13.止まらない戦争
私たちのギルドにもある変化が起こっていた。
テレパス君がなくても融解することなく、自身を保っていられる人間がギルドを訪ねてきた。
しかも、二人――。
それはつまり、私たち双子と同じ存在がまだいたってことだ。
やはり彼らも同様に独自の色を放つ雷をまとっていた。
青い雷をまとっている屈強そうな大男はレオン。
紫の雷をまとっている細身の目つきの鋭い男はカムイと
それぞれ名乗った。
彼らは月の国から派遣されてきたらしい。
どうやら国は私たちのような存在をすでに知っていたようだ。
彼らは私に国の直轄の軍に入れと、そしてクリプトンを国の直轄事業としたいと申し出てきた。
私はもちろん断った。つまりそれは戦争に協力しろといってるようなものだった。
しかし、国は組織の解体、立ち退きを申し出てきた。
今、メルターたちの居場所はここしかない。ここをなくすわけにはいかなかった。
私たちは苦渋の決断を強いられた。
結局、クリプトンは国の直轄にはせず、あくまで派兵依頼という形でなんとか話はまとまった。
戦争を止めるためと設立した組織が戦争に加担することになるなんて
私は何のためにここまでやってきたんだ。と荒れたもんさ。
そのころかな、私がお酒を飲むようになったのは……。
赤・青・紫 そして黒 私たちは戦争ではめまぐるしい活躍を見せた。
私は主にその地に派遣されたメルターたちを守るために戦って、
ロミオは自身の軍で力任せに戦ってただけだけど。
結局、私たちはお互い戦地で顔を合わせることはなかった。
やっぱりお互いに避けていた部分はあったと思う。
結果として私たちは『四星』と呼ばれるまでになっていた。
戦争は私たちやメルターたちの活躍で、一気に優位に進んでいった。
しかし、こんなに簡単には戦争は終わらなかった。
日の国は私たちみたいに雷をまとった巨獣、『ライジュウ』を投入。
その他、強力な兵器を次々投入して、戦局は一気に拮抗状態になった。
これが、終わらない憎しみの連鎖なのだとあらためて実感した瞬間だった。
戦闘は激しくなったり、お互いに様子見だったりを繰り返して、もう数十年も経っていた。
少し戦闘が収まったころ、私の所に一人の少女がやってきた。
少女はルカと名乗り、私に純白の雷を見せてくれた。
私たち4人以外に初めて現れた、特別な雷を持つ存在だった。
私の体は若いままだけど、年齢的にはもう結構な歳だったし、
私の戦闘技術、そして戦争に対する思いを教えることにしたんだ。
みるみる戦闘技術は覚えていったけど、まだ幼いこの子に戦争に対しての
私の思いを伝えるのはなかなか難しかったらしい。よく、講義中に眠ってたっけ。
すっかり教師姿が板に付きだした頃、再び戦争が激しくなってきた。
でも、私はもう戦争に疲れていた。正直教師のまねごとの方が楽しかったんだ。
それからしばらくして、国中にあるニュースが流れた。
―黒い雷 墜つ―
それは訃報だった。
黒い雷が日の国との国境での戦闘で死んだと冷たい活字で綴ってあった。
私は新聞を握るしめると、無言でギルドの近くの大きな木に向かった。
その木は通称『セフィロトツリー』 命の木と呼ばれていた、天にまで届きそうな大木。
そこには今まで戦争でなくなった数多くの魂が温かな木の根に抱かれて眠っていた。
だれもいない木の下で、私は年甲斐もなくわんわん泣いた。
なんで? どうして? 答えの返ってこない疑問詞ばかり叫びながら……
その後すぐに私は誰にも告げず、旅に出たんだ。
もう、わからなかった。どうしたらいいのか、何がしたいのか。
私は結局、一人で突っ走って、戦争を大きくしちゃって、大切な人を亡くして。
笑えるよね、この歳になって家出だって。
……怖かったんだ、私が全部を悪化させてるような気がして。
しばらくあてもなくフラフラと国中を旅して、最初は一見無意味に思えた旅だったけど、
色々な人たちに出会って、暮らしを見て、人々を助けたり、助けられたり。
全然意味がないなんてことはなかった。
ずーと、前ばっかり見て走って来た私は、戦争を止めたいって思いばかり先走って
全然周りにいるこの国の人たちのこと考えてなかった。
生きてるんだ。みんなこんな世界でも笑って生きてる。
なんだか急に恥ずかしくなっちゃって、なにやってんだろ私……って。
それから私は旅を続けながら、困ってる人たちを色々手伝った。
少しでもみんなが幸せになれば、少しずつでも変えられると思って。
「そして今日、君に会ったんだ……ってあれ?」
シンデレラの膝下で一人の少女がすやすやと寝息を立てて眠っている。
「私の話を聞いてなかったのかい……!?」
少女の小さな手はシンデレラのコートの端をギュッとつかみ
赤い頬にはきらりと涙がつたっていた。
「無理もないか、あんなことがあったんだもんね……」
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