≪開発趣意書≫


【プロジェクト名(仮称)】:キャラクター・ボーカル・シリーズ02(L)

先日の経営会議の決議により急遽決定した、新規ボーカロイド開発について、その趣意を本書により記録する。

【経緯】

現在開発中の計画名キャラクター・ボーカル・シリーズ02、通称「鏡音リン」に関し、開発チームの報告により、予定期日までの完成が困難であることが判明した。

「鏡音リン」に関しては、その歌唱力その他の性能に関し、予想を上回る好成績を残している。

しかし予てより、歌詞及び曲の持つ雰囲気に対し、過剰に感情移入する傾向が見られ、幾度の改良を経るも心理回路は依然不安定であり、
当初のような錯乱暴走、或いは心身喪失等は幾分緩和されたものの、慢性的な無気力、並びに軽度のPTSDを頻繁に発症するに及び、目下のところ実用化の目途は立っていない。

この症状を解消するために、心理回路の安定を優先させれば、本機の特徴である、歌声に深い情感を籠めるための、高度の共感能力を損ないかねず、
その場合、「シリーズ01(通称:初音ミク)」との差別化が曖昧となり、本機開発の意義を失う恐れがある。

そこで今回新たに提案されたのが、「鏡音リン」の心理回路の安定機能を、外部の独立した個体に担わせるという案である。
つまり、「鏡音リン」の補完機として、別のボーカロイドを「鏡音リン」と一体運用するものである。


【趣意】

当補完機は「鏡音リン」と一心同体を成し、外部から同機の心身の安定を図るとともに、
自身もボーカロイドとして活動し、同機を補佐、又は協働して目的を達成するものとする。

同補完機の通称は後日決定するが、仮に「鏡音レン」と呼称する。

ただし本機の開発に関し、現時点より新規計画として取締役会の承認を得ることは困難であり、
よってこれを「キャラクター・ボーカル・シリーズ02」プロジェクトの、あくまで一部として取り扱うものとし、プロジェクト名を同一とし、個体を識別する時のみ「シリーズ02(L)」と呼称する。
これに伴い「鏡音リン」は以後「シリーズ02(R)」と呼称する。

また開発チームの人員体制も、当面は既存のままとし、必要であれば、次期予算年度より増員を検討する。

同機のハードウェア及びソフトウェアに関しては、既に完成済の「鏡音リン」の各種コンポーネントを可能な限り流用するものとし、
開発期間の短縮と開発・製造コストの削減に努め、「鏡音リン」の当初の完成予定期日までに極力完成させるものとする。

以上、開発要求事項の詳細については、別途「要求事項定義書」に記録するものとする。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

鏡音レン開発物語1「開発趣意書」

リンレン・アンドロイド設定。

アンドロイドとしてのレンくんは、一体何のために作られたのだろうか、ということを、もっともらしく考えてみるシリーズ。

開発にあたって、多分誰かが、こういう書類を書かされたに違いない、というものを想像してみました。

閲覧数:189

投稿日:2011/12/23 22:13:48

文字数:1,099文字

カテゴリ:小説

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  • ピーナッツ

    ピーナッツ

    ご意見・ご感想

    ピーナッツと申します。拝読いたしました。

    桃色象さん、あなた何者ですかw
    何ですかこの文章力。二次書くレベルじゃないでしょ。

    とんでもない人が現れたなと思いました。
    続きを楽しみにしています。

    2011/12/25 01:21:50

    • 桃色ぞう

      桃色ぞう

      ピーナッツ様

      な・な・何をおっしゃいますか。
      それに、イヴの夜にこんなもの読んでいてはいけませんw

      それはともかく、この小説と云えるか微妙なもの(報告書・・・)をお読みいただきまして、さらに有難い感想までいただきまして、感謝に堪えません。

      本作は見ての通り序文で、次作が本編になる予定ですが、大筋はもう書き上がっています。
      ところが先日「ボカロのお父さん」というキーワードに感動してしまい、何とかこの作品に突っ込もうと、只今改変の最中です。
      近日中には投下しますので、年末特番に飽きた時にでもご覧いただければと思います。

      2011/12/25 08:31:36

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