しばらくして森の奥の小人たちの家の前には、スカートをたくしあげている姫と、殺気に満ちた目をした女の子が対峙していました。女の子とはもちろん女王のことです。
正直姫はあまりやる気がありませんでした。自分がそれなりに強いということを知っていたからです。向こうから申し込んできたとはいえ、もし大けがをさせてしまったらと思うと、思わずため息が出てきました。
そんな姫の様子も気にすることなく、女の子は真っ正面からつっこんできました。女の子は一蹴りで姫との間を詰めたのです。姫が驚く暇も無く、女の子の右手は目にも留まらぬ速さで迫ってきます。
しかし姫は持ち前の反射神経で一撃を避けました。これには女の子も驚いたようです。そして二人は再び対峙しました。互いに目が合い、どちらからともなく含み笑い。
「なかなかやるね。子供だと思ってなめてた」
「そっちこそ。今のを避けるとはね」
((これは本気を出さないと・・・・・・))
また女の子が攻めました。回し蹴り。姫はしゃがんでそれを避けました。そしてそのまま足を垂直に突き上げ、女の子の下あごを狙います。でも、女の子はバック転で回避し、着地した直後に姫に襲撃。姫も立ち上がって構え直し、互いの拳が互いの顔をぶん殴る寸前、
「忙しいところをすまんが、道を教えてはくれんか?」
と、なんとも間の抜けた声が森の方から聞こえてきました。二人は殴りあう格好のまま静止して、声がした方を見ました。
そこには紫の王子様がいました。女の子は戦いの邪魔をした王子を邪魔すんなとばかりににらみつけました。
「きゃあ! イケメン! 道案内なら任せてちょうだい!」
しかし姫はむしろ助かったとでも言うように、手合わせをほっぽりだして王子の手を引いて行ってしまいます。
「ちょっと! ・・・・・・もう、殺し損ねちゃったじゃない」
追いかける気も失せてしまった女の子、もとい女王は城に戻ることにしました。
「ねー鏡ぃ。どうやったらあの子を殺せるのかしら・・・・・・」
「もうちょっとかわいげのある呼び方してくれんかなぁ、女王様。というか、あの子って姫さんのことかい?」
「そーよ。どっかの誰かさんのおかげで毒盛ったけど意味なかったし、そのあと殺りあったんだけど邪魔が入って・・・・・・」
「毒盛ったって誰が、誰に?」
鏡ではない声がして、女王が驚き振り向くと扉の近くに王がいました。王は女王の部屋を通り過ぎようとしたとき、危なげな単語が聞こえたので思わず聞き耳を立てていたのです。
「勝手に部屋に・・・・・・」
女王は怒鳴って誤魔化そうとしましたが、王の険しい顔に押されて口を閉じてしまいました。目も合わすことができません。
「それと殺りあったって、誰と誰が? 詳しく教えてくれるかな?」
王は笑いました。周辺の温度が一気に下がりましたが。これにはさすがの女王も後ずさりしていました。
「そういえばさ、姫を最近見ていないんだ。あの子はしっかり者だから、よっぽどの事がない限り大丈夫だとは思うんだけど・・・・・・。でも、黙って出かけるなんて今まで無かったことなんだよね。・・・・・・ねぇ、何か知らないかな?」
本当のことを知っているのかいないのか。しかし女王はずっと押し黙っていました。
さらにいい募る。
「にしても毒か・・・・・・。相手を油断させておいて殺す方法だよね。そんな物を使う奴はなんて卑怯なんだろう」
うつむく女王の耳は真っ赤でした。恥ずかしさでいっぱいだったからです。少しばかり、肩も震えていました。
そして女王の足下にポタリと何かが落ちました。
「・・・・・・って、え? あれ? 何で泣いてるの?」
王もそれに気づいたようで、激しく動揺しています。
「ね、ねえ、何で泣くの? 僕なんかした? したのなら謝るから。だから泣かないでよ・・・・・・」
もはや王まで涙目になっています。鏡がどうしたものか思案していると、女王は無造作に袖で涙を拭いて顔を上げました。
「泣いてないわよ」
真っ赤に腫らした目で言われても何の説得力もありません。
「でも、目赤いよ?」
王が心配そうに女王の顔をのぞき込みます。女王はまっすぐ見つめてくる王から目をそらし、
「ほっとけっ!!」
と、王を押し退けて部屋から出ていってしまいました。
「待って!」
王は止めようとしますが女王は走り去っていきます。追いかけようとしましたが、
「ちょい待ちな、王様」
と、鏡に止められました。
「なんだい? 早くしないと・・・・・・」
「俺も連れていけ」
「なんで? 君、何か関係あるの?」
「たぶんな。ほら、早く追いかけないと手遅れになっちまう」
王は鏡を背負って聞きました。
「手遅れって・・・・・・?」
「いいから。ほらはやく」
王は急かされるように走り始めました。
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