タグ「MEIKO」のついた投稿作品一覧(127)
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第一章 王宮にて (パート3)
「戻りました。」
講義を終えたグリスが自身の執務室に戻ったのは、それから三十分程度が経過した頃であった。王立学校へは臨時講師として赴いている為であり、オルス本来の業務は国政を預かる内務官である。
「ご苦労。」
そしてグリスの上司に当たる人物が、内務卿を務める...小説版 悪食娘コンチータ 第一章(パート3)
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悪食娘コンチータ 第一章(パート2)
この花束、もしかして。
フレアは自身が目的としていたコンチータ男爵の墓石にまでたどり着くと、先に供えられた花束を眺めながら、何かに納得した様子で頷いた。フレアがコンチータ男爵の墓参りに来るたびに新鮮な花束が常に供えられていたが、それは恐らく先程グリスと同行し...小説版 悪食娘コンチータ 第一章(パート2)
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プロローグ
寂寥という言葉では、言い尽くせない。
オルス=ロックバードは戦を終えたばかりの戦場の中心に呆然と立ち尽くし、一人そう呟いた。春にしては冷たい風が、オルスの身体を吹き抜けた。風の中には、吐き気を覚えるほどの濃い血の匂い。周囲を見渡せば、こと切れた兵士たちの無残な残骸が、まるで屠殺された...小説版 悪食娘コンチータ 第一章(パート1)
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革命の闘士
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第三章 決起 パート19
よかった、間に合った。
先頭を走るウェッジに遅れまいと騎馬を操作するリンは、既に本隊との乱戦が開始されている前方の様子を見て安堵するようにそう呟いた。まだ、本隊は突破されていない。
「覚悟は、ついているか?」
振り返りながら、ウェッジがリンに向かってそう言った。速い...ハーツストーリー 59
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第三章 決起 パート17
多分、このあたりだと思うけれど。
密かにルワール城を抜け出してたった一騎で農道を走り続けていたセリスは、ルワール城から無断で拝借してきた周辺地図と周りの景色を見比べながらそのように考えて一度馬の歩みを止めた。先程から砲撃が続いているところを見ると、もう既に戦は始まっ...ハーツストーリー 57
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第三章 決起 パート16
雷雲が一度に訪れたかのような、大気を揺るがす爆発音が響いた。それと同時に、数十メートルの上空にまで砂埃が巻き起こる。だが、その成分は砂ばかりではなかった。赤く染まる肉体の破片と交じり合って、砕け散った鉄片もまた空中を乱舞している。唐突に前方の火砲隊を襲った爆発の意味をハン...ハーツストーリー 56
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第三章 決起 パート12
だが、リンにとって思考できる時間は二週間と与えられていなかった。いつまで経っても法案に対する返答を寄越さないロックバードに対して、帝国が痺れを切らせたのである。そもそも、帝国が元黄の国の軍事大臣を務めていたロックバードに対して臣下としての信頼を寄せていたかというと、決して...ハーツストーリー 52
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第三章 決起 パート4
リンとセリス、そしてアレクがルワール城に戻った時、城内が上に下にという大騒ぎに包まれていることに三人は気が付いた。一体何事だろう、と瞳をぱちくりとさせたリンの目の前を、ミレアが猛烈な勢いで駆けて行こうとしていた。その勢いで、真っ白なエプロンの端がぱたぱたと揺れている。温水だ...ハーツストーリー 44
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第三章 決起 パート3
木材が触れ合う、小気味の良い音が深く積もった雪原の中に響き渡った。ルワールの街から少し離れた、春を迎えると小麦畑と変化する場所で二人の少女が剣を振るい合っていた。その二人から少し離れた場所では、夕日のような赤い髪を持つ、体格の良い細身の男性が二人を見守るように腕を組みながら...ハーツストーリー 43
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バニカ=コンチータ
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特別編 悪食娘コンチータ プロローグのプロローグ
「やほ、皆元気?」
懐かしい声が古びた小さな部室の中に響いた。学園祭が目前に迫った九月の終わりの頃である。部室に現れた人物はミルドガルド共和国一有名といっても過言ではない人物であった。即ち、女優兼歌手かつミルドガルド共和国剣術大会での優勝経験を持...特別編 悪食娘コンチータ プロローグのプロローグ
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第一章 逃亡 パート23
その後、ロックバード率いる赤騎士団は全軍で海沿いの道を南下し始めた。先に逃亡していたリンとは夕暮れまでに合流し、元修道女と元緑の国の家臣を含めた奇妙な集団が一路ルワールへと向けて旅立ったのである。
戻ったばかりで、またすぐに飛び出してしまったな。
赤騎士団から借り受け...ハーツストーリー 24
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第一章 逃亡 パート22
さて、奴らやってきたぞ。
歩兵とは言え、自身が率いる兵士の十倍以上にも相当するハンザ中佐軍の様子を見てなお、シルバは落ち着いた様子でそう考えた。幸いであることに、ハンザは騎士道精神に満ちた人間であった。民衆は守るべき弱い存在であるという信念を持つハンザの性格を推測すれば...ハーツストーリー 23
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第一章 逃亡 パート21
ルータオは正に騒然という気配に包まれていた。赤騎士団が事前の連絡もなく訪れただけで大事件であるというのに、その上ミルドガルド帝国軍まで追加で現れればどれほど楽天家の人間であっても戦が始まるのではないかと考えてしまうだろう。そしてその推測はこれから起こる現実の出来事であった...ハーツストーリー 22
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第一章 逃亡 パート20
ミルドガルド帝国によるルータオ侵攻作戦が展開されたのはルーシア戦争に先立つ、ミルドガルド暦1805年5月14日の出来事であった。その日付はメイコの逃亡からおよそ一週間後に当たる。メイコの逃亡如何に関わらず既に綿密な準備を整えていたミルドガルド帝国軍は、いずれにせよリン元女...ハーツストーリー 21
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第一章 逃亡 パート19
「赤騎士団?」
セリスは途端に表情を引き締めたロックバードの横顔を見上げながら、そう訊ねた。先程の馬蹄音は既に納まっており、緊迫した雰囲気も多少は収まっている。どうやらルータオを襲うつもりは無いらしい、とセリスが考えていると、ロックバードが慎重な口ぶりでこう答えた。
...ハーツストーリー⑳
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第一章 逃亡 パート18
だが、ルカの心配が杞憂であったことはその十数分後には証明されることになった。リンにとっても、ルカにとっても懐かしい顔がルータオ修道院を訪れたのである。ウェッジが複雑な表情をして、修道院の食堂へと案内してきたロックバードの姿を見て、ルカは安堵の吐息を漏らし、リンは食堂の椅子...ハーツストーリー⑲
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第一章 逃亡 パート16
後年、とある歴史は述べている。
後日メイコ逃亡事件と名付けられた、赤騎士団全軍によるメイコの脱獄劇は今後のミルドガルド大陸の運命を左右する事態となったと表現しても差し支えないだろう。だが、そもそもどうしてメイコが何故捕縛される事態となったのか。それを明確に表現している文...ハーツストーリー ⑰
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第一章 逃亡 パート15
ぬらり、と月明かりに照らされて、銃口が舐めるように光った。およそ5百丁に及ぶ銃口に見つめられているという状態は少なくとも気分のいいものと表現することができない。遠慮の無い殺気が先程からアレクとメイコの神経を容赦なく揺さ振り続けている。
「武器を捨てろ。」
続けて、ハン...ハーツストーリー ⑯
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第一章 逃亡 パート14
本当に、来てくれるなんて。
メイコは感無量という様子でそのように考えた。皮膚に感じる感覚はつい先程まで感じていた冷たい牢獄ではない。温かく、そして力強いアレクの体温であった。無我夢中という様子で抱き締めたメイコに対して、アレクもまたその背中を優しく抱きしめる。これほど求...ハーツストーリー ⑮
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第一章 逃亡 パート13
「このお時間に、ご面会ですか?」
闇夜に消えかかりそうな弱々しい照明に照らされた牢獄塔の一階、衛兵の待機室で退屈そうな欠伸を漏らしかけていた、牢獄塔の衛兵隊長であるヘッセン少佐のアレクに対する第一声はそんな内容であった。日も暮れたこの時間に、しかも完全な武装をして訪れる...ハーツストーリー ⑭
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第一章 逃亡 パート12
もう、日が暮れてしまった。
闇夜に包まれ、最低限の照明のみが残された監獄の中を一目見たメイコはふとそのように考えると、酷く身体が冷えたかのように自身の身体を抱き締めた。生まれて初めて、暗闇が怖いと感じた。明日。明日で、私の命が尽きる。せめてその前に何かを残すべきなのかも...ハーツストーリー ⑬
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第一章 逃亡 パート10
流石、メイコの右腕とはよく言ったものだ。
側近の兵士からアレクの来訪を告げられたシューマッハは、謁見室の上階にある、元々リン女王が利用していた私室で何かを楽しむように口元を歪めながらそのようなことを考えた。この機会にアレクも排除すべきか、或いは、とシューマッハは思考する...ハーツストーリー ⑪
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第一章 逃亡 パート9
さて、シューマッハはどう出てくるだろうか。
ルワール周辺で行きと同様に海岸沿いにルータオに戻ると言うリン達と別れてから数日の間一人旅を続けていたメイコは、ゴールデンシティまで後半日というところまで迫った地点でそのように考えた。もうリン様がご存命されているという情報はシュー...ハーツストーリー ⑩
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第一章 逃亡 パート2
「リンの馬鹿!」
アクの姿が見えなくなり、リンが心から安堵の吐息を漏らしたとき、声の調子をはずしたハクの声がリンの両耳に突き刺さった。直後に感じるハクの体温。リンよりもほんの少し背の高いハクが、リンに向かって抱きついたのである。
「ごめんね、ハク。」
「無茶をしないで...ハーツストーリー ③
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第一章 逃亡 パート1
光に消えていく。
リンは薄れていくレンの姿を最後の一瞬まで視界に残していようと、必死にそのサファイアのような瞳を見開いて淡い光の奥に消えてゆくレンの姿を見つめ続けていた。リーンの姿はもう見えない。きっと自分の生まれ育った時代に戻って行ったのだろう。それなら、あたしは?あた...ハーツストーリー ②
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赤い騎士メイコ 『ハルジオン』挿絵第二弾
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第二章 ミルドガルド1805 パート22
「そこまで。」
凛としたアクの言葉がビレッジに響き渡ったのは、ハクが詠唱を始めた直後のことであった。直後に、事態を見守っていたメイコとウェッジが向き直り、剣に手をかける。
「どうしてここに・・。」
瞬時に剣を抜けるように身構えたメイコは、アクに向かっ...小説版 South North Story 40
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第二章 ミルドガルド1805 パート21
それは、迷いの森以上に不思議な場所であった。
目の前に見えるのはまるで村の入り口をあらわす門扉のように植えられた二本の大イチョウ。その大イチョウの奥に見えるのは赤煉瓦作りの聖堂であった。横に長く造られているその聖堂は相当数の部屋が用意されているらしい。こ...小説版 South North Story 39