「うえっ!げほっ!!」
レンの唇が離れた瞬間、私はむせた。
「ルカも共犯～」
「・・・あんたねぇ」
私はレンを睨みつけた。
「てか、うえって～げほって～俺の口が臭いみたいなことになってんじゃん～!!傷つくわぁ」
「酒臭いのは事実でしょうが!!」
「えへへへへ」
「つーかいきなりキ・・・キスって・・・・!!」
「え～?」
キスは恋人同士がするものであって、こんな軽々しくする物ではない。
なのに、こいつは・・・!
「俺らキスしたの初めてじゃないじゃんか～」
「そ、そうだけど・・・」
そういえば、そうだったな・・・
「北海道の時も、未遂で終わっちゃったし～」
「未遂って、あんた!あの時私がどんな気持ちで・・・」
「分かるよぉ。あん時は、ゴメンねぇ」
レンは私の肩に顎を乗せてきた。
目は切なげで、本当に反省しているんだなぁと思った。
「分かってるならいいけ」
「俺あのときヘタクソだったもんね」
私の言葉を遮ってレンが耳元で囁いた。
今度は酔いも無いはっきりとした口調で。
「ヘタクソって、何がよ?」
「ルカのこと、気持ちよくしようって思ってなかったもんね」
「は!?」
何言ってんのこの人!?
「そういうことじゃ・・・!?・・・ふ、ふぇ・・・・んん・・・」
口の中にぬるっと舌が入ってきた。
誰か止めてよ!・・・と思ったけど、私達のいるところは一年生から死角に入っていた。
「・・・っはぁ、」
「ルカ、物欲しそうな顔してる」
「してないっ・・・!」
大きい声を出したいのに、呼吸が整わなくて出せない。
「はいはい強がりー。・・・保健室いこっか?」
レンが耳元で囁く。
「嫌!」
「じゃあ教室?」
「そういう問題じゃないでしょ・・・って、あ!」
私は最悪なことに気がついた。
「どしたん?」
「携帯忘れた・・・教室に」
「え?」
最悪だ・・・

朝、学園祭の前に空き教室で携帯をいじっていた時に忘れてきたんだ。
「ついて来なくていいから!」
「いやいや、夜の学校より怖いものってないと思うよー?」
「夜中のトイレよりは怖くないわ!」
そんなことを言いながら階段を上がり、空き教室に入った。
「ここら辺に置いたと思うんだけど・・・」
「電気点ける?」
「ううん。あ、あった!」
手に固い感触があって、掴んでみると
「・・・違うし」
誰かのカンのペンケースだった。
「あ、これじゃん?」
後ろからレンが手を伸ばした。
「ほら」
手にとって確認すると、確かに携帯だった。
「ホントだ。ありが・・・」
「そぉい!」
「!?」
目の前の机に肘を突いた。
レンが私の背中を押したのだった。
「何すんのよ!」
「電気点けなくてもいいとか・・・誘ってますね、分かりま」
「あんた相当酔ってるでしょ!」