、特に真冬は寒過ぎる。

「それは兎も角として。」

私に椅子に座るように促し、リン警官は、本来の業務に戻る。

「今日はもう、大人しくしてね。めっ。」

彼女のお説教が始まった。
ああ、叱っている時の彼女のリボンも、可愛いかもしれません。


お説教が終わると、リン警官は、手作りのカップケーキを私にくれた。

「ありがとうございます。リンさん。」
「ミク達の事、これからも宜しくお願いします。」

いえ、お願いされても困るのですが。
リン警官と握手した後、私は軽くお辞儀して、無事、初音ミクとしての仕事を全(まっと)うした。


リン警官の部屋から出てきた私の目の前には、ミクさん達が並んで待っていた。
私を発見した途端、安心してカップケーキを食べ始めるミクさん達。

「これで、初音ミクの全ての任務完了です。」
「逮捕の協力者も、全員貰えるんだよー。」
「リンちゃん、LOVE。」
「美味しいねー。」

私も一口食べてみた。

美味しい。ミクさん達には悪いけれど、リン警官の料理の腕は格別だ。
「警官を辞めて、ミクさん達に料理を教えて下さい。」と懇願(こんがん)したくなる程の腕前だ。
私は、リン警官に感謝しながらカップケーキを食べ終わり、
この界隈に逮捕者が溢れている理由を理解した。

あまり言いたくないのですが、幸せ過ぎます。リン警官。

私は、ようやく緊張から解き放たれて、リン警官の部屋に入る前の事を思い出す。
私が入室する前に居た場所を振り返ると、泣いていた彼の傍(そば)には、彼が愛する女性の姿があった。
彼女は、リン警官の姿で、

「私の後輩に迷惑をかけたら、承知しないからね。」

リン警官ファンクラブの代表者を引きずりながら、説教部屋に入っていった。


夕方になる頃には、リン警官のお説教が全て終わり、私達のリン警官見学ツアーは解散となった。
夕日に染まる、ミクさん達のシルエット。
取り残されたミクさんと私は、改めて、リン警官に挨拶した。

「お疲れ様でした。カップケーキ、美味しかったです。」
「リンちゃん。また来るね♪」

今度、また此処(ここ)に来た時には、私は喜んでリン警官に逮捕される事だろう。
帰り道には、次回の見学ツアーに合わせて早速作曲の予定を空けておく、駄目なミクさんと私が居た。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

リン警官とミクさん達。第6楽章

第1楽章は http://piapro.jp/t/wG9m

「ミクさんの隣」所属作品の1つです。

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投稿日:2011/08/24 05:43:06

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カテゴリ:小説

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