第七十三話 ずっと見てた
「伝えたかったなあ……」
独りごとなのか、俺に言ったことなのか。
それはわからない。何しろ今グミは俺に背中を向けているから。
「しっかしなぁ、いつもは面倒見のいい姉御気質気取ってるくせに、こういうの苦手だよな、お前って」
ああ、昔からそうだ。
励まそうと頑張ってるのに、どうもいい言葉が出てこない。
レンが悲しそうな顔をするたび、泣きそうになるたび、無気力になるたび、大事な人を失うたび、こいつは当の本人よりもっと悲しそうな顔をするんだ。
そしてそのたびに俺は潰れそうになってたんだ。
今もそうだ。
そんな消えそうな顔してあんなヘタレの笑顔思い出して、挙句の果てにあいつの幸せはあたしの幸せとかぬかしやがる。
じゃあ、お前の幸せは誰が願うんだよ。
自分が幸せじゃないと、他の誰かは幸せにはできねぇんだよ。
小さいころからそうだ。
グミの目はずっとレンを見ていた。
俺のことなんて知らずに、ずっとあいつばっかり見ていた。
レンもレンだぜ。
こんなにいい奴が何年も何年も想ってくれてるっているのに、なんでそう儚い高嶺の花ばっかりに惚れやがる。
なんでかなあ……。
こんなときになんて言ったら良いかわからない。
もう、ここにいたって惨めなだけだから、もう出るかな。
そう投げやりに思った時だった。
「あたし……本当に、馬鹿だなぁ……」
泣いてるのか、声が震えている。
「なあ、グミ」
思わず名前を呼んだ。
綺麗な透き通る髪をなびかせて振り向く。
まったく。
お前も、お前だよ。
「俺の気持ちにはいつ気づいてくれんの」
気づいてないとは思わない。
レンじゃあるまいし、ここまで一緒にいれば少しぐらい伝わっているはず。
でもそれじゃ嫌なんだよ、もう。
ああ、俺って性格悪いな。
グミは大きな目を更に開いて、頬を染めてから、俯いた。
「ホントだね……」
もう一度俺の方を向いたグミは、情けなく笑った。
コメント1
関連動画0
オススメ作品
A1
幼馴染みの彼女が最近綺麗になってきたから
恋してるのと聞いたら
恥ずかしそうに笑いながら
うんと答えた
その時
胸がズキンと痛んだ
心では聞きたくないと思いながらも
どんな人なのと聞いていた
その人は僕とは真反対のタイプだった...幼なじみ
けんはる
勘違いばかりしていたそんなのまぁなんでもいいや
今時の曲は好きじゃない今どきのことはわからない
若者ってひとくくりは好きじゃない
自分はみんなみたいにならないそんな意地だけ張って辿り着いた先は1人ただここにいた。
後ろにはなにもない。前ならえの先に
僕らなにができるんだい
教えてくれよ
誰も助けてく...境地
鈴宮ももこ
A 聞き飽きたテンプレの言葉 ボクは今日も人波に呑まれる
『ほどほど』を覚えた体は対になるように『全力』を拒んだ
B 潮風を背に歌う 波の音とボクの声だけか響いていた
S 潜った海中 静寂に包まれていた
空っぽのココロは水を求めてる 息もできない程に…水中歌
衣泉
それは、月の綺麗な夜。
深い森の奥。
それは、暗闇に包まれている。
その森は、道が入り組んでいる。
道に迷いやすいのだ。
その森に入った者は、どういうことか帰ってくることはない。
その理由は、さだかではない。
その森の奥に、ある村の娘が迷い込んだ。
「どうすれば、いいんだろう」
その娘の手には、色あ...Bad ∞ End ∞ Night 1【自己解釈】
ゆるりー
*3/27 名古屋ボカストにて頒布する小説合同誌のサンプルです
*前のバージョン(ver.) クリックで続きます
1. 陽葵ちず 幸せだけが在る夜に
2.ゆるりー 君に捧ぐワンシーンを
3.茶猫 秘密のおやつは蜜の味
4.すぅ スイ...【カイメイ中心合同誌】36枚目の楽譜に階名を【サンプル】
ayumin
Hello there!! ^-^
I am new to piapro and I would gladly appreciate if you hit the subscribe button on my YouTube channel!
Thank you for supporting me...Introduction
ファントムP
クリップボードにコピーしました
ご意見・ご感想
しるる
ご意見・ご感想
おいーー!
気づいてなかったよ!
私がカイトの心情に気づいてなかったよーww
そして、最後のグミちゃんがかわいいよーww
2013/05/09 22:49:01
イズミ草
あれ! そうだったんですか!!
よっしゃ作戦成功ですよwww
多分気づかれてるだろうなーと思ってたんですけどww
2013/05/10 21:22:45