幼い時分だった。親が持っていた媒体で見た、昔の美しい海。
見惚れた。いつか、本物を見てみたいと願っていた。
それは途方もなく難しい話で、このままいけば悪化するばかりなのだと、まだその頃は知らず、無垢にもそれがいつか叶うと信じていた。


そして、世界を知り始めた頃。俺は両親を亡くした。
極普通の一般家庭で、極普通の暮らしをしてきたのだが、流行り病にあっけなく逝ってしまったのだ。

それから一年もしないうちにKAITOを購入した。
KAITOを買った理由など、当人には色々言い訳をしたが、たった一つである。

両親とも亡くして、独りが寂しかったのだ。
共にいてくれる存在が欲しかった。


ロボットに当たりをつけて探していたら、あの海とは少し違うけれど、美しい青が目に入って。
あぁ、人でもこのようなものが作れるのかと感動した。

声も気に入った。
したこともない作曲をして、この声で歌わせてみたいと思ってしまった。

そして、かつてみた海の色を思い出した。
人工の美しい青い瞳にあの自然の美しい海を映したら、どんなにか素晴らしいことだろうと思い至った。
人類は地球に拒絶されようとしているけれど、もしかしたら。人に作られていても、この無垢で優しい存在ならば。

この地球に、世界に。受け入れられるのではないかと。




KAITO。俺の希望。
君ならきっと、再生を見ることが出来るだろう。



一人にしてしまうけれど、俺も一人になるからおあいこにしてくれ。





そうだ、あれは約束というよりは願いだった。


海が見たかった。

俺の傍にいる、青と共に
青い海。あの美しい海を――










          END.

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

願いと成就 最終話

お付き合いありがとうございました。

読んでない方は一話からどうぞ→http://piapro.jp/content/82iv9cndfdvo5ybn



☆あとがき★

ここまで読んで下さった奇特な方、ありがとうございました。

この小説は最初にも書いておりますが、Waiting in Earthという曲が発端で執筆したものです。
コッフン様、しつこいようですが、素敵な曲をありがとうございました。

閲覧数:187

投稿日:2008/12/08 22:49:05

文字数:724文字

カテゴリ:小説

  • コメント2

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  • 小夜

    小夜

    その他

    >>えも様

    感想ありがとうございます!
    というか読んでくださってありがとうございます!!(笑
    大分抽象的な小説になっておりますが、そう感じていただけたらば嬉しいです^^

    こちらこそありがとうございましたっ。

    2008/12/09 10:30:59

  • えも

    えも

    ご意見・ご感想

    初めてコメントさせて頂きます
    えもと申します
    小夜さんのお話すっごく良かったです!

    良い話をありがとうございました

    2008/12/08 23:08:29

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