あら、お客様かしら？
ようこそ、いらっしゃいませ。
私と踊りましょう？
一人では踊れないもの。


私は絡繰仕掛けの操り人形。
あら、不思議そうな顔をするのね。
私が人間に見えるって？
そりゃあ、私は最高傑作の人形だもの。
糸を引くとね、笑いながら踊るの。
私自身の足は作り物だけど、とっても上手に踊るのよ！

もっとも、上手く踊れるかは貴方次第。
だって私は人形だもの。


ワルツなんかはどうかしら？
前々から練習してたの。

さあ、ほらその糸を引いて。
「どこに糸があるの？」なんて、変な事を聞くのね。
私は最高のお人形だもの、糸が細くても踊れるの。
上手に私を動かしてみせて。

そうよ、全ては貴方次第なの！


ベッドでくらくら、あんよが揺れるの。
球体間接がそんなに珍しい？
貴方が上手に操れば、私も上手に踊れるの。


今でないいつかに、この両足で上手に踊るの。
糸は、貴方に引いてもらおうかしら。


自分で踊らないのかって？
変な事を聞く人ね！
だって私はお人形だもの、
一人では何にもできないの。


そうでしょう？



ああ、カーテンを開けないで！
お日様の光が目に痛いの。
変な話よね、だって私の目は硝子製のはずだもの。


頭の毛、綺麗でしょう？
自慢の絹糸だもの。
でも、寝癖が酷いのが欠点なのよね。
そうね、人間みたいだわ。
だけど私は人形なの。


んー、今日は身体がだるくて重いわ。
どうにも動く気がしないの。
でも、貴方が上手に糸を引いてくれたら動けるわ。
だって私はお人形だもの。
言う事を聞きましょう、マスター。



目玉がぐるぐる、視界もぐるぐる。
それでも上手に踊ってみせましょう？
そこは・・・そうね、お人形の意地というものよ。

硝子球が曇ってきたわ。
ちゃんと硝子も磨いてね。
それで、私におめかしをさせて下さいな？


いつの日か、この両足が動く日が来るの。
そしたら、お姫様になれるの！


私は絡繰で動くお人形なの。
人間なんかじゃないのよ！
そうでしょう？
ねぇ・・・
両の足はまだ、動かないんだもの！



私はお人形なの。
操られて動く人形なの。
糸を引くマスターが必要なのよ！

きっとそう。
貴方とは違って、私は人間じゃない。
だって、私のあんよは動かないもの。
人間なら一人で踊れるんでしょう？
私は一人では踊れないわ！

くらくらくらってあんよが揺れるわ。
あら、球体間接が見あたらないわね。

左右の靴の色が違うのはわからないわ。だって、そういう風になっていたんだもの。
赤いタイツに黒いエナメル靴を履いた右足と、素足に茶色い靴を履いた左足。そういえば、左足は黒い金属で膝が曲がらないようにされているの。
だから私は歩けないの。
でも、貴方が糸を引けば踊れるわ。

曇り硝子の目玉に、水がついてるのは何故なの？
貴方なら知ってるかもね。

いつの日か、この両足が動くのよ。
カミサマが教えてくれたの！


貴方は私を人間だって言うけど、人間は自分の足で踊れるんでしょう？

だから、私はほら操り人形。
誰かに動かしてもらわなきゃ、すぐに壊れて朽ちる人形なの。

貴方なら、この忌まわしい糸を引いて、私をヒトにしてくれるのでしょう？


私は人形。絡繰人形なの。
人間なんかと一緒にしないで！
だから、貴方に踊らせて欲しいの。
貴方なら、無条件に愛してくれるかしら？
操り糸だってちゃんとあるもの、私を踊らせて頂戴？


やめて！ やめて！
私はお人形なの！
お耳だって、空洞のはずなのに！
「　　　　　　」
「　　　　　　　」
そんな言葉、聞きたくない！
どうして？
どうして聞きたくない言葉しか、覚えていられないのかしら・・・
昔はもっと違う事を言ってもらえたはずなんだけど、もう忘れてしまったの。
覚えていたかったのに・・・


「人間なら自分の足で踊れるはず」だとか、何回聞いたってどうしようもないのに。
私は木偶なんかじゃないのよ？
あんなのと一緒にしないで！
もう聞き飽きたの、うるさいわ！


もう出てって！
貴方なんて嫌い！



私は人間なんかじゃない！
絡繰人形なの！