【第四話 石を調べる1】
ジーっ・・・・。
「何?」
「い、いや別に」
私は花絵から目を離した。今は昼休み。まあ、弁当を食べる時間も含めてだから実際30分もないんだけどね。私の通っている高校は、食堂もなく「弁当を食べるなら屋上!」というのが普通になっており、私たちも今屋上にいる。
「なんかさ、朝花絵すごかったなあって思って」
「別に」と言っておきながら答えてしまった。しかし、今思っても不思議なのだ。あのヤンキー先輩がブリっこ風に言った花絵の言葉にすんなりと従うことが・・・。今日は機嫌が良かったとか?
「あー。そのこと?」
そう言って花絵は今朝拾った角ばった石を取りだした。
「これのおかげかも」
「え?」
花絵は立ち上がり、空に向かって石をポンっと投げた。そして、華麗にキャッチし、
「そんな気しない?」
と、私の方を振り返り、ニコっと笑った。
「そ・・・そう?」
私は首をかしげた。確かに、それも理由の一つに入らなくもない。でもそんなことありえるのかな。
「何でそう思うの?」
一応きいてみた。
「だって・・・。あんまりうまく言えないけどさぁ」
一旦言葉を切り石を持っていない手で頬をかいた。
「この石拾ってからいいこと続くんだよねぇ」
「いいことって?」
「えーっとね、まずは今日の国語の時間にテキトーに書いた答えが当たってた。つぎが保体で、生まれて初めて跳び箱12段跳べた。次に数学で、計算50問全問正解。ね?すごいでしょ?」
花絵は自慢げに話した。でもそれって・・・。
「ただの偶然ってこともあり得るけど」
「もう!楓は夢がないねぇ。いっとくけどあたしこんなについてる日生まれて初めてだよっ」
はぁとため息をつく花絵。
「じゃあ、その石見して」
「いいけど」
私は石をまじまじと見つめた。どこからどう見てもただの角ばった石にしか見えない。しかし、普通の石と違っているところが一つあった。妙に鈍い光を放っているのだ。朝見つけた時もそれにはきずいていたが、深く考えていなかった。だが、今考えてみればこの光は薄気味悪い。石が鈍い光を放つのは別に気にしない。私が薄気味悪いと思ったのは鈍い光の「色」だ。
「深い紫・・・」
「色のこと?それがどうしたの?」
「ちょっと気になって」
「そう?」
私の横から花絵もこの石を見つめる。
「別にヘンじゃないよ、紫なんて」
また呑気な声で言う。私は「いや普通変でしょ」と言おうとしたが、花絵がいい終わるのと同時に、キーんコーンカーンコーンと鐘が鳴ってしまった。
「あ、鳴っちゃったね。続き放課後ね?」
「うん・・・」
渋々石を花絵にかえした。本当はもう少し石について調べたかったんだけどなぁ。だけど、石の特徴はつかめたしとポジティブに考えることにした。
「じゃ、もどろっか」
「うん」
私は立ち上がって、花絵とともに1-4組にもどった。屋上から教室までは階段一つ下りればいいため、1分もかからない。記憶している石の特徴を思いだし、頭の中でいろいろ考えながら戻ることにした。
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