彼の冷たい一言は、曖昧だった私の心を引き裂いた。
その言葉に昔のような温かさは少しも含まれていないのだと気づくのに数秒かかった。
何をしても楽しくない。
何をされようが上の空で返事をする。
時間の感覚さえもが曖昧で、もうどうでもいいやと投げやりになっていた毎日。
その理由を自分なりに結論付けたのはつい先日、私達が付き合って二年目の記念日。
二人で一緒に出かけて、ちょっとだけ華やかなパーティーをして。
楽しい日になるはずなのに、変に作り笑いをしていただけのような感覚。
私自身は楽しもうとしていたけれど、彼からは少しの違和感を感じてずっと気になっていたから、ずっと仮面の笑顔だったんだ。
ああ、私はもうこの人とは一緒に居られないんだ。
たとえどんな理由があったって、感じる違和感は決して拭い去ることができない。
あの頃は楽しかったね。何をしても楽しくて、美味しいものにも味があったね。
毎日がキラキラ輝いていて、その記憶は宝石となって大事にしまっていたよね。
ねえ覚えてる?私はこんなにも君との思い出があるよ。
全部汚れないように傷もつかないように綺麗なアルバムにしまっておいたのに、どうしてこんなに色褪せちゃったんだろうね?
「俺はもう、この関係を終わらせたいんだ」
そう言って君は背を向ける。有無を言わせないような後ろ姿に、私の言葉は届きそうに無い。
その背中を何度も追いかけた。絶対に届きはしないだろうと諦めもした。
だけど懲りずに頑張って、やっと手が届いた。
私はまた、戻ってしまうのかな。
あの退屈で単調な灰色の日々に。
今ならまだ、彼を繋ぎとめることができる。
彼の足を止めるたった一つの言葉を告げることができる。
だけど――止めたところで何になる?
腕を掴んで説得したところで幸せな日々は戻ってこないし、違和感だってごわごわしたまま膨らんでいくことだろう。
それに、彼は終わらせたいって言った。なら私がどう言おうとそれは彼の意思だ。彼は容赦なく私を突き放すだろう。私の決めることじゃない。
どうにもなるはずがない。
「あ…」
結局、出来なかった。怖くてからだが震え、口を動かすことが出来なかった。
伝えたい言葉が出てこない。一度外に出してしまえば冷たい風に掻き消されてしまいそうで、伝えることすら出来そうにない。
情けないなあ。肝心なときに何も伝えることが出来ない、なんて愚かなこと。
一言すら言えない臆病者は、昔から少しも変わりはしていないんだから。
追うこともせず、彼は部屋を出て行った。
ぱたん。扉を閉める音が、やけに大きく鼓膜に響いた。
目の前の小さなテーブルには、私の部屋の合鍵だけが無造作に置かれていた。
「……はは」
馬鹿だなあ。何か一言でも良かったのに、なんで無言のまま見送っちゃったんだろう。
言えばよかったじゃない。
私はまだ、あなたを諦めることが出来ないって。
この天邪鬼。
【カイメイ】Distance【Ⅰ】
どうもこんにちはゆるりーです。
今回の話は新シリーズでございます。
memoryとは反対に、「失恋」が主なテーマ?になります。
カイメイというよりはカイ←メイ。
これ、本当はルカ誕に投稿する予定の話でした。
でも我が家のがくルカだとどう足掻いてもこの話は向いていないなー、じゃあキャラ設定があまりできてないカイメイでやろう!
↑理由これ(大丈夫か私のA☆TA☆MA)
主人公はめーちゃん。
主な登場人物はカイト、がっくん、ルカさん、ゆかりんを予定してます。変更するかも。
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カメフィ
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ゆるりーさんのカイメイktkr!!!
続き楽しみにしてますね!!切ない!
2014/05/20 19:16:20
ゆるりー
やってみたかったんです!
ありがとうございます!切なさが売りです。
2014/05/20 20:52:34
カメフィ
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ゆるりーさんのカイメイktkr!!!
続き楽しみにしてますね!!切ない!
2014/05/20 19:16:04
カメフィ
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ゆるりーさんのカイメイktkr!!!
続き楽しみにしてますね!!切ない!
2014/05/20 19:15:53