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僕の最初の記憶は、白。
冷たくて、静かで、そして真っ白な雪景色だった。
僕はまだ何もできない無力な赤子で、だけど人に抱かれていたから----母が抱いていてくれたから、寒くても凍えてはいなかった。
どうしてそんなに昔の記憶まで残っているのかはわからない。
それは僕の記憶の中で唯一、温かくて優しい記憶だ...孤守唄×隔れんぼ
比奈斗
注意事項
・このお話は鈍痛が書いた『鬼の子』のサブストーリーとなっております。話の流れがわかりにくいと思いますので、出来ましたら『鬼の子』を読んでいただけると嬉しいです。
・自己解釈の文章で書かれております。
・文章能力はありませんorz
それでも大丈夫という方は前のバージョンからどうぞ!!...名前-その1-
痛覚
歩む音が二つ。
生い茂った山道をその二つの影は進んでいた。
雲ひとつない晴天とまではいかないが、空には薄雲がかかっていて、時折視界を仄暗くする。
「かいとは…」
ポツリと呟く声にかいとは後ろを振り向いた。
頭に手ぬぐいを巻いた黄色の髪が、日差しに解けて反射する。
「かいとは自分が人間だった...鬼の子-終わり-
痛覚
しゃくりあげる僕の背中を撫でる手のひらが優しくて、なかなか泣き止むことが出来なかった。
その人はただ僕の思いを聞いてくれた。
そして、僕は無知なことに気付いた。
「僕は聞けなかった…」
普通に話せるようになったのは、もう朝焼けが近いころだった。
青い髪の鬼と黄色の髪の鬼の子。二人で湖のほと...鬼の子-その11-
痛覚
聞こえる?
生きている音が。
その人が再び僕のところを訪れたのは、もう星が瞬き始めるころだった。
昼間にも来たのに、夜になって町を出てくるなんて、怪しすぎる。
僕の警戒もよそに、その人はのんきに湖で足を洗っていた。どうやら、今夜はここに居座るつもりらしい。
「昼間は驚かせてしまったみたいだ...鬼の子-その10-
痛覚
これは僕が青い世界を見る前日のお話。
長い間、人に囲まれて生活していると、時折錯覚してしまいそうになる。
俺はそちら側ではない。
拒絶されることも、受け入れられることも、あることを知っているけど。
誰だって、傷付けば痛い。
痛いことにすら気付けないのなら、それは哀しい事だと、あの人は寂し...鬼の子-その9-
痛覚
優しさが欲しいと思ったのは、寂しさを知ってからだった。
温もりが欲しいと思ったのは、冷たさを知ってからだった。
理由が欲しいと思ったのは、孤独を知ってからだった。
すべては知った後だった。
それがどれだけの意味を持っていたのか。
やっと気付いた。
「確かに、自分の弱さを知るのは良い事だと...鬼の子-その8-
痛覚
誰が悪いわけじゃなくて、きっとより良いものを望んだだけなんだと思う。
僕は、どうやっても僕の目線からしか世界を見られなくて、それと同じように、皆が皆の心からそれぞれにいろんなことを感じているんだろう。
笑っているのに悲しんでいて、泣いているのに喜んでいる。
心はとても複雑過ぎて、自分自身でも...鬼の子-その7-
痛覚
りんは僕より強い。
僕は知るのを恐れた。
恐れて色んなものを見ないふりしていた。
事実を受け入れたふりして、何も知ろうとしなかった。
『人間』より、『鬼の子』より、僕は弱かった。
りんは、そんな僕に呆れることなく、ずっと隣にいてくれた。
あの話をしたときから、りんは少し穏やかな目になっ...鬼の子-その6-
痛覚
何から話せば良いかな…そうね、まず置かれていた環境について話そう。
ぼくは『神の子』として、大きな屋敷で生活していた。皆がぼくを崇めてた。
いつも多くの人間と一緒にいたけど、ぼくから話しかけられることは禁止されてた。
『神の子』を汚しちゃいけないんだって。神聖なものだから。汚いものに触れてし...鬼の子-その5-
痛覚
思えばその子の眼は最初から何かに怯えているようだった。
いくら慰めの言葉を投げても、その色は増すばかり。
実際、僕は全然わかっていなかった。
すべてに意味が込められていたのに。
その子のことも。言葉も。行動も。
一緒に時を過ごしていたのに。
「ぼくの事、聞かないの?」
風の強い日だった...鬼の子-その4-
痛覚
あの頃、世界は二人とそれ以外。
きっと同じものを感じていた。
どこかで繋がっていたんだと思う。
目に映るもの、ずっと形に残るもの、現せるものなどなにもないけど。
都合のいい幻を見たんだと笑う人もいるだろう。
幼子の戯言だと相手にしてくれないかもしれない。
けど、そこにいたのは確かにひと...ぼくが生まれた日―鬼の子・外伝的何か―
痛覚
これはぼくにとっては幸せだった。
長い時間じゃないけれど、ぼくは幸せだった。
幸せが嬉しいものだと知った。
幸せは辛いものだと知ることができた。
この素晴らしい時間をぼくは忘れない。
ずっと、わすれないよ。
ただ呆然と毎日を過ごしていた。
七回目の春。
何も変わりない。
僕はいつ...鬼の子-その3-
痛覚
それから僕はずっとそこにいた。
他に行く場所もなかったし、外に出してもらえる機会のなかった僕には、他の場所という概念自体がなかった。帰り道なども、覚えられるはずがない。あの時、去っていく母の後を必死追っていれば、と幾度か思い浮かんだが、それも無理だろうと諦めるしかなかった。
それに、ほんの少し...鬼の子-その2-
痛覚
僕は母のお腹の中にいるときから、ある程度の言葉が理解できていた。
そこは幸せな声で溢れていた。
優しい言葉が降り注いでくれた。
陽だまりみたいに暖かかった。
幸せの、時間だった……
一つ目の春を迎えた頃。
初めて、お母さんから声をかけられた。
僕はその招きのままに、不安定な歩きで後を...鬼の子
痛覚