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「ミク、ルカ!」
靴の音を高く響かせて、部屋の中へ入る。
「カイトはどこにいます?」
「んー? えっとねぇ……」
ミクが、その辺をきょろきょろと見回した。部屋の中にいるわけでもないのに、きょろきょろしても意味ないと思う。
可哀そうだから言わないけど。
結局、カイトは未だに、騎士としてこの王宮...【中世風小説】Papillon 終
穂末(水鏡P)
ねぇ。君が悲しんでくれるなら、俺は死んだっていいと思っていたよ。
そんな勇気なかったけれど、でも、君の涙は俺の悲しみで、幸せだった。
君がいない場所で、君に知られずに死んでいくのが怖かった。それだけは耐えられないと思った。
でも、そうなってしまうんだね。
運命が憎いよ。
でも、本当に憎い...【中世風小説】Papillon 13
穂末(水鏡P)
「何してるの!」
声が響いたかと思ったら、後ろから思い切り腕をひねりあげられて、俺は剣を落とした。
後ろを見ると、目を真っ赤にはらしたミク姉が、驚いたような顔をしている。
俺は、思わず笑ってしまった。
「何驚いてるの、自分でやっといて」
「だ、だって……」
剣を持っていた俺を見て、自殺すると...【中世風小説】Papillon 12
穂末(水鏡P)
流血はありませんが、人が死にますので、苦手な方はご注意ください。
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「せめてもう少しだけ、ここがあんたたちにとって温かな場所であり続けられれば……」
眠りにおちる少し前、メイコ姉はあたしを抱きしめて、そう呟いた。そのときメイコ姉がどんな表情をしていたのか、あたしには見えなかった。
---...【中世風小説】Papillon 11
穂末(水鏡P)
無言で差し出された剣。カイトは俺をまっすぐに見て、いつもの穏やかな表情すら浮かべず、剣を持つように促した。
「ちょっと、カイト!」
ミク姉が走ってきて、カイトを止めようとする。だが、カイトはそれすら無視して、ただ俺を見ていた。
「何やってるの、二人とも! まだ、外に出ていいなんて言われてないよ!...【中世風小説】Papillon 10
穂末(水鏡P)
「一緒に、逃げよう」
……その言葉の意味が、俺には分からなかった。
いや、本当は、分からないはずがなかった。
それはずっと、俺が考え続けていた言葉。口にする勇気もないまま、いつか言おうと心に決めていた言葉。
でも、それはもう、無理だ。
「あたしがレンの右手になる。二人でなら、どこでだって生き...【中世風小説】Papillon 9
穂末(水鏡P)
君となら、どんな世界でも、生きていける気がしたよ。君と二人で生きていくために、いつかこの場所を離れるときのために……。
ねぇ、僕を笑ってくれないか。そんな日は、最初から来るはずもなかったんだって……今の今まで気付かなかった、僕のことを。
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酷い顔だな。鏡をのぞきこんで、溜息をつく。あ...【中世風小説】Papillon 8
穂末(水鏡P)
「リン?」
名前を呼ばれて、あたしはびくりと肩を震わせた。
「起こしちゃった?」
結局、会う勇気もなかったあたしは、メイコ姉も寝てしまった真夜中に、ようやくレンの部屋に行った。まさか、起きているとは思わなかった。
「眠れなくて。日中も寝てるから。時間感覚、おかしくなりそう」
荒い息の下から、絞...【中世風小説】Papillon 7
穂末(水鏡P)
「っと、わぁっ!」
朦朧とした意識の中で、ミク姉の声をきいた。その直後に、盛大に転んだと思われる音と、何かが転がり落ちる音。
リンもミク姉も、何もない道で転べるような人だけれど、今回は何か持っていたのだろうか。
唯一自由に動く左手で、ベッドのカーテンを開ける。俺の部屋の床に、何故だか果物が大量...【中世風小説】Papillon 6
穂末(水鏡P)
「リン! リン!」
身体を強くゆすられて、初めて誰かがそこにいることを知る。焦点の合わない瞳で、翠を見つけた。
「ミク、姉……?」
周りを見回す。誰かが床に倒れていた。そのすぐそばに、カイトが立っている。カイトが誰かを倒したらしい。
でも、何故。分からない。あたし、何してたんだっけ。
「よかっ...【中世風小説】Papillon 5
穂末(水鏡P)
流血表現があります。苦手な方は読むのをおやめください。
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失うことに、慣れる日なんて来るのだろうか。君を失ってもいいと思える日なんて、来るのだろうか。もし君を失いたくないと願い続けたら、失わずにいられるのだろうか。そんな自分勝手を、世界は許してくれるのだろうか。君は、許してくれるのだろう...【中世風小説】Papillon 4
穂末(水鏡P)
「わぁ、可愛いーっ! ほら、見て!」
並べられた商品を見てははしゃぐあたしに、げんなりとしてついてくるレン。
高熱にうなされているレンに無理やり、街へ出かける約束をさせて、今日ようやくのデートとなった。少し離れた場所を、何食わぬ顔してカイトが歩いている。一応、用心棒だ。
「なんなのレン、もっと楽...【中世風小説】Papillon 3
穂末(水鏡P)
君だけを見ていた、とか、君だけを守りたい、とか。
もうそんな、白々しい言葉しか思い浮かばない。それを証明するものなんて、もうどこにもない。
夢の中で、ただ君の姿を探していた。夢の中でくらいは、君の笑顔に会いたかった。
降り注ぐ光の中、噴水を浴びて、緑の絨毯に寝転がった日々。一日中、手を放さず...【中世風小説】Papillon 2
穂末(水鏡P)
あなたはもう、忘れてしまったでしょうか。二人でなら、何もこわくなかった頃のことを――。
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「ルカ姉! メイコ姉!」
あたしは、白い衣のすそが翻えるのも気にせずに走り、部屋に飛び込んだ。あまり品はないけれど、これでもこの王国の第三王女だ。
「ねぇ、レン見てない?」
部屋の中にいた姉二人...【中世風小説】Papillon 1
穂末(水鏡P)