「…これをもちまして、初音ミク、バースデーライブを終了します…」
会場にはワンオフのミクのバースデーライブの終了を告げるアナウンスが流れていた。そのアナウンスに合わせて拍手が巻き起こる。その拍手は三本締めになった。その三本締めには雅彦も加わっていた。そうして観客が帰り始めた所を見計らって席を離れる雅彦。ライブの前に回った時には来ていなかった要人に挨拶して回る。
「安田教授!凄かったですね!」
感極まった要人の視界の中に雅彦が目に入ったのか、興奮して雅彦に話しかけてくる。
「ありがとうございます」
ミクにかわって礼をする雅彦。
「それでですね…」
なおも話を続けようとする要人。
(…これは長くなりそうだな)
今までの経験からそう類推する雅彦。雅彦にはライブで気持ちが興奮するのはよく分かったのだが、あいにく雅彦は今日はまだ用事があり、今は時間に余裕があるわけではない。
「…すいません、私は今日はまだ用事がありますので、…よろしいですか?」
その雅彦の言葉に、少しばつの悪そうな表情をする要人。
「…ああ、申し訳ない」
「それでは失礼します」
そういって、他に声をかけてくる要人を上手くあしらいながら要人席の区画を後にする雅彦だった。
一方、ワンオフのボーカロイドたちは、控え室に戻ってきていた。
「お疲れさまでした」
『お疲れさまでした』
ミクの言葉にこたえる残り五人。部屋の冷蔵庫で冷やしてあったペットボトル飲料を飲む。しばらくそうしていると、扉をノックする音が聞こえる。
「どちらさまですか?」
「ミク、僕だよ」
「雅彦さん、入って下さい」
そういって雅彦が入ってくる。部屋に入ってきた雅彦は、一直線にワンオフのミクの元に向かい、抱きしめる。
「…ミク、お疲れさま」
そういいながらワンオフのミクの頭をなでる雅彦。疲労の色は濃いが、雅彦に抱きしめられ、さらに頭をなでられるワンオフのミクは至福の表情である。そうやってしばらくそのままでいる二人。
「…それでは、僕はオフ会に行ってきます。夕食は作ってありますから」
ミクへの抱擁をといて話す雅彦。
「…分かったわ、気をつけてね」
そうワンオフのMEIKOがいうと、急いで控え室を後にする雅彦。
「…座ろうぜ」
「ですわね、…スタッフさんへの挨拶はどうしましょう?」
ワンオフのルカが尋ねる。
「…今はスタッフさんもバタバタしていると思うから、今はここにいた方が良いかもしれない。少し落ち着いてからで良いと思うな」
ワンオフのKAITOの提案にうなづく一行。
「あー、疲れた…」
椅子にどっかりと座ってだらけるワンオフのリン。
「…リン、だらけるのは家に帰ってからにしなさい。家に帰るまでがライブよ」
「…めー姉、こんな時まで釘を刺さないでよ」
疲労の色は濃いながらも、きっちりと釘は刺すワンオフのMEIKOに、うんざりした様子のワンオフのリンだった。
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