ブックマークした作品
-
「こんにちはーっ」
「みー!」
「今、夜十時。今晩はが正しい」
「ひ、酷い!」
「…たいした間違いじゃないから、その辺にしてやれ」
「いえ、躾はしっかりしないと」
「しっかりじゃなくてドSなだけじゃないですか!虐めですよっ」
「はい、Sは何の略でしょう?」
「え、え?えーとえーと…」
「…後十秒。十...KAITOの種と保護者の雑談(亜種注意)
霜降り五葉
-
学校とは縛りの多いもので。修学旅行という特別な場で、自由行動なんて言っていても実際は班で固まって移動、さらには必ず行かなくてはならない場所を作る。先生が待っているから、きちんと班で行動していて全員無事だと知らせなくてはならない。
何と言うか、不便で融通の聞かない所だ。そういう所が面白く、この上ない程...KAITOの種 番外編5(亜種注意)
霜降り五葉
-
「みーっ!」
「お帰りなさい」
二つの声と三つの視線に出迎えられ、少々驚く。玄関でモカとコウとそれからもう一人、黒ゴマKAITOが待っていた。
…やはりいつもと違う感じがする。
黒ゴマKAITO一人いるだけでこんなにも違うものだろうか。
『頼みがあるんです。お願い出来ますか?』
そう美鈴が電話してき...KAITOの種26(亜種注意)
霜降り五葉
-
満月の夜は星が少ない。月の光が星を飲み込んでしまうからだ。
ベランダで星を見上げながら三人でアイスを食べる。というか二人に食べさせる。
手摺りの上にいる二人が落ちないかと思いつつも、床だと高さ的に見にくそうなので仕方がない。なるべく大人しくしてもらおう。
「マスターっ」
先程からコウはアイスの催促ば...KAITOの種25(亜種注意)
霜降り五葉
-
机を隠すように覆いかぶさる靄。
水分の多い湿った靄は、近づくと手元が見えなくなるぐらい白い。
大きく息を吸い込んでゆっくり吹くと、ぶわりと舞い上がった。
霧の中から歓喜の声が聞こえる。
「みーっみー!!」
白い机の上では姿は見えないが、跳びはねる影が靄に映っている。
面白いか?
尋ねると間髪入れずに...KAITOの種24(亜種注意)
霜降り五葉
-
毎朝家を出るときに窓を網戸にしておく。
風が入ってそれなりに涼しいからだ。
だが、今日みたいに風がない日は意味がない。
…暑い。
とっとと家に帰ってクーラーをつけよう。
これは家でじっとしていたら過ごせるような気温なんかではない。
というかモカとコウは大丈夫だろうか。
網戸にしてあるとはいえ、家の中...KAITOの種23(亜種注意)
霜降り五葉
-
緑茶。ジュース。チョコ。ポテチ。鶏肉。素麺。袋麺の醤油と塩。シーチキンとコンビーフとコーンの缶詰。アイス。
買い物リストを見ながら買った物を思い出す。
…よし、ない!
ホッとしながらリストをしまって地面に置いていた袋を持ち上げる。
…………おっもいんですけど!!
マスターったらどうして重かったりかさ...KAITOの種 番外編4(亜種注意)
霜降り五葉
-
笹を貰った。
そういえば、今日は七夕だった。
雲のある紅色の空を背中に、道を歩く。
歩く度に乾いた音を立てる笹を見て思う。
願い事か…。
願い事を短冊に書いて笹に飾ると、願いが叶うんだ。
折り紙と画用紙。それから笹を用意して、モカとコウに説明する。
真剣に笹を眺める二人は理解してくれただろうか。
モ...KAITOの種22(亜種注意)
霜降り五葉
-
玄関に入ると、大きく、コウの声が響いているのがわかった。
…五月蝿い。
美鈴を置いてすたすたとリビングへ向かう。
帰ってきた事に気がついたらしいコウが一層騒ぐ。
五月蝿いぞコウ。
「み!」
精一杯に伸ばしてくる手は、はたしてどういう意味なのか。
黒ゴマKAITOがお帰りなさいですと頭を下げてきた。
...KAITOの種21(亜種注意)
霜降り五葉
-
アイスとその他諸々が入った袋が重い。
歩く度に揺れ動き、手が痛くなっていく。
その横で美鈴がアイス入りのぶんぶんと袋を振り回している。
そうしていると、やはり高校生のようだ。
ぽつりと美鈴が話しかけてくる。
「…モカ君が熱出した時、何考えましたか?」
美鈴の口調は答えを求めているような感じではなかっ...KAITOの種20(亜種注意)
霜降り五葉
-
「か…可愛い……!」
何度目かの台詞。
ソファに座る彼女が言った。
視線の先の机にはモカとコウがいる。
黒ゴマイトがその横でため息をつく。
「マスターさっきからそれしか言ってないですよ」
「しょうがないじゃん。クロより断然可愛いんだから」
それを聞いて拗ねたように、顔を膨らませる黒ゴマKAITO。
...KAITOの種19(亜種注意)
霜降り五葉
-
雨が降っている。
豪雨とまではいかないが、それなりの量だ。
問題は雨よりも、風。
強い風が吹いていて雨を強くさせている。
意味の無い傘を閉じて、雨をもろに受ける。
あっという間にびしょ濡れになってしまった。
風が強くて元から濡れていたが、傘があるかないかで大分違うな。
水を吸って重くなった服がどんど...KAITOの種18(亜種注意)
霜降り五葉
-
窓から入ってくる風は湿り気を帯びていて、今すぐにでも雨が降りそうだ。
背中でその風を受けながらフライパンを動かして、綺麗に焼き上がったホットケーキを皿に移す。
ふむ。
我ながら中々上手く作れたと思う。
一枚のホットケーキに包丁を通す。
何等分がいいのだろうか。
普通ならば六等分だが、食べる人の事を考...KAITOの種17(亜種注意)
霜降り五葉
-
熱くて、熱くて。
頭がぼーっとする。
とにかく熱くて苦しい。
起きてるのか寝てるのかもよくわからない感覚。
周りの音も聞こえているのに、どこか遠い。
何を言っているのか、頭で理解出来ない。
誰の声だろう。
目を開けたつもりでも視界は真っ暗で。意識して今度こそ、とやってみてもぼんやりとしていてよくわか...KAITOの種 番外編3(亜種注意)
霜降り五葉
-
太陽が一番元気な時間。
マスターが帰ってくるまで、まだまだ余裕がある。
洗濯物はちゃんと干してあるし、さっき掃除機もかけた。
ベッドメイキングもした。
マスターの部屋の窓はもう少し開けておくとして…後は……えーと………。
……無い?終わった?
あ……いやでも買い物はマスターに頼まれてないし。
…やっ...KAITOの種 番外編2(亜種注意)
霜降り五葉
-
カフェモカアイスとその他いくつかのアイスを自転車の籠にいれて風を切りながら走る。
いくつかの出来事を振り返りながら思う。
己の不甲斐無さと、コウの強さ。
二度、助けられた。
とても大きな二回。
落ち着いたつもりでいて、全く落ち着いていなかった。
冷静に成り切れずにいたせいで周りが見えなくなっていた。...KAITOの種16 後編(亜種注意)
霜降り五葉
-
何度もお礼を言い、電話を切って、冷蔵庫へと向かう。
そういえば…買い物しないで帰ってきたのだった。
不安だったら種を植えたのと同じアイスの方がいいと言っていたが。
カフェモカアイスあっただろうか。
見落とさないように冷蔵庫を漁る。
…残り一つ。ギリギリだな。
というか足りない気がするが。
とりあえず...KAITOの種16 中編(亜種注意)
霜降り五葉
-
モカの様子がおかしい。
熱がある。
息も荒い。
とりあえずわかるのは、尋常ではないということ。
泣きじゃくるコウの横で、モカが苦しそうに目を開ける。
「………………ま、す……た…?」
大丈夫か、どうした?
ソファの上にクッションを置き、モカをその上に移動させる。
コウが涙を拭いながらソファに飛び乗っ...KAITOの種16 前編(亜種注意)
霜降り五葉
-
久しぶりに夕暮れ前に帰途についた。
珍しく早く家に帰れるな。
…あ。そういえばアイスが残り少なかったはずだ。
買ってから帰るか。無いと文句を言われそうだし。
そう思い至って道を変えた。本来真っ直ぐ進むべき所の角を曲がる。
するとそこには妙な光景があった。
「は、な、し、て、く、だ、さ、い~」
「本当...KAITOの種15(亜種注意)
霜降り五葉
-
陽の光が部屋に差し込んでくる。
暖かい。
ぽかぽかと気持ちが良い。
薄い毛布を手にして窓際へ向かう。
今日こそは昼寝したい。
忙しいのとコウの邪魔で、ここのところ昼寝する暇が無かった。
麗らかな今日。昼寝には最適だ。
陽に当たりながらぬくぬくと眠ろう。
「み」
コウが後ろを付いて回る。...KAITOの種14(亜種注意)
霜降り五葉
-
春、と呼べるほど暖かい。
寒い日も少なくなった。
ただ天気がころころと変わる。ここ最近雨ばかりだった。
久しぶりに晴れた今朝、気分も自然と良くなるものだ。
雨が嫌いなわけじゃないが、しばらく続くと流石に飽きてきて、太陽が恋しくなる。
まぁそう思えるのも雨のおかげだったりするわけだが。
天気が悪かった...KAITOの種13(亜種注意)
霜降り五葉
-
モカとコウを連れて散歩してると、声をかけられた。
黒い…KAITOに。
「あの…ここどこですか?」
……どこ、と言われても…。
涙目になりつつある黒いKAITO。
もしかして、迷子なのか。
手に地図を持っている。見ればいいのではないだろうか。
「……マスターに、地図…渡されたんですけど………マスター...KAITOの種12(亜種注意)
霜降り五葉
-
うーむ…どんなのならばいいんだろうか。
留守番する時間の長いモカとコウのために、暇つぶし用に何か用意してやろうと思い、買い物に来た。
しかし何を買えばいいのか。
確か色鉛筆が大きくて描きにくかったとモカが言っていた。
だから千羽鶴用の小さい折り紙を買おうと思ったのだが…、正直これでもでかい気がする。...KAITOの種11(亜種注意)
霜降り五葉
-
寒い。外に出たくない。
だが横でみーみーと散歩を促す奴がいる。
どうしたものか。
この寒いのに。
大体今日予報は雨だぞ。
氷から生まれただけあって寒さには強いらしい。
だから寒いからと言っても聞かないし、太陽が出ていなくても関係ない。
出たいか出たくないか。それだけだ。
この間外に出てから散歩が気に...KAITOの種10(亜種注意)
霜降り五葉
-
アイスを食べている時に思う。
モカとコウはいつも文句を言わずに出されたアイスを食べているが、好き嫌いはあるのだろうか。
聞いてみるか。
「みっ」
…表情からして見るに、何でもいいらしい。
モカはどうだろうか。
悩んでいるみたいだが。
「……………特に……」
呟く様に言った。
正直モカは表情が読めない...KAITOの種9(亜種注意)
霜降り五葉
-
だんだん暖かい日が増えてきた。
晴れた日は外に出ようと思える。
「………マスター…」
ん?
「どこか……行くんですか…?」
外に出る準備をしているのが気になったのか、モカが聞いてきた。
買い物がてら散歩しようと思っただけなのだが…。
そうか。こいつら留守番させなくてもいいのか。
行くか?散歩。
「み...KAITOの種8(亜種注意)
霜降り五葉
-
まただ。
「みみ~み、みみ~み、みみ~み、みーみー」
今日一日、コウはご機嫌だ。
ずっと歌っている。
なんかいいことでもあったのだろうか?
凄く幸せそうだ。
こっちまで気分が良くなってくるぐらいだ。
「み、み」
…なんだ?
「みーみ、み!」...KAITOの種7(亜種注意)
霜降り五葉
-
マスターは今、家にいない。
何してるのかとかは知らない。
夜には帰ってくるとは言ってたけれど。
退屈しないようにと色鉛筆と画用紙を置いて行ってくれた。
氷KAITOが苦労しながら楽しそうに絵を描いている。
何の絵かはすぐ分かった。
「みー!」
何アイス?
「み」
バニラか。...KAITOの種 番外編(亜種注意)
霜降り五葉
-
あれから二時間。
状況は今だ変わらず。
あえて言うならラムレーズン色した氷KAITOが疲れて寝たぐらいだ。
…二日酔いするのだろうか。
いくらアイスで酔ったのだとしてもあれだけ酔ってれば明日大変そうだ。
はぁ…。
ため息なんかついてみる。
どうするかなぁ。
結局何があったのかわからなかったし。
そう...KAITOの種6 後編(亜種注意)
霜降り五葉
-
いつもより少し遅く帰宅する。
一つ何かあると何故全く関係のないものまでトラブルを起こすのか。
理解が出来ない。
最近やけに忙しい。
そんな時に限って面倒なことばかり起こるものだし。
ああもう。早く帰ってアイスでも食おう。
どうせ二人にせがまれるんだし。家のドアを開ける。
………静かだ。
寝てんのか?...KAITOの種6 前編(亜種注意)
霜降り五葉
1
- 2