木花 京月の投稿作品一覧
-
霽れ
-
私はあなたのものにしかなったことがないけど
あなたはいつか誰かのものだった
その甘い声も表情も手つきも
いつか誰かに向けたものなんでしょう
そしてあなたはそのうち
私以外の誰かにそれを向けるんでしょう
あなたが昔誰かにあげたもの
あなたがいつか誰かにあげるもの
そんなの知りたくないな
そんなの知りた...手を伸ばすべきは
-
別れが来ることは初めからわかってた
僕と君を隔てる壁はどうにもできないほど高くて厚かった
それなのに何かの悪戯でできた覗き穴越しの君に僕は恋をした
一言で言えばありきたりな恋
ドラマやマンガみたいな恋
でも僕は『恋に恋』したんじゃない
僕は君のことが好きなんだ
「愛してる」なんて言えるほど君を知らな...「愛」も「ずっと」も言えないけれど
-
僕の人生 気づいたら細い綱の上
少し間違えたら落っこちちゃう
広い道を歩く人が横から怒鳴った
「そんなところ歩くんじゃない」って
でもどうやってそっちに行けばいいの?
僕の視界 気づいたら君がいたの
君も同じ危うい細い綱の上
細い綱を歩きながら横からそっと
「こんなところ歩きづらいね」って
そう言っ...2人の綱渡り
-
私の|人生《これから》
照らす何かはあるだろうか
この隘路を征く灯火は
燐寸擦る
この灯絶やさず進めるか
考えすぎぬよう
足が止まってしまう
軽率にならぬよう
大切なものも燃やしてしまう
私の手にある一箱の燐寸...侏儒の咏
-
たなからさん用
-
花を散らすような雨がそぼ降って
もうこの花は散るだけだと悟った
花に嵐のたとえもあるもの
散らぬ花など無いように
貴方がくれた花の
その|花弁《かべん》を千切りましょう
美しい|五片《ごひら》の花弁を千切りましょう
さて何から始めましょう?
別れる、別れない
どちらから始めましょう?...花のまにまに
-
さくら
-
オリオンの道
-
夕陽の桜
-
夏空
-
幸せな夢を見ている気がして
私にこんな幸せは来ないと思っていたから
でも幸せは長く続かないことは知っている
「夢なら覚めないで」と
「夢なら覚めてしまえ」が
心の中に同じくらいあって
結局私は
覚めて、と願うの
幸せな夢なら早く覚めて
夢なら諦められるから...幸せ恐怖症
-
二つの景色
-
この道がずっと続けばいいのに。
-
宇宙の果て
-
あの日見た空を覚えている
涙に滲んだ青を覚えている
あの空は他所他所しかったけど
あの空が一番僕を包んでくれた
苦しくて苦しすぎて
本当は今も死にたいって思ったりして
でも僕は生きるって決めたんだ
空に伸びた飛行機雲
ちっぽけな僕のスタートラインが伸びていた
あの飛行機雲はゴールラインじゃなくて...青空の五線譜
-
帰り道
足元のタイルの隙間に一本の
錆びたヘアピンが落ちてたの
なんでもないことのはずなのに
なんでかぎゅっと胸が痛くなったの
このヘアピンの持ち主は
落としたことに気付いてるのかな
少しくらい探してみたりしたのかな
私にも小さいけど居場所はあったの
でもきっともう、私は忘れられちゃったの...ヘアピン
-
夏が来た
空に群れた青は濃く
真白い雲が天を突いていた
蝉の声 塩素の匂い
住宅街に響くきらきらした声
夏の音 夏の匂い
数年前の夏が蘇る
無敵だと思った“若かった”夏
あの夏にまだ囚われている
大人になったら忘れるのかな...残暑厳しく
-
君の頬に手を伸ばした
冷たい涙を拭った
君のために声を出した
「僕はわかってるからね」と
君にはそんな涙より
笑顔の方が似合うから
雨に当たってなんかいないで
さあ 僕が手を引くから
光の下に出ておいで
君はもう泣かなくていいよ...heroic
-
僕らの上に広がる藍色の空に浮かんでいた星は
ひとつきりだった
でも僕はその輝きを
決して、この先も、忘れたりしない
君と見た星はどこだい
君の星を見つけられない
たったひとつ、そこにあっただろう?
なあ、君は一等星だった
あの光はどこへ行ったんだい
僕の上に広がる群青色の空に浮かんでいる星は...晨星落落
-
光のない世界で
君だけは訳もなく光って見えた
その光の理由を知りたくて
僕は君に手を伸ばすよ
僕は君の手を離さないから
君が本当に笑えるまで離さないから
僕は君の苦しみをわかれないし
一緒に背負うこともできないけど
でも君が泣き止むまで
泣き疲れて眠るまで...僕ら一緒に月へ行こう
-
まっさら
-
知ってますか
人間が脳に取り入れる情報の
83%は視覚からなんですって
“見た目より中身”とか言いますけど
でもやっぱ 見た目 結局大事ですよね
ペットが赤虫食べたら「わーえらいね」
テレビの食物連鎖には「うわカワイソ」
ネズミやウズラの肉はエサにできません
その日の夕飯は親子丼でした
美人と私 対...83%
-
あと少しだけ強くなりたいよ
あと少しだけ強くなれるでしょうか
こんな人になりたいって
理想もわからないけど
自分が理想とは程遠いことはよくわかる
強くなりたいって でもなれなくて
布団の中で泣く弱い僕
弱い僕は嫌いだ
さあ涙を拭おう
頑張って立とう...八転九起
-
からっぽの心に何を詰めよう
からっぽの心にまず何を入れよう
本当はこの心にも
何かが詰まっていたはずなんだ
いつの間にからっぽになったのかわからないんだ
でもそれは君と出会って
君のくれたものを入れるためだったんだね
君がくれたものを入れよう
君とつくったものを入れよう
僕の心は君でできてる...まっさら
-
そっけなく君が渡した小包を
開けたらふわりと君の香りがした
ずっと部屋に置いてたんだなと
思いながら取り出してみたら
それはアイシャドウ
700円のアイシャドウ
あなたにとっては高い買い物だったでしょう
私のためにあなたが
たくさん悩んで買ってくれたものだろうから
これは私の宝物...アイシャドウ
-
「あなたさっきどこそこにいませんでしたか」
なんて 打ち込んだ文字は消しました
こんな愚問はもう三度も投げかけたもので
あなたの答えは分かりきっていますし
そもそも返事ももう来ないかもしれないですね
それならさっきすれ違ったのはあなただったんですね
今すれ違った人はあなたと声が似ていました
今すれ違...Doppelgänger
-
少し不釣り合いだった僕たちが
いつか手を繋ぎ合うことなどないのだろうと
少し不釣り合いな僕たちの
ぴったり釣り合う分だけ不釣り合いだ
世界には数多の歌があって
「君」を詠った歌が五万とあって
でもどの歌にも君はいないでしょう?
君を詠えるのは僕だけだ
きっと1番最初から君が好きでした
君が初めて僕の...TOY 5839
-
あの日までのカウントダウン
また知らぬうちに日を刻む
日めくりカレンダー めくる度
嗚呼あの日まで あと何日
あの日からのカウントダウン
また知らぬうちに思い出す
壁のカレンダー見る度に
嗚呼あの日から もう何年
このタイミングで出てくる
君からもらったお菓子の包み紙...処方:日にち薬
-
目の前に散らばるものはなんだろう、と
欠片を拾い上げて気付いた
ああ、これは私の砕け散った心か、と
いつの間に砕けていたのかわからない
最後に楔を打ち込んだものは何かわからない
私の心はこんなにも脆かったのかと
欠片を手に立ち尽くしていた
「これはあなたの心ですか」と
欠片を差し伸べた君が優しく微笑...心の欠片
1
- 2