*前回までのあらすじ*


欺いてみないか?




*=*




「…誰も気づかんな」


警官の服に着替えた俺達は、建物の中をほっつき歩いていた。
誰もこっち見ない。俺たちを「こいつらは警察だ」と、見た目だけで判断している。
案外、みんな馬鹿なのかもな。


「でも僕ら、一回やったことあるよね。警察の仕事」
「…こっそりな」
「全部ばれなかったけどな」


おいカイトその手に持ってるのなんだ。
電子タバコか?どっから持ってきた。
レンはココアシガレットくわえるんじゃねえ。


「…俺ら何歳だっけ」
「さー?でも昔の駄菓子が食べたくなることもあるじゃない」
「あんまりないけど。でも」


俺とカイトはレンをチラ見。
レンはちょっと不満そうになった。


「…何?僕、なんか変?」
「いや。むしろレンはシガレットでいいだろ。お前、なんか少年っぽいし」
「な!?」
「おう。電子タバコとか吸ってるイメージ、ないわ」


見た目、微妙にショタでよかったなレン。


「酷いよー…で、キヨテルを少しは捕まえやすくなったのかな?」
「あいつには一発で見抜かれそうだけどな」
「あいつ見つけたらわんこそばをこれでもかというくらい食わせてやる」
「カイト、お前はなんでそんな軽いんだ。もっと言いたいことあるだろうが」
「じゃあ昔オレが貸した千円を返してもらおう」
「しょぼ…いや、大事だけど…」


こいつら緊張感ないな…


「しかも夏○漱石の千円札で貸したんだぜ?」
「今持ってる人少なすぎるだろそれ」
「返してもらうならちゃんとそれで返してもらおう」
「持ってないだろ、普通」
「じゃあ全部十円玉で」
「財布パンッパンになるよな。しかも重いよな。せめて百円玉にしてもらえよ」


野○さんのお札でもいいだろ。
てかレン、シガレット二本目くわえてんじゃねえよ。
本当に緊張感ないなこいつら!



結局、俺たちが13943号室に収容されているはずのVanaN'Iceだとは、誰にも気づかれなかった。
ただ、周りから結構チラチラ見られてた。
今もチラ見されてる。そんなに目立つのか、俺たち?


「…なんであの人、こっちガン見してるの?」


レンが俺の袖を引いて尋ねてきた。
あのさ、そんなに強く引っ張らなくてもいいから。
服が伸びる伸びる。


「君たち、見ない顔だな」


うわ、話しかけられた。
めっちゃガン見してた奴に話しかけられた。
大事なことなので二回言ってみました。

何だコイツ?と思いつつ、適当に返してみる。


「今日からここに配属になりました」
「あぁ、そうか…新人か。そういや何人か来るって聞いてたな」


おいおいマジかよ。
適当に言ったのになんか本当っぽくなっちまったよ。


「大変だろうが頑張れよ。ここにはヤバイ奴もいるからな」
「ヤバイ奴、とは?」
「『危険区域』ってのがあってよ、そこの牢にはとんでもない奴がブチこまれてるって話だ」


おっさんは地図を広げ、赤く塗られている場所を指す。
そこは俺たちがいた場所だった。


「精神がいかれた奴や、とんでもねえ大罪を犯した奴がいる。この間も、すごい奴が入ったらしいからな…」
「すごい奴?それはどんな人でしょうか」
「あの『Rebel』の生き残りだとよ。確か…、『VanaN'Ice』とか言ってたな」


瞬間、僅かに空気が凍りつく。
おっさんは気づいていないが、俺等は『その』VanaN'Iceだ。
カイトは微妙に眉が動いている。
レンに至っては、笑顔のまま固まっている。


「俺はそいつらを見たことはないが、やっぱりあの『Rebel』の生き残りだからな。いろいろヤバイことしてたらしいぜ」
「そ、そうですか」
「おう。お前らはまだ新人だから危険区域には行けないが、いろいろ気をつけな」


そしておっさんは去っていった。
おそらく、おっさんは俺達が『VanaN'Ice』だということを知らない。
周りの様子から察するに、俺達が脱獄したことには気づいていないようだ。
気づかれたら困るけどな。


「……動くんなら、慎重にしたほうがよさそうだね」
「そうだな…今はまだ大丈夫だが、看守サイドに気づかれるのも時間の問題だろう」
「じゃあ、さっさとここを出ますか」


ここの看守や警察は、信頼しあっているから仕事が速い。
『Rebel』も、ただ信じあえていたなら、どれだけマシな組織になっていただろうか。

いつの世も、だいたいは人を疑って、傷つけ合って、憎しみを残して死んでいく奴らばかり。
それで流れていく時間は、人の心の『闇』を『悪意』に変える。
そして、『悪魔』と呼ばれる存在を呼び寄せる。
『Rebel』はそんな組織だ。

だが俺達は、それに逆らってやる。
世間の闇に、悪魔に――キヨテルに。



「さ、二人とも…武器を準備して。作戦を始めるよ」
「…了解」


建物の裏口に移動し、カイトの作戦を聞く。
少ししてから、レンは左手でナイフを握り、とことこと歩き出した。


「キヨテル、そこで待ってろよ」


「君を、捕まえに行く」

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

13943号室 Ⅴ【自己解釈】

[No.5]
書いてる本人でさえ訳がわからない。

本家様http://www.nicovideo.jp/watch/sm17709319

閲覧数:888

投稿日:2013/09/11 17:55:53

文字数:2,117文字

カテゴリ:小説

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