「けっこう、手作りとかする人のあいだでも、人気らしいんですよ」
カイくんが言う。
「この前、近所のBOXギャラリーでも、手作りのクロミク・グッズを見かけました」
「そうなの」
美里課長はうなずく。

「ナチュラル・ハウス」のスタッフルームで、カイくんと美里さんが広げているのは、
『ほびか』という手づくり専門の雑誌だ。
美里さんたちが展開する“クロミク・スタイル”の生活雑貨と、クロミクの絵本が特集記事になっている。

さきごろ、絵本作家の重音テッドさんの絵本『ゆるりとクロミク・スタイル』が完成した。
それに合わせて、クロミクのトートバッグ、インテリアぬいぐるみなどが、
いろんなお店や、雑誌などで話題になっている。


●手作りグッズを買ってみた

「手作りファンの人に、人気があるというのは嬉しいわね」
美里さんは言った。
「ええ。カフェ・つんでれでも、手作り教室で“クロミク”のフェルト人形などを作りたいそうです。テトさんやモモさんが言ってくれました」
カイくんは、手元にある小さなクロミク人形の頭を、軽くたたいて言った。

「で、ボクが見たBOXギャラリーの手作りグッズなんですけど」
カイくんは続けた。
「あんまり出来がいいんで、作品を買ってみたんですよ。そしたら...」
「そしたら?」美里さんは、身を乗り出す。
「ウチのドナドナ号の、たこるかちゃんの友達らしいんです」

「どうしてわかったの?」
美里さんは聞いた。
「ギャラリーで、その人の作った、足の形のオブジェを買ったんですが」
カイくんは、売り場を指さした。
「売り場のディスプレイに置いたら、たこるかちゃんが、“フリマで知り合った人の作品だ”って言って」


●いっしょにクロミクを盛り上げよう

数日後、駅前のスタバ。
お店のオブジェと、ギャラリーのクロミク作品を見て、すっかり気に入った美里さんは、作者の人と会っていた。
たこるかちゃんと美里さんの向かいに座る、小柄な女性が、グッズの作者だ。

「そう、“ぱみゅ”さんというの?」
「はい。葉丸美優(はにまる・みゆう)といいます。ペンネームが“ハにマル”でパ、ミユウで“ぱみゅ”です」
彼女は美里さんに会釈した。

「あなたの作品、とても面白いです。手づくりの楽しさが出てるし」
美里さんが言う。
「ちょい、キモいけどね」
たこるかちゃんが横やりを入れる。
「私たちの“クロミク・スタイル”は、手作りファンの人に多く知ってもらいたいんです」
美里さんは、出来たばかりのテッドさんの絵本を出した。
「よかったらお暇なとき、読んでみてね」
「ありがとうございます。わぁ、いいんですかぁ」
ぱみゅちゃんは喜んだ。

「キモイけどさ、面白いんだよ。ぱみゅちゃんのグッズは。足の形ばかりだけど」
たこるかちゃんがいう。
「ホントね。なにか、クロミクのいいアイデアがあったら、ぜひ教えてください、はにまるさん」
美里さんは言った。


「私も何か一緒に作りたいと思うんだけど」
たこるかちゃんは腕組みをした。
「足がモチーフのキャラ弁とかじゃ、こわいしねー。アシからず!!」
m(。・ε・。)m

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

玩具屋カイくんの販売日誌 (69) クロミク・ワールド広がる

さいきんの商品は、手作り好きの人とか、フィギュア好きのファンとか、クチコミで人気が広がることが多いですね。

閲覧数:131

投稿日:2010/07/31 13:03:25

文字数:1,306文字

カテゴリ:小説

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