「ああ…あ…」
 ミクから零れる声は、はたして自分の意志を持って発せられているものなのだろうか。
 ざっざっと足音が、テトのほうへ向かっていく。恐らくテイだろう。
「ああ…あ…あぁっ…」
 そんな…こんなことって…こんな突然…!
 呼吸が整わない。涙が止まらない。
 唐突な別れに、ミクはただただ泣き叫ぶことしかできなかった。
「…これで、よかったの?」
 ふと、テイの声が耳に届いた。
「ああ、いいさ」
「でも、指令は…!」
 テトは多少回復したよう。テイは、どうやら不安がっているようだった。
「私達の目的のためだ。もう…賽は投げられた」
 テトの低い声が聞こえた。
 賽は…投げられた。
「あとはミクを…ん?」
 テトはミクが立ち上がっていることに気付いた。
 当のミクは、自分がなぜ立ち上がっているのかよくわからなかった。ただ、二人の会話を聞いているうちに、気持ちの切り替えがあった。
 悲しみは、恨みへ。
 恨みは、怒りへ。
 リンちゃんを倒したこの二人、けっしてただでは済まさない。
「泣き叫んだ割に立ち直りが早いねえ」
 テトがミクに言い放つ。
 ミクは答えず、マイクを構えた。マイクから荒々しい呼吸が聞こえた。
「…テト、」
 テイは不安げな視線を投げかけた。
テトは何かがおかしいと眉をひそめた。
 …次の瞬間。
「『千本桜』!!」
 何をする間もなく、二人を光と、衝撃が包み込んだ。





「はあ…はあ…」
 穏やかな波と、ミクの息の音。
目の前に、大きなクレーター。ミクが歌って作り出したものだ。
 テトとテイはどうなってしまったのだろうか。
確かに、光線はヒットした、はずだ。しかしながら光がなくなってからミクが見たものはこの大きなクーデターだけだった。
 だが正直、その二人がどうなってしまおうと、今のミクにとってはどうでもいいことだった。
 再び海の方を向く。海は何事もなかったかのように穏やかで、水平線がきれいに映っている。
 確かあのあたりに…とミクが指差してみても、そこには何もない。
 リンは、いなくなってしまった。
「……」
 ミクは座り込んだ。これからどうすればいいのだろう。レン君とはぐれ、リンちゃんを失ってしまった。もしもレン君と再会したとき、私はどんな顔をすればいいのだろう。いや、レン君も脱落してしまったとして…わたしはルカ姉にどうやって勝てば…。
 ゆっくりとフォンを開く。

『A‐2 歌愛ユキ
 C‐4 鏡音レンにより脱落』

 通知はこれっきりで、リンの脱落を知らせるものはなかった。
 …とはいえ、絶望的だろう。あの攻撃を受けて、海に沈んで…助かる見込みなんて…。
 だが、それでも。
「リンちゃん…」
 ミクは祈った。彼女の無事を。
 通知が来ない限りは、まだ脱落が確定したわけではないのだから……。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
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BATTLELOID「STAGE12 激突戦線」-(2)

※概要はBATTLELOID「BEFORE GAME」を参照してください



失ったものの大きさと、ミクの怒り

閲覧数:226

投稿日:2014/04/28 23:10:54

文字数:1,182文字

カテゴリ:小説

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