俺の名前は一之瀬遥。18歳の高校2年生だ。平凡な日常を送り、能天気にあくびをしているこの二人に少しは感謝してほしく思う。まぁ、二人がいるだけで助かることもあるからなぁ。
「なあ、あとでノート見せてくれよ。さすがに成績に響く。」
と、ダメ元でお願いしてみる。
「あぁ、いいよ。」
え!?こいつにしては少し軽いな。
「これで貸し一つな。」
「…言うと思った。」
やっぱり裏がありやがった。だが、背に腹はかえられないか。
「……いくらだ?」
「う~ん。ここは1000円のところな、ん、と、半額の500円。」
と、高いトーンで話した。
「分かった、後で払うから見せてくれよ。」
「は~い。交渉成立~。いや~また儲かっちゃたね~。」
…やっぱりこいつえげつない。と、そんなこと話している間に食堂についた。
「ただいま。」
と言いながらドアを開けた。時間は今…五時二十四分か。
「おかえり~」
台所の奥から母さんが出てきた。
「鮎は?」
「今、部屋にいるわよ。」
鮎というのは、俺の姉だ。まぁ、俺も鮎も施設育ちで血は繋がっていないが、本当の兄弟のように接している。…まだ六月だし、日は暮れないよな。もう少しゆっくりしていよう。
「今日の夕飯は?」
「今日はね、ちょっと手間がかかるけどカレーライスにしようと思ってるの。」
「そっか。ちょっと楽しみだな。」
…こちらにとっても好都合だ。少し自分の部屋で待機しておこう。
六時十七分。遥は少しそわそわした様子で部屋を歩き回っていた。…もう少しだ。もう少しで、レーダーに反応があるはず。そのとき、手に持っていたスマホ程の大きさのレーダーに赤いマークがついた。奴だ!窓を開け、ベランダに出ると、短めのパイプを手に持った。
「ミストアップ!」
こう叫ぶと、パイプから出てきた煙がみるみるうちに遥の体を包み込み、体には水色の防具、手には黄色の光沢のある剣があり、変身する前では考えられないような逞しい姿になっていた。レーダーには反応が一つ。スモークエネミーズだ。おそらく夕飯前には余裕で間に合うだろう。そう思い、遥はベランダから飛び降りた。今日は、いつもより少し出現が早い。まぁ、一体だけだしなんとかなるだろう。と、走りながら考えていると、レーダー反応のあるところまで来ると、ビル7階程の大きさはありそうな化け物がいた。さてと、一仕事いくか。
「こっちだ!」
スモークエネミーズの頭上にまで跳び上がってからそう言うと、スモークエネミーズはこちらに反応してきた。すかさず頭に一撃攻撃をくらわす。怯んだすきに腹部にでかい風穴を開けてやった。
「よっしゃあ!」
決まった。すると、体からどんどん煙が出てきて最後には跡形もなく消滅し、辺りにはスモークエネミーズから出てきた煙が地面を埋め尽くしていた。それを遥は、パイプを取出し煙を吸収した。これが、次に変身するためのエネルギーになるのだ。家のベランダに戻り、変身を解除して時計を見ると、7時10分だった。…もうそろそろカレーが出来たころかもしれない。遥は急いでリビングへと戻った。
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