初恋メロディー 未来音符 そのろく
窓から朝日が入ってくる
家のすぐ近くが大通りだから、車がけたたましく走っている
目を閉じながらでも朝になっているのが分かる
あれ……?朝になってる…?何で…?
ぼんやりとした頭で
昨日……いつのまにか……寝ちゃったのかな……?
そうだ…流香先輩と……それから……
昨日の夜のことを思い出していって
……合唱部を……辞めていい……って……
…………
……あぁ……もういいんだ……
………
……
…
……起きよう…
ぼんやりとした目で窓の方を見る
眩しいなぁ……
…そういえば…お風呂入ってないや…
…入ろう……
のっそりと起き上がり部屋を出て行き
のそのそと階段を降りたとこでお母さんに
「ミク~~おはよ~~」
と言われたが
「うん…おはよ…」
大分テンション低く返してしまった
私は朝が弱いし、さらに眠る前に泣いたせいもあって、かなり気持ちは沈んでる。
そんな低いテンションの私にお母さんは
「お風呂入るんでしょ~~?はいタオルっ」
とタオルを渡してきたので
うん…と受け取ってお風呂に入った
お風呂を出て部屋に戻って制服に着替えながら
学校に言ったら演劇部の友達に「演劇部に入る」と言おう…
そうすれば、演劇部に行って歌うことができる…
合唱部はそれで無くなっちゃうから…少し……寂しい……
でも流香先輩が、どんなに頑張っても復活しないと言ってた…
流香先輩はかなり頭がいいから、きっとそうなんだろう…
………
………
学校に行こう…
………
朝ご飯を食べて家を出た
学校に着いて自分のクラスに入ると
「ミクおはよう~」
「おはよ~~」
と言われたので、学校に向かう間に戻したいつものテンションで
「おはよー」
と返した。そして、
「あのさ演劇部に入らない?って言ってたじゃん?」
「うん。え?何?考えてくれたのっ?入ってくれるのっ?」
演劇部の友達のサトミが期待の目で私を見てくる
「…うん、入る……先輩もOKしてくれたから平気…」
そう言うと私の手を握り
「やったやったっ!!やった~~、これで劇ができるーっ!
やりたかった劇ができるよーっ!!やった~~っ!!」
そう言ってピョンピョンと跳ねる
嬉しそうな顔してるなぁ…
「やりたかった劇なんてあったの?」
「うんっ!あったのっ!あったのよ~~、あのね、あのねっ!
これはある歌姫のお話で~、ミクにはその歌姫の~、あっ、」
サトミが突然言いかけていた事を止める
「ん?どうしたの?まさか私に歌うだけじゃなくて、
役やれ、なんて言わないでよ?私できっこないもん、無理」
後ろで歌うぐらいならいいけど、さすがに役はやだよ…
恥ずいし、マジで無理
「違う違うっ!そうじゃなくて…」
バツが悪そうな顔をして
「ごめんね…1人ではしゃいじゃって…ミクがウチに来るってことは…
そのぉ……つまり合唱部は…無くなっちゃうん…だよね?…ごめんね…」
ションボリとしながら私を見て謝った
「平気だよ。さっき言ったじゃん?先輩のOKが出たって。
無くなっても怒られないよ。先輩も、自分達がいなくなったら合唱部は
お終いになるって分かってたみたいなの。だから大丈夫。」
「…そう、そっか…」
「うん、平気だよ。そんで?どんな話なの?」
「あっ、え~とね、ある歌姫のお話なんだけどね……」
こうして私は演劇部に入った。
そして放課後に演劇部の部室に行き、
「はぁぁぁぁっ!?何それぇーー!?マジで無理っ!!」
劇の内容と役を聞いて私は叫んだ
「お願いっ!!このとーりっ!!」
サトミが土下座した
女子高生が土下座をするんじゃない!!
「無理だってっ!!恥ずい!!マジで無理無理ムリ!!
できっこありませんっ!!いーやーだぁーー!!」
「お願いっ!!ウチの部員じゃできる人がいないのっ!!
でもミクならできる!だって合唱部だもん!つーかミクしかできない!!」
「嫌だよっ!!恥ずい!!恥ずかし過ぎる!!ヤダッ!!」
「私がミクを演劇部にしつこく誘ってた理由もこれなのっ!!
他の人じゃダメだったの!!合唱部だからずっと誘ってたの!!」
サトミはクラスの中で、私だけをずっと演劇部に誘っていた
さっきの話を聞いてやっと理解した、どーりで…
「理由はさっき聞いて分かってるけど、マジで無理です!!
歌えなくは無いと思うけど恥ずかし過ぎるっ!!ムーリっ!!」
サトミが私に言った役は、話の中に出てくるもう1人の歌姫の役。
劇には歌姫が2人出てきて、1人はサトミがやるがもう1人の歌姫が私。
出番は全然ないし、陰に隠れて少し話をする程度の役。
が、それは途中までで、ある所で
「体育館の後ろから歌うなんてヤダよっ!!しかも1人ででしょっ!?
恥ずかしいよ!!みんな私を見るじゃんっ!?できっこない!!」
友達の歌姫を助けるために、1人で歌いながら入ってくるシーン
とゆうのが問題だ
「お願いっ!!ウチにはこのシーンをできる人がいないのっ!!
1人で体育館全体に声を響かせられないの!!でもミクはできるじゃん!?
中学の時に練習でやってたじゃん?合唱部やってたじゃん?」
合唱部のモットー、1人の声で体育館を支配しろ!!
先輩達はこれをマジでやった。やらせた
中学の時も合唱部は毎日練習してて、可能な限り体育館で練習した。
しかも週1回は1人1人体育館で歌わせて、「声出せー!!」と
部員を鍛えていった。
私も当然やらされた。その時、私が歌ってる丁度その時、サトミが
偶然に体育館に入りそれを知ったのだ。
「お願いっ!!顔もフードっぽいの被ってて隠れてるし!
そのあと一切出番が無いからお願いっ!!
誰もこの役できないの!!一番のシーンなのっ!!やって!!」
「マイク使えばいいじゃん!!生で私が歌わなくてもいいじゃん!?」
「マイクは使いたくないのっ!!ここはそうゆうシーンなの!!
嫌なのマイク!!生歌で演出したいのっ!!
私のこだわり分かってよっ!!この役はミク専用なの!!」
「アンタのこだわりなのかよっ!!何だよ私専用って!?
シャア専用みたいに言うなよっ!!つーかいきなり主役級じゃん!?
他の部員怒るでしょ!?今日入るんだよ私!?」
サトミが土下座から立ち上がった
土下座長かったなぁ~
「大丈夫っ!!みんな分かってくれてるから、平気平気!
つーか私がミクのこと話したらOKだって~
そんな人がいるなら是非お願いをしよう!って言ってたし~
それに私、部長だし~誰も反対しないよ~」
「もう部長になってんだ…早…」
「3年になった途端に先輩が「めんどくせ~」っていって辞めたから」
合唱部は10月の文化祭まで先輩達がいたのに…
「そうなんだ…でも、やっぱり恥ずかしいよ…嫌だよ…」
ホントに恥ずかしいよぉ…
みんなで歌う分には平気だけど…1人では無理だよ…
「やって!この役やって!ミク!
つーか、演劇部に入ってこの役をやれなかったら先輩達が怒ると思うよ!?
せっかく許したのに歌わないのかよ!!って怒ると思うよ!?」
!!!!
「い、言いそうだ…あの人達は言いそうだ…」
流香先輩も言いそうだ…
せっかく演劇部に入ってそんな役なのに…歌わない?どうゆうこと?
と、にっこり笑顔で言いそうだ…
「ぐぅぅ、先輩達を出すとは卑怯な…」
「やってくれる?ミク?」
笑顔のサトミの言葉に私は
「…………」
「…………」
「……………はい……」
負けてしまった
「そんじゃあ明日からよろしく~」
サトミは部室に残り、私は1人で帰ることになった
はぁ……
部室から出て音楽室に向かう
合唱部の荷物、と言ってもほぼ無いが、片付けなくちゃ…
劇は10月の文化祭でやるからまだ大分先の話だけど…
それまでみんなと一緒に私も練習できるけど…
……
………
はぁぁぁぁ~
階段を上がってる最中で
「あ、ミクちゃん…」
「はい?」
名前を呼ばれ振り返ると
げぇ…
「……海斗先輩……」
海斗先輩が廊下から私に話しかけた
「露骨に顔に出てるよ!すっごい嫌な顔してるよっ!!」
そりゃするでしょ…
「なんですか~?」
私は半目で、自分でも分かるぐらいの嫌そーな顔で聞いた
「いや、特に用ってほどじゃ…」
私から目を逸らし海斗先輩は頭を掻いた
「じゃあ私は部室に行くんで~」
また階段を上がろうとすると
「あ、今日部活なんだ?」
私は立ち止まったが、
「…もう合唱部はお終いです。だから…今日は片付けるんです…」
振り返らずに返事すると
「じゃ、じゃあどうするの?ウチでマネージャーやってくれない?」
海斗先輩に期待を込めた声でこれからのことを聞かれたが
「…今日から私は演劇部です。サッカー部には行きません…」
私の断りの言葉に
「そっか~~、残念…」
かなりションボリした声を出した
………
私はまだ階段を上がらずに
「……先輩は…」
「ん?何?」
「……先輩は結構もてるでしょ?流香先輩に昨日聞きました。
なのになんで私を……そのぉ……」
さすがにストレートに好きなんですか?とは聞けない
「あぁ…聞いたの…」
「はい…聞きました…去年の4月に一目惚れってことも…」
「げぇ!気付かれてたの!?
うぅわぁ~~恥ずいっ、何で~~?うっわ~~」
海斗先輩は驚きの声を出した。
なのでそ~っと首だけ回し、後ろを見ると頭を抱えてうずくまっていた
耳まで真っ赤だ……ちょっと可愛いな……
「…………」
私が何にも言わないと先輩は顔を上げずに
「………まぁ……一目惚れは……本当だよ……うん……
…あの日……部活説明会で……好きになった…」
っ!!
好きになった。その言葉にかなりドキッとする
うわぁ~、初めて言われたから……結構くるなぁ……
少しドキドキし、顔上げないでね…と思いながら振り返り
「…それで……私をマネージャーに?」
必死に冷静を装い、言葉を出した。
先輩は顔をまだ下に向けながら
「…まぁ……うん……そうです……そうするれば……学年が違うけど……
…い、一緒にいやすくなるでしょ……だから……」
先輩の言葉に胸がぎゅーーっとなり、息ができなくなる。
うわぁ…ストレートに言わないでよ…
…ヤ、
…ヤバイ……
…これはヤバイ…
…かなりヤバイ…
「………」
「………」
「…………」
「…………」
2人の間に沈黙が流れ、外から部活をやってる声が聞こえてくる。
夕日が窓から射し込み、私の影が海斗先輩の横に落ちる
………
誰か……
………
…誰か通って…
………
沈黙に耐えられなくなり、
私は
「…せ、先輩には悪いですけど……マネージャーには、なれません…」
必死に言葉を出した
「…そっか…」
「…はい…」
「………」
「………」
「………」
再び2人に沈黙が流れて
「…そ、それじゃ…」
私は再び階段を上り始め、チラリと海斗先輩を見て止まる
「…私を、す、好きと言ってくれたのは……嬉しかったです。」
「!!」
海斗先輩が驚いて顔を上げる
大丈夫、この位置だったら夕日で私の顔は分からない…
「…それじゃあ……また」
そう言って階段をまた上り始めた
「う、うん!またね…」
海斗先輩が私の背中に返事をした
何かが変わり始めた。
そんな気がしたある春のことです。
初恋メロディー 未来音符その6
初恋メロディー未来音符のその6です。
オリキャラのサトミなんですが、キャラ作りが苦手なので容姿を
書けなくてすみません。
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