――――ああ、何も見えない。


俺の世界は  白  だけ。











「レン。お見舞いに来たよ」
「……ミク。いつもありがとね。」

「大丈夫?手、まだ布で支えてるんだねえ」
「うん…なかなか治りが悪くって」
「大変だね…。でも、絶対完治するって!がんばろ!!」
「うん、ありがと。頑張るよ」


俺は数週間前に交通事故に遭った。

手を負傷して、今は入院中。



別に、苦があるわけじゃない。

特別仲がいい友達もミクしかいないから、学校に行きたい訳じゃないし。



―――でも。




「病院って、白いよね」




白いシーツに白いカーテン、白い天井、白い床・・・

全部全部全部――――白。


こう白ばっか見てると気持ち悪くなってくる。



「どうしたの急に。当たり前でしょ?」
「…そっか。そりゃそうだね」
「変なレン。じゃ、私はバイトあるし帰るね」
「うん、頑張って。バイバイ」



ミクが病室を出た。


その直後だった。






「――ここから出たい?」




女の子のか細い声が聞こえた。



「っ………!?」


慌てて振り向いたら、そこには


― 俺とそっくりな女の子が立っていた ―





「……だ、れ?」

「リン」

「…リ…ン……?」


何、この子。

いつからいた?というか窓は閉めたはずだ。



頭がゴチャゴチャする中、女の子は言った。



「あなたのお願い、聞いてあげてもいいよ」

「………お願いって、何?俺何も願ってなんか」




「病院――白だらけの気持ち悪い所から逃げ出したい」



「……………え」


俺の額に冷や汗が伝う。





なんで、知ってるの?





確かに俺は思っていた。ニゲタシタイ―――と。

しかし、誰にも話したことない。

ましてや声にも出したことない。


なのに、なんで。




「逃げたいんじゃないの?私ならあなたを助けられるのに」
「……っ本当に!?」
「うん。リンは嘘吐かないもん」
「出口はっ………出口はどこなんだ!?」


リンにすがるように聞く俺。


――リンは 指を指して小さく呟いた。


   

    「そこ」





リンが指を指したのは、病棟だった。





「………本当に出口あるの?」
「うん、ある。でもね」



「レンもリンのお願い聞いてくれたら、行っていいよ」


……お願い……?





「『死体ハ交換サレル』って言って」


――――――?


「それ、だけなの?」
「うん、リンにはそれが必要なんだ」
「いいよ!!それだけでいいなら、何度でも言う!!!」


喜んで俺は何回も言った。

『死体ハ交換サレル』と。



「うん、じゃあ行こう。」
「ありがとう!どこに出口があるの?」

「出口はあちら」




立ち止まったのは―――530室



中に入ると、オルゴールが音楽奏でながら俺を迎えた




でも




「………リン?出口ないじゃん」




扉は室内にひとつもなかった




「ううん。あるよ」
「―――どこに!!?ただの空き部屋だろ!!!!」


俺は声を荒げて叫んだ。

騙して遊んだ上に、すっとぼける?

冗談じゃない。本気にした俺が馬鹿だった。



「どうしたの、あるじゃない。」

「だからっ、どこに……!!!」





  「 
    こ
     
      こ        
  
     に 

       」








リンは―――俺を指した。




「………リン、おいどういうことだよ」

後ずさる俺。


――パリンッ

勢いで砂の入った小瓶を割ってしまった。



ざりざりと音をたて、俺の体に纏わりつく

後ろに逃げようとした――



「ああ。振り向かれては」



そこには死体があった











――――赤色に染まった530室


あのオルゴールも赤に染まった。

シーツだって、カーテンだって、天井だって、床だって



みんな赤に。






ただ白いのは

「鏡音リン」と書かれた表札だった








「レン!また来たよーっ!!」
「いつもありがとう。」
「あのさ、看護師さんに聞いたんだけど…530の人…」
「うん、亡くなったんだってね」


俺は元気に生きている。

手の怪我だって順調に治り始めた。



――この体にも慣れてきた。


私はこれから『レン』として生きるんだ。




そして、あの子は


『リン』として―――――















――――ああ、何も見えない。


俺の世界は  黒  だけ。





そしてたまに聞こえる――か細い 男の子 の声。











「 『死体ハ交換サレル』とあなたが申されましたのに 」






ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

白黒病棟〈自己解釈〉

1時間クオリティサーセンorz

ていうか書いてる私も怖かった←

しかし神曲だ……ありがとう歪P様



また自己解釈系書きたいっすb

閲覧数:3,688

投稿日:2010/11/07 22:17:32

文字数:2,036文字

カテゴリ:小説

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  • 山城

    山城

    ご意見・ご感想

    成る程!凄い!
    すっごくスッキリしました。
    ずっと解釈を探していたので。
    神ですね!歪Pもらび様も!!

    本当スッキリしました。有難う御座いました!

    2011/08/11 12:34:07

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