優しさが欲しいと思ったのは、寂しさを知ってからだった。
温もりが欲しいと思ったのは、冷たさを知ってからだった。
理由が欲しいと思ったのは、孤独を知ってからだった。
すべては知った後だった。
それがどれだけの意味を持っていたのか。
やっと気付いた。
「確かに、自分の弱さを知るのは良い事だと思うけどね」
その人は、笑っていた。
今まで見たこともないような、だけどこれが笑うことなんだなと納得できるくらい、何にも考えていない顔に見えた。
「でも、卑下することはあまり同感できないな」
青空に、その人の髪色が溶ける。
今日は晴天。雲ひとつない空。新緑の香りが風に乗ってくる。そんな穏やかな日だった。
仰向けになっている僕を覗き込んでくるその目は、青空をそのまま映したような光が見えた。
「たとえ他者の気持ちに聡くても、自分に対して無関心になっていいわけじゃないよ」
そう言うと、ぼんやりとしたままの僕を叱るように、頭を指で弾いた。
そしてそれがようやく、幻想じゃないことを実感した。
青い瞳には、目を見開いた僕の顔が映る。
「時にそれは、大切なものへの侮辱にも値する」
青い世界に、揺れる黄色の髪の下の僕の角もしっかりと見えた。
変わらず存在するその角を、とっさに両腕で隠す。
何か言い返そうと、口を動かしてはみるが、言葉が出てこなかった。
「大切に思うものがあるなら、それに恥じない自分でいなさい」
僕の様子を気にすることなく、さらりと言う言葉はどこか胡散臭さを漂わせているのに、染み込むようにスッと心に入ってくる。
きっと、何も考えてなかったからだ。きっとそうだ。そうに違いない。
その人は、立ち上がり背伸びをすると、近くの木の根元に置いていた荷物を背負い、山を下りる道に向かって歩き出した。
下駄がカランコランと軽快な音を鳴らす。
「少なくとも、大切に思ってくれている人間がいるのは確かだから」
その道の先は、僕を生んでくれたお母さんがいる町だ。
僕は、動けずにいた。
その人は、見つめることしか出来ない僕に、じゃあねと笑顔で手を振ると、手ぬぐいを巻いた頭の上に笠を被り、そのまま町へ下りていった。
しばらく経って、僕はやっと喋れた。
「…嘘だ…」
青空が、茜色に染まる頃だった。
「さて、どうしたものか…」
その頃、町に戻ったその人は、沈んでいく夕日を見ながら、茶屋で甘味を頬張っていた。
鬼の子-その8-
……うん。急展開☆
青い人はいわし様のところから出張してもらいました。
いわし様、ご許可ありがとうございます!!
http://piapro.jp/content/w47p6t7pgrvxjsgv
↑若干ネタばれの恐れがあります。
なぜ私の書く人たちはこんなに性格が素直じゃないんでしょう…orz
このままじゃ、青い人が電波になりっぱなしなので、少しでも早くシリアスに引っ張っていけるように頑張ります。
毎度、本文のシリアスをぶち壊して申し訳ありません。
fumu様の原曲=http://piapro.jp/content/371rlchbw857ki6g
追伸:知らない人に声をかけられても付いて行かないようにしてください。
コメント1
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痛覚
ご意見・ご感想
逆さ蝶様、早速ありがとうございます!!
急展開過ぎてすみませんorz
付け足し、というよりも平行に進んでいる感じです。
過去と未来の同時進行のような、そんな分かりにくい感じですorz
青い人が茶屋にいるのを知っているのは、また次回のお話で!!
分かりづらくて申し訳ないです;;
次回、早く上げれるように頑張ります><
そして、我が家のボカロも本当にまともなのか…
2009/02/05 19:30:43