それは7回目の誕生日。

母にこう尋ねられました。

「カイ、何が欲しい?」

僕の誕生日はクリスマスでした。
だから、僕はこう答えました。

「サンタさんが欲しい」

それを聞いた母は驚いた顔をして、
困ったように、もう一度聞きました。

「サンタさん以外で」

僕の父はサンタさんです。
世界中を駆けて、たくさんの人を笑顔にする。
夢を与えるコトが出来る。
それは素敵な仕事だと思います。

でも、家族の僕らは果たして幸せでしょうか?

どんなに忙しくても、
笑ったり抱きしめたり、
「愛してる」って言う、
そんなコトくらい出来るんじゃないかなと思うんです。

(淋しいよ)

(母さんだって……)

僕はまだ一度も父の顔を見たことがありません。
もしかしたらそれは、父が僕らを愛してないからなのかもしれない。

「ねぇ、母さん」
「……?」

「僕は父さんが嫌いだよ」

僕は決して母さんを泣かせるつもりなんかなかった。
でも、その一言を聞いた母はとても辛そうでした。

僕を見ては哀しい顔をするようになり、
そんな母に隠れて、僕はひとり泣くようになりました。

なにも出来ないまま、それから10年の時が過ぎました。

17になった僕は、あるコトを思いつきました。

僕がサンタの振りをして、母さんを抱きしめよう計画です。

その日の朝、友達とクリスマスを過ごすと伝え、僕は外に出ました。
そして、夜、サンタのフルコスチューム姿の僕は、煙突から、家に忍び込みました。

母が寝てるだろう時間を見計らったのですが、
驚きの表情ではなく微笑みをたたえた母が待ってました。

「おかえり」と僕を抱きしめました。

気付けばそれは、生まれて初めての母の愛でした。
僕は母に抱きしめられたことがなかったのです。

僕は泣きました。
嬉しいのと、バカみたいで。

母さんを喜ばせようとしたのに、
何も出来ずに、ただ佇むだけだと。

「カイ」
「……」

「ほんとのコト言えなくてごめんなさい」

僕は驚き、母を見ました。

そこには母でなく、ただの女性がいました。

その愛は、まるで僕に恋するようでした。

なぜ? そんな目で僕を見る……?
僕は混乱していました。

「サンタは貴方なの」
そう母が言いました。

「え?」

「サンタクロースだった貴方は、
1000の人を幸せにした。
神様はその御礼に、
なんでもひとつ願いを叶えると、
貴方に言ったの。
恋人だった私に貴方は言った。
誰かのための愛じゃなく、
自分も愛されてみたい……」

何がどうなっているのだろう?
余計、僕は混乱していた。

「貴方はサンタクロースの生まれ変わりで、
私の息子ではないのよ」

それを聞いた僕は笑いました。
それが嘘かほんとかわからなくて。

壊れたように笑いました。

「僕にはそんな記憶……」

母は否と首を振り、
「僕はそんな嘘を聞くために!!」

僕は叫びました。

だって、そんな記憶なかったから。

だって、赤子からずっと、
貴女を母としてしか見ていなかった。

前世の僕は、愛する人を不幸にしてまで、幸せを得たかったのだろうか……?

「私の愛は変わらないわ」

「貴方を愛してる……」

そう言った母は、僕の涙に指を伸ばし、
触れる刹那、僕は身を引きました。

母は哀しい顔で、にこっと笑いました。

「私、もう疲れたわ」

そう言うと、母はスウッと姿を消してゆき、
僕は慌てて、母を抱きしめようとした。

でも抱きしめられず、
母は消えてしまった。

「私の寿命は今日だった」

「ルカ!!」

「その名で呼んでくれるのね……。
私、ちゃんと貴方を……愛してた」

僕もなぜ、そんな名で呼んでしまったのかは分からなかった。

ただ哀しくて、切なくて、愛おしかった。





その2年後、僕は世界を駆けずり回るサンタクロースをしていた。

そして、昨日2000人目の人を救った僕の傍らには、
愛するルカがいた。

僕らはふたり、
これからも生きてゆく。

end

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい
  • オリジナルライセンス

愛の輪廻(短編小説)

主人公:カイ
実はサンタクロースの生まれ変わり
前世の記憶はない
7→17歳になる

母:ルカ
本当はカイの母親ではなく、カイの前世の恋人
時が18の姿のまま止まっている

閲覧数:136

投稿日:2015/12/25 20:54:10

文字数:1,683文字

カテゴリ:小説

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  • 中西ユウ(熾音ユウ)

    中西ユウ(熾音ユウ)

    ご意見・ご感想

    アリス@ココロナさん、
    もし宜しければ掻き直して使って下さって構いませんよ。
    なるべく文章自体は崩さず変えただけなのでお気になさらずどうぞ。

    2015/12/25 20:33:51

    • 千魔猫アリス

      千魔猫アリス

      熾音ユウ様、お返事ありがとうございますm(_ _)m
      では、今日以降時間を作り、書き直したいと思います。

      2015/12/25 20:36:23

  • 中西ユウ(熾音ユウ)

    中西ユウ(熾音ユウ)

    ご意見・ご感想

    拝読しました。切ないクリスマス・ストーリーですね……状況を思い浮かべながら読み進めました。
    内容云々は好みで分かれるので、文の推敲について……

    ★そんな素敵な仕事→それは素敵な仕事
    ★愛してるって言う→「愛してる」って言う
    ★それは、もしかしたら→もしかしたらそれは、
    ★僕はけして母さんを泣かせるつもりなんかじゃなかった→僕は決して母さんを泣かせるつもりなんかなかった
    ★でも、その一言は、母にはとても辛いコトのようでした→でも、その一言を聞いた母はとても辛そうでした
    ★微笑をたたえ母が→微笑みをたたえた母が
    ★それは、気づけば→気付けばそれは、
    ★誰かのための→「誰かのための
    ★僕は笑いました→それを聞いた僕は笑いました
    ★貴方は母で女性ではなかったから→貴女を母としてしか見ていなかった

    とするといいと思います。

    2015/12/25 19:41:06

    • 千魔猫アリス

      千魔猫アリス

      熾音ユウ様、
      私の原作として、そのように書き直し加えても問題ないでしょうか?
      いずれ歌として、ニコニコにUPするので、問題があれば、文章は変えず、次に生かすだけにとどめます。

      お返事、お時間あるときにm(_ _)m

      2015/12/25 19:51:40

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