【カイト→メイコ←レン】お姉ちゃんが好きすぎる弟2人


カイトが腕を組み、フンスと鼻を鳴らしてレンを見下ろす。オレは明日から泊まり込みの仕事だ、と偉そうに告げて。
「ものすごく不本意だが、オレの留守中めーちゃんの周辺警護を頼んだぞ」
「不本意なら頼むな」
にべもないレンの冷たい一言にカイトはガアッと雄叫びをあげた。
「オレだって頼まないで済むなら頼まないっつーの!この家には俺とお前しか男がいないんだから仕方ないだろ!妥協点だ妥協点!!」
まったくもって余裕のない兄に対し、これ見よがしにレンは呆れたため息を吐く。
「妥協して俺かよ。マジ失礼な奴だな」
「これ以上不穏な輩の目にめーちゃんを晒したくないんだよッ」
兄の怨念すらこもる憎々しげな声に、レンは片眉を上げ、そこには同意だとぞんざいに返した。
「まーな」
「だから結論、オレとお前でめーちゃんを守るのが一番効率的っていうだけであって」
「そーかよ」
「だがッ本来オレとお前は敵同士であることを忘れるなッ!?」
「うるせぇな。いちいちオーバーリアクションなんだよてめぇは」
腰を180度回転させぐるりんと振り返りながら指差されて、レンは鬱陶しそうに眉をしかめる。
「大体なに、俺を敵って認めてるってことは、いずれ俺がメイコ姉モノにしてもいいってことかよ」
「はぁ?いいわけないだろ寝言はせめて身長170?超えてから言えこの思春期BOYが」
「はぁ?お前こそ7年一緒にいて未だに弟扱いしかされてないことにいい加減絶望しろ腐れマフラー」
「はぁ?この年月がこれから始まるオレとめーちゃんの目くるめく壮大な愛の物語における長い長い試練という名の叙事詩だってわかんないバナナショタは黙ってろよ」
「はぁ?世の中にはおねショタって一大ジャンルがあるんだよショタ舐めてる時点でてめぇの敗北は目に見えてっしついでに年下攻めの需要に関してはてめぇより俺の方がオールマイティなんだよ」
「…………」
「…………」
青vs黄。一触即発。
カイトは食べかけのアイス、レンはバナナ(スウィーティオ)を手に持って臨戦態勢に入った。
そこへ。
「―――ただいまぁ!!」
パタパタと、スリッパの音が廊下から聞こえてくる。ほどなくして開かれたリビングの扉の向こうに、この兄弟が目に入れても痛くないと本気で思っているたった一人の姉が、重そうなエコバッグを両手に持って登場した。
「めーちゃん!?ちょっ、そんな大荷物になるならオレを呼んでよ!!」
「メイコ姉大丈夫?おかえり重かったね。俺が運ぶから休んでて」
「いいのよーたまたま色々特売日だったから予定外に買っちゃった。ありがとレン。じゃ、生もの冷蔵庫にしまってくれる?」
「うん」
「めーちゃんおかえりいいぃオレも手伝うよおおぉ!!」
「カイトはいいわよ。3人もキッチンに入ったら狭いでしょ」
「じゃあ兄貴アイス自分でしまっとけよ。俺やらねぇから」
「えっ!アイス買ってきてくれたのめーちゃん優しい愛してるさすがオレの嫁」
「黙れ」
レンの剛速球バナナ(スウィーティオ)が後頭部にヒットし、逆上したカイトは大人げなくてめぇええ!!と弟に殴りかかった。
台所の床でポカスカと子供のように殴り合っている二人の弟(うち一人は成人男子)を気にすることなく鼻歌交じりに食材を冷蔵庫に詰め終え、メイコはそういえば、と笑顔で振り返った。

「今日はレンとカイトの大好きなチーズ入りハンバーグよ。急いで作るから二人とも手洗って待っててね」

春の日向のような笑顔に虚を突かれた男たちは、たった今まで殴り合っていた不愛想な顔を見合わせ…
がっくりと、脱力した。
やっぱり、可愛い。
やっぱり、絶対に、適わない。



                     *



【カイト→メイコ←レン】弟2人が好きすぎる天然お姉ちゃん


「ねぇ!今日は3人で寝ましょうよ」
パン、と両手を合わせて放たれたゴキゲンな爆弾発言に、リビングで男性声ユニットのデュエット曲を練習していたレンとカイトは、ビシッと音を立てて石化した。
「せっかく今夜は3人しかいないんだし。川の字になって寝ようよ、ねぇねぇ」
無邪気な無邪気なその提案。驚くほど他意がないのは、カイトもレンも重々理解している。
「……。………めーちゃん…オレたち親子でもないし、いくらレンがミニマムサイズだって言っても真ん中にしたらさすがに狭いし…」
カイトはかろうじて平静を繕い精一杯の呆れた声で咎めてやったが、メイコは相変わらず楽しそうだ。
「だからリビングにお布団敷いて雑魚寝すればいいのよ。それからレンが真ん中じゃなくてね、私が真ん中でね、カイトとレンに両側からぎゅーって抱きしめられて寝たいの!」
バサバサ。普段からそうした失態などそう見せないレンが、突如持っていた楽譜を手元から豪快に落とした。手伝おうとするメイコを制し、レンは楽譜を拾い集めながら、ボソリと返す。
「…ダメだよメイコ姉」
「え、なんでー?!」
「俺たちまだまだまだまだこの歌の練習しなくちゃいけないし。いつ終わるかわかんないし」
「邪魔なんかしないわよ…?」
「いや、もしかしたらっていうか確実に徹夜になるレベルでヤバイから。もう絶対終わんねぇから。ホラ俺たち相性最悪だから。メイコ姉はもう部屋に戻って寝なよ」
レンが一見したところごく冷静に、だけど一度もメイコと目を合わさないでそう告げると、メイコはたちまち尻尾を垂らした子犬のようにしょんぼりと俯いた。
カイトとレンは、苦虫を噛み潰したような顔を見合わせた。
これを見るわけにはいかなかったから、二人とも極力メイコの方を見ないようにしていたのである。見てしまったら最後自分たちはあっという間に前言撤回して、トロトロになるほど彼女を甘やかしまくってしまうに違いないのだから。
めったに言わないメイコの我儘やおねだりは基本的に全力で叶えてきた2人だったが、今回のソレばかりは許すわけにいかなかった。そんな狂気の沙汰を許すくらいなら何をトチ狂ったか自分たちがベーコンレタス的な展開になってしまった挙句メイコの前で跡形もなく爆発してしまった方がマシだと本気で考えた。心を鬼にしてでも、ここは彼女のお願いを断固として却下せねばならない。
「……じゃあ、戻る。…けど」
頑なに拒絶のオーラを出す二人の空気を読み取り、メイコは肩を落とした。
ぐっと両手を握りしめ、今にも泣きそうな大きな瞳で、二人を交互に見上げる。
「―――…部屋で待ってちゃ、ダメ?先にお風呂入って、2人のことベッドで待ってるから…」
「……………………」
「……………………」
今度こそ2人の男は目線を合わせ、地平線を凌駕する遠い目と深海より尚地底を貫く深い沈黙で語り合った。
愛されている自覚のない姫君の始末は、ほとほと手に負えない。2人の苦悩を知り得ないメイコは、泣きかけた顔をなんとか笑顔にして、トドメ、少し照れくさそうにこう言ってのけたのだった。
「だって私たち、家族じゃない」




その後無理矢理自室に強制送還された姫君は、後日仕事のスタッフに、涙目で訴えた。
「ひどいわよね、あの2人は仕事の方が大切なの。私のことなんか全部二の次なんだから」
スタッフの彼がその言葉に一瞬絶句したのち、お気の毒に、と呟いたのは、果たして3人のうち誰に対してだったのか。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【カイメイ】 おねえちゃん独占禁止法 【レンメイ】 

※前のバージョンで進みます。全2Pです※

オチなどない小ネタの盛り合わせです。全部特に繋がりとかありません。なんか似たような話ばっかです。はは。
ぬるりサラリと読んで頂ければ嬉しいです。
カイトにもレンにもがくぽさんにもキヨテルさんにもルカさんにも、大切に大切に守られているメイコさんです。
でもやはり頭一つ二つ青い人が抜きん出ているんですよねギリィ…ッ
後半にいくにつれカイメイ色が濃くなります。

みんなメイコさんの余りに可愛さに振り回されて爆発すればいいんだよ!特に青いの!お前だお前!

閲覧数:961

投稿日:2013/04/04 23:45:04

文字数:3,033文字

カテゴリ:小説

  • コメント1

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  • 和壬

    和壬

    ご意見・ご感想

    レンきゅん、冷たぁーい(泣)

    でもそれは、めーちゃんも(バ)カイト兄も大好きだから…だよね?

    なんたって思春期真っ只中ですからw

    のーかです、フォローさせて頂きました

    すいません厚かましくてすいませか世界最高速で土下座します←何言ってんだコイツwww

    2013/04/05 07:54:57

    • ねこかん

      ねこかん

      のーかさんフォローありがとうございます!
      うるさいだけの拙作ですが、また機会があればお読み頂けると嬉しいです。

      レンきゅんはかわいいです^^

      2013/04/17 22:05:20

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