唐突。めっちゃ唐突にルカは言った。


「魔界に練習に行くよ!!」






　「よーしがっくん、準備は出来た？」
　開けっ放しの窓からルカが入って来た。
　……何かもう、慣れてきた。
　「一泊二日分の荷物で良いんだよな？」
　やけに荷物が小さいルカに聞くと、「そうだよー」と気の抜けた返事が返って来た。
　「バスがあと５分で来るから早く行こう!!」
　とのことなので、とりあえずルカについていった。






　「ここにバスが来るんだよー」
　着いたのは、最寄りのバス停。
　駅へ行くときなどによく利用する、何の変哲もないバス停である。
　「ちょっと待てルカ、これただのバス停じゃねーのか？」
　流石にこれは違うだろうと思ってルカに聞いた。
　が、「うん、確かにこれはただのバス停。でもね、ほらここ見て」
　そう言って時刻表を指さした。
　よく見てみるとそこには、『山葉駅行き』『山葉団地行き』と並んで、

　『魔界行き』

　確かにそう書いてあった。



　「あれ、おかしいな何故俺は今まで気付かなかったんだろうっていうかこんなに堂々と書いてあったら逆に気付かないのかもしれないなてか何だよこれ一時間に四本もあるじゃねぇか本数多いな!!」
　よく言いきった、俺。
　と、ここでルカが口を開いた。
　「それはねー、魔力を覚醒した人にしか見えないからだよ!一時間に四本もあるのはもしこっちで仕事してる人が休みを利用して魔界に行ったときにちゃんとバスを逃さず帰れるようにだよ!!」
　「魔界とかいうファンタジックな単語が出てきてる割には現実的な理由だなオイ!!」
　……何だろう、まだバスにすら乗ってないのにこの疲労感は。



　そんなやりとりをしていると、向こうからバスがやって来た。
　行き先表示は、安定の『魔界』である。
　しかし、そのバスはどう見ても、『山鉄バス』のものだった。
　思わず口をパクパクさせてしまう俺。
　平然とバスに乗り込むルカ。
　慌てて乗り込むと、こんな車内アナウンスが。
　『このバスは、音山町経由、魔界行きです』
　…何でこの人たちはサラッと言っちゃうのかな!!
　「５分くらいで着くよー」
　「近ッ!?駅までの距離と変わんねーじゃねぇか!!」
　身近にそんなぶっ飛んだものがあるとは誰も思わないだろ!!

　ん？

　……これ、駅までの道のりと変わらないような気がする。
　ただ、それにしては人通りが少ないような…。
　ただ、そう思った次の瞬間、そこには無いはずの長いトンネルが現れた。
　そして、何かがぐにゃりと歪んだような感じがした。
　「あ、そうそうちょっとぐにゃっとするけど気にしなくていいよー」
　…ルカ、言うのが遅いぞ。
　ふと、外を見ると、
　外は暗い。
　トンネルのライトはどこいった。
　そして、地面を見ようとしたのだが…
　「道路が無い!?」
　ああ、俺もう頭の容量が足りなくなってきた。
　そう思ったそのとき、突然外が明るくなった。
　慌てて外の景色を見るとそこには、




見慣れた駅があった。





　どういうことだよ、これ。